第8話 おふたりさまビーフシチュー
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
「空お兄ちゃん!今日は二人でデートしよう!」
「うーん。うん。二人もたまにはいいかもな。」
葵にはいつも迷惑をかけてばかりだから、今日は美羽に一人で羽を伸ばしてもらうのもいいかもな。
「やった! 空お兄ちゃんとデートなの!」
朝からテンションの高い美羽と一緒に街へ出る。
「どこに行きたい?」
「猫カフェ!猫カフェに行ってみたいの!」
ツインテールをぴょこんと跳ねさせ、小さな手をぎゅっと握ってくる。
柔らかな日差しと心地よい風が街を包んでいた。
猫カフェに着くと、ガラス越しに日なたで丸くなっている猫たちが見えた。
「わあ……ねこちゃん、いっぱい!」
靴を脱ぎ、手を消毒して店内に入ると、毛並みの良いスコティッシュフォールドが近づいてきた。
「お兄ちゃん、見て!この子、ふわふわー!」
美羽は目を輝かせ、猫の頭をそっと撫でる。
小さな手の上で猫が喉を鳴らすと、美羽はくすぐったそうに笑った。
「お兄ちゃんも触ってみて。」
「お、おう。」
軽く撫でると、猫がごろりと転がり、足の上に乗ってきた。
「……重いけど、かわいいな。」
「ねこちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんだよ!」
嬉しそうな笑顔に、自然と頬がゆるむ。
店内には他にもたくさんの猫がいて、気ままに歩き回ったり、客の膝で眠ったりしていた。
美羽は膝に猫を乗せたまま、そっと囁く。
「ねえ、お兄ちゃん……この子、おうちに来てくれたらいいのにね。」
「そうだな。でも、この子たちにとってはここが一番落ち着くお家だからね。」
「うん……また会えるよね?」
「もちろん。また来よう。」
「うん!」
その言葉に、美羽はにっこり笑って頷いた。
カフェを出ると、近くの雑貨店には猫のぬいぐるみがずらりと並んでいた。
ふわふわの白猫のぬいぐるみを手に取ると美羽の目が、さらに輝きを増す。
「ねえ、お兄ちゃん!この子、連れて帰っていい?」
「いいよ。大事にするんだぞ?」
レジで会計を済ませると、美羽は両腕でぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
帰り道、美羽はぬいぐるみを抱えたまま嬉しそうに歩く。
「お兄ちゃん、今夜はこの子と一緒に寝てもいい?」
「いいけど……落とすなよ?」
「大丈夫!」
家に帰ると、玄関から香ばしい匂いが漂ってきた。
「おお、いい匂いだな。」
リビングでは葵がエプロン姿で鍋をかき混ぜている。
「ビーフシチューですよ。じっくり煮込みました。」
テーブルに座ると、湯気立つシチューの香りが心をほぐす。
スプーンで一口すくうと、とろけるように柔らかい肉と野菜の甘みが広がった。
「これは……すごいな。」
「おいしいー!」
美羽も夢中で食べている。
ぬいぐるみが椅子の上にちょこんと座っているのを見て、葵がやさしく微笑んだ。
こうしてみんなで食べるご飯は本当に最高だ。




