第17話 くるくるたこ焼き
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
「はい、空さん、この竹串でひっくり返してみて。」
葵が笑いながら、たこ焼き器を指さした。
じゅうじゅうと生地の焼ける音。
香ばしい香りが部屋いっぱいに広がっていく。
「けっこう難しいな……。」
「がんばれ、空お兄ちゃん!」
隣で美羽が小さく拳を握って応援してくれる。
休日の昼下がり。
リビングのテーブルにはたこ焼き器。
窓から射す陽が、鉄板の上でゆらゆらと揺れていた。
「自分で作ると楽しいね!」
美羽が目を輝かせながら言うと、葵はエプロン姿で笑い、材料をてきぱきと並べていく。
まずは生地作り。
ボウルに薄力粉とだし、卵を入れて、泡立て器でくるくる。
美羽が両手で懸命に混ぜていたけれど……。
「わ、ちょっと飛んじゃった!」
頬に粉をつけたまま、ケラケラと笑う。
その姿があまりに無邪気で、思わずこちらも笑ってしまった。
「私が混ぜようか?」
「ううん!わたし、やる!」
美羽の小さな手が、また一生懸命に動き出す。
そんな光景を、葵はどこか優しい目で見つめていた。
鉄板が温まり、油をひくと、じゅわっと音が弾ける。
その瞬間、美羽が目をまん丸にして叫んだ。
「おお……! お店みたい!」
「さ、いくよ。生地を流してー……はい、次は具材を入れて!」
葵の声に合わせて、私と美羽はおそるおそる具を落としていく。
「タコ入れた! ネギも入れた!」
「空お兄ちゃん、ここスカスカ!」
「あ、ほんとだ……しまった!」
笑い声が弾けて、部屋の空気がさらにあたたかくなる。
少し焼けてきたころ、葵が竹串を器用に動かして、たこ焼きをくるりと回した。
その動きがあまりに滑らかで、美羽と二人で思わず拍手してしまう。
「すごーい! 職人さんみたい!」
「コツをつかめば誰でもできるのよ。ほら、空さんもやってみて?」
「こう……か? ……あっ、崩れた!」
「大丈夫、大丈夫。落ち着いて。」
そんな他愛もないやりとりをしているうちに、香ばしい匂いがいっそう強くなる。
焦げ目がついて、丸く膨らんだたこ焼きたちがころころと転がった。
焼き上がったたこ焼きをお皿に盛り、ソースをたっぷりとかける。
青のりとかつお節が踊るたび、美羽が「わぁー!」と歓声を上げた。
「じゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
ひと口かじると、外はカリッ、中はとろっ。
だしの香りとタコの弾力が口の中で広がっていく。
「うまいな……自分で作ると格別だ。」
「うん!おいしいー!もう1個!」
美羽は熱々のたこ焼きをふーふーしながら頬張り、 葵はそんな二人をやわらかい笑みで見つめていた。
窓の外では、ゆっくりと日が傾きはじめている。
笑い声とソースの香りが混ざって、休日の午後は穏やかに過ぎていった。




