Student秘話 ー『二兎食佳編』
【好きな〇〇】
「食佳君は好きな物とかあるの?」
「……なんです?急に」
「いや、改めて助手になった君に歓迎会を開こうかと思いましてね。」
「あぁ、なるほど。で好きな物ですか」
「そうそう」
「にんにくとかのちょっと匂いがキツイもの以外はなんとも……あっ、柚は好きです?」
「何故疑問形なのよ。」
「匂いが良くて……」
「ふーん、だから柚ね。」
「食べ物とかじゃないなら僕は金木犀の花が好きですね。匂いが良くて」
「……?」
「どうかしました?」
「いや、まぁ、じゃあ……食佳君って好きな食べ物は?」
「強いていえば…みかん?柑橘系の匂いが好きで」
「好きな動物」
「獣臭いのはちょっと……」
「好きな旅行地は?」
「花園……いや、温泉?いい気分になれますよね」
「今まで貰って嬉しかった贈り物は?」
「アロマセラピー、これも落ち着く匂いがしてて……って本当になんなの?」
「これで最後だって、ははっ……、好きな……」
「――性癖」
「脇」
「うわぁ!!こいつ匂いフェチだぁ!!!!!!」
【昔の癖】
「食佳君の人形の名前なんだけどさぁ」
「?」
「……ダサくない?」
「ダサくない!!」
「いやだって龍帝萬雷ってさぁ」
「それ以上追求しないでください……、俺だって中等部の少しイタい頃につけた名前が変更不可って知らなかったんです。あー、まじ過去に戻りたい」
「過去に戻ったところで名前何にすんのさ」
「電子大剣」
「変わんねぇじゃねぇか」
【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎――】
昔から鼻は良かった。
目には見えない何かに気付けた気がするからだ。町中に漂う弾痕と血痕の匂い。嫌な視線を送ってくる、女子達の殺気に似たような匂い。
これだけでいい、あとはいらないのだ。見たくもないし聞きたくもない、見たらわかるなど聞いたらわかるなど、確実的な証拠を前にすると多分……僕は倒れてしまう。
この鼻が示してくれた曖昧な証拠だけでいい、あの子は俺を嫌っている匂いがする。あの子は俺を嘲笑っている匂いがする。あの子は――。
『――――!!』
心配する匂い。
曖昧な答えだ。見なくていい、聞かなきゃいい、全部閉ざしてしまえばいい。
だからだろう。僕は彼女の優しさを否定してしまった。
僕はそれが、1番悔しい。




