神官の願い5
「成功いたしましましたね」
ティアーリエは鷹揚に頷いた。
ティアーリエはその時点で新たな己の可能性について頭を巡らせていた。
なんだかはじめて剣を振ったときのことを思い出す。
あの、地獄の様な特訓。
クスリ、と笑うティアーリエ。
レイホウを筆頭とした黒いかたまりたちはその美しさにほぅっとため息をつき、カインは何を考えてか微笑する。
「そうだな。それで、さっき言っていた治癒は?」
「それは俺がしましょうか?」
「・・・・・・。」
ティアーリエは手を挙げて申し出た傍らの男をジトッとした目で見る。
カインはその目にも臆さず笑顔をくずさない。
「なんですかー、二の腕触らせた仲じゃないですかー。知ってます?二の腕って胸と同じ柔らかさだそうですよ」
「・・・だからなんだ」
そうきかれてカインは破顔する。
・・・・・・なんだか嫌になってきた。
こいつはアレだ。ラグに似ているんだ。
なんだかんだ言ってわたしはラグのしつこさと口には結局勝てない・・・というか最終的に相手をするのもめんどうになって勝手にしろと許してしまうのだ。
こいつはそういう点では、まことに、非情に、残念ながら、ラグに似ている・・・・・・。
「胸!胸さわったってことですよ!?あれ!?信じらんない!」
ティアーリエは騒ぎ立てるカインに渋い顔をしてこたえた。
「なんだそれは。触ったとて部位が違うだろう。何が言いたいんだ・・・」
「・・・!俺、それはもうあの一瞬に揉んで柔らかさ記憶して肌のきめ細かさとか滑らかさとか堪能しまくったのに・・・!それをあとで暴露して恥ずかしがってもらいたかったのに・・・!」
「ああ・・・」
両手で顔を覆い大げさに嘆くカインを見て、ティアーリエは遠い目で宙をみた。
完璧にラグ属性だ。
こいつはどんなことをしても馬鹿の一つ覚えみたいに興味の対象にへばりついていくやつだ・・・。
ターゲットにされる前にここから逃げよう・・・。
「おいレイホウ!こいつを下げろ」
「あああ!っと。救世主様。俺に教えさせてくださいよ」
「・・・・・・。」
「はい。じゃあ、患部に治れ〜治れ〜と念じてください」
「・・・おい待て。そんなものでいいのか」
「いやはや。普通は呪文とか、型をつかうのですけどね。あなた様であれば念じるだけでできてしまうらしいのですよ」
「なぜそんなことがわかる」
「過去の文献からです。過去にも異世界から『救世主さま』の召還がありましたからね」
「カイン」
レイホウがカインの名を呼ぶ。咎める様な響きがあった。
「・・・はいはい。では救世主様。治癒をしてみてください」
カインが壊れてしまった・・・
自分で書いといてあれですがなんでも有りですね こりゃ