第6話 はじめてのホットケーキ
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
今日は、空お兄ちゃんに「美羽が作ったホットケーキ」を食べてもらう特別な日!
朝から胸がそわそわして、なんだか心臓がいつもより早くドキドキしている。
「じゃあ、美羽ちゃんがメインシェフね。」
葵お姉ちゃんがにっこり笑ってそう言ってくれた。
その笑顔に、ちょっと勇気がわく。
……よし、がんばる!
まずはボウルにホットケーキミックスをざらざらっと入れる。
白い粉がふわっと舞い上がって、鼻の先がむずむず……くしゃみが出そうになって、あわてて我慢した。
次は卵。
小さな手で持ち上げて、コツン、とボウルの端に当てる。
……あっ、力を入れすぎちゃった。
「わっ……!」
殻がちょっと中に落ちちゃった。
「大丈夫、大丈夫。お姉さんが取ってあげるね」
葵お姉ちゃんがスプーンですくい上げてくれて、私はほっと胸をなで下ろす。
次は牛乳をそーっと注ぐ。
白い液体がとろりと流れ込んで、ホットケーキミックスと卵に混ざっていく。
木べらでくるくる混ぜるたび、甘くてやさしい香りがふわーっと広がる。
「美羽ちゃん、いい感じだよ。」
「ほんと?ふわふわになるかな?」
「なるよ。空さんがびっくりするくらいの、ふわふわホットケーキにしようね。」
その言葉に胸がぽかっと温かくなった。
いよいよ焼く番だ。
熱したフライパンに生地をおたまで丸く落とすと、じゅっと音がして、ぷくぷく小さな泡が浮かんでくる。
「わぁ……生きてるみたい!」
「それが焼けてきた合図だよ。ひっくり返そうね。」
えいっとひっくり返す。
ちょっとズレちゃったけど、大丈夫だよね?
ひっくり返した面には、きれいなきつね色が広がっていた。
焼き上がったホットケーキをお皿にのせて、バターをどんと置く。
じんわり溶けて、黄金色の表面に光が広がる。
最後にメープルシロップをとろーっとかければ、完成! 甘い香りがキッチンいっぱいに広がる。
「おはよう、美羽。いい匂いだな。」
空お兄ちゃんがリビングに入ってきた。
私は胸を張って、お皿を両手で差し出す。
「じゃーん! 美羽がつくったホットケーキ! 食べて!」
空お兄ちゃんは驚いた顔をして、それからやわらかく笑う。
「すごいな。美味しそうだ」
フォークで1口ぱくりと食べたお兄ちゃんの目が、少し丸くなる。
「……うん、美味しい。甘くて、ふわふわだ」
「ほんと!?やったー!」
うれしくて思わずぴょんと跳ねる。
葵お姉ちゃんも笑いながら、「美羽ちゃん、お料理上手だね」と頭をなでてくれた。
空お兄ちゃんはもう1口食べて、ぽんと私の頭に手を置く。
「美羽の作る朝ごはんは最高だな。また作ってくれるか?」
「うん!今度はもっともっと上手に作る!」
甘い香りがまだキッチンに残っている。
ホットケーキのあたたかさと、空お兄ちゃんの笑顔で私の胸の中はぽかぽかになった。




