第5話 おはよう定食
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
目覚ましの音が鳴り響き、まぶたの裏に朝の光が差し込む。
カーテン越しの柔らかな陽が、部屋の中を淡く染めていた。
「……もう起きないと。」
ぼそりとつぶやきながらベッドから身を起こす。
隣では、美羽が毛布にくるまったまま、まだ夢の中にいる。
ふわりと揺れるツインテール。
小さな手で目をこすりながら、ゆっくりと背伸びをする姿が、あまりにも愛らしくて思わず笑みがこぼれた。
キッチンに入ると、葵がエプロン姿で朝食の準備をしていた。
白い皿を並べる手元は迷いがなく、パンをトースターに入れると、すぐに「じゅっ」と軽やかな音が響く。
溶けたバターの香りがふわっと広がり、まだぼんやりしていた頭が一気に覚めていく。
葵はボウルに卵を割り入れ、箸で軽くかき混ぜた。
ふんわりとした黄色の液体がフライパンの上でじゅわっと広がり、弱火でゆっくりと固まりながら、やがて柔らかなスクランブルエッグへと姿を変える。
隣でベーコンをカリッと焼き上げ、ミニトマトを水で流して添える葵の手際は、見ているだけで惚れ惚れするほどだった。
「おはようございます、空さん。」
「おはよう……いい匂いだな。」
そんなやり取りの最中、小さな足音が廊下から近づいてくる。
「んー……おはよ……。」
まだ寝ぼけ眼の美羽がヨロヨロと顔を出す。
その姿に葵がやわらかく笑う。
3人でテーブルにつくと、葵がそれぞれの皿にスクランブルエッグとベーコン、トーストを手際よく取り分けていく。
「はい、どうぞ。」
差し出された皿を受け取り、1口食べた瞬間、ふわっとした卵の甘みと、香ばしいバターの香りが口いっぱいに広がった。
ベーコンの塩気がちょうどいいアクセントになり、添えられたフルーツの酸味が後味を優しく締めてくれる。
「んんっ、おいしー!」
フォークを握る美羽が、目を輝かせながら笑う。
「ふふ、いっぱい食べてね。」
葵がその頭を優しく撫でると、美羽は嬉しそうに頬をほころばせた。
気づけば、窓の外の光は一層明るくなっている。
穏やかな朝の空気の中で、3人の1日が静かに動き出そうとしていた。
葵や美羽のためにも今日も1日頑張ろうと思う。




