第18話 お絵描き猫パン
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
今日はずっと楽しみにしていたアニメの日。
でも、テレビの画面に映し出されたのは、まさかの「緊急ニュース」の文字だった。
「えーっ、アニメは……?」
私はソファにごろんと倒れ込み、クッションを抱きしめる。
ずっと楽しみにしてきたのに、見られないなんて、やだ!
「美羽ちゃん、元気ないね?」
キッチンから葵お姉ちゃんの優しい声が聞こえる。
「だって、楽しみにしてたアニメが見られないんだもん……。」
ぷいっと顔をそむける私に、葵お姉ちゃんは小さく笑って言った。
「じゃあ、代わりに楽しいことしようか。猫パンを作ってあげるね。」
「ねこ……パン?本当に!?」
思わず跳び上がって、キッチンの葵お姉ちゃんを見つめる。
「葵お姉ちゃん、はやく作って!」
ソファに座ったまま、わくわくしながら見守る私。
ボウルの中で小麦粉と牛乳、卵がふわりと混ざり合う。
葵お姉ちゃんの手で、丁寧にこねられていく生地。
やわらかく整えられ、猫の形に成形されると、オーブンの中へ。
じゅうじゅう、と小さな音を立てながら焼かれる生地から、甘くて幸せな香りが部屋中に広がった。
「もうすぐできるよ。」
焼きあがったパンをお皿に置く葵お姉ちゃん。
そこにあるのは、まんまるでかわいい猫の形のパン!
「かわいい!」
「ここからは美羽ちゃんの出番ね。」
葵お姉ちゃんがチョコペンを渡してくれる。
「やった!おめめとおひげを描くよ!」
小さな手でそーっと線を引く。
にっこり笑った猫の顔が完成する。
「できた!すっごくかわいい!」
ソファに持っていき、2人でひと口。
ふんわり温かく、甘い香りとカリッとした表面が口の中でほどける。
猫の形が少し崩れてしまうのは残念だけど、美味しさに勝てず、ついぱくり。
「おいしいね。葵お姉ちゃん、また作ってね!」
「もちろん。今度はもっといろんなお顔も描いてみようね。」
テレビは見られなかったけれど、猫パンのおかげで、心はぽかぽかになった。




