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ありふれたひと時に、微笑みを  作者: 白熊 猫


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14/20

第14話 お疲れ親子丼

ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。

1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。

楽しんで読んでもらえると嬉しいです。

仕事を終えて帰宅したとき、リビングの方から小さなあくびが聞こえた。

「ふわぁー……。」

テーブルに突っ伏している美羽の姿が見える。

手元には、ページの端が少し折れたお絵描き帳。

鉛筆の芯は丸くなっている。

「猫がね、何回描いてもかわいく描けないの。」

半分泣き顔でこちらを見上げるその瞳が、少し潤んでいた。

「そんなことないさ。昔よりずっと上手になってる。きっと、明日にはもっとかわいく描けるよ。」

そう言って頭を撫でると、美羽は照れくさそうに笑った。

俺も正直、今日は少し疲れていた。

会議続きで、脳みそがすっかり煮詰まっている。

そんな空気を察したのか、キッチンから葵が顔を出した。

「ふふっ、2人ともお疲れさま。今日は元気が出るご飯にしましょう。」

「元気の出るご飯?」

「うん。卵と鶏肉で――親子丼よ。」

そう言うと、葵はエプロンの紐をきゅっと結び、コンロの前に立った。

鶏肉を1口大に切り、フライパンに入れる。

じゅうっと音が弾け、香ばしい匂いがリビングに広がる。

そこへ薄切りの玉ねぎを加えると、ほのかに甘い香りが混ざり合った。

「わぁ……フライパンから、いいにおい!」

美羽が目を輝かせて、椅子の上でぴょんと跳ねる。

「ここに卵を入れると、もっとおいしくなるのよ。」

葵は優しく笑いながら、ボウルでといた卵をゆっくり流し込んだ。

とろり、とした黄色が具材を包み込み、やわらかく固まっていく。

仕上げに三つ葉をぱらり。

「はい、できあがり。」

湯気を立てて差し出された親子丼は、見るだけで食欲をそそる。

俺と美羽は顔を見合わせて、「いただきます」と声を揃えた。

1口食べる。

甘辛いだしのうま味が口いっぱいに広がり、卵のとろみが舌の上でふわりと溶けていく。

疲れが、ゆっくりと溶けていくようだった。

「おいしいー! たまごがふわふわ!」

美羽は夢中でかきこみながら、頬をいっぱいに膨らませて笑う。

「ほんとに美味しい。お店の味みたいだ。」

「ありがとう。気に入ってもらえて嬉しいわ。」

葵は軽く笑いながら言う。

その横顔が、湯気の向こうでやさしく滲んで見えた。

「葵お姉ちゃん、また食べたい!」

「もちろん。今度は美羽ちゃんもお手伝いしてくれる?」

「うん! たまご割るよ!」

2人の笑い声がリビングに響き、夜の空気をやわらかく満たす。

食べ終わったあと、ほのかにだしの香りが残る食卓を眺めながら、俺は小さく息を吐いた。

疲れはまだ少し残っているけれど、それ以上に、胸の奥にじんわりと満たされたものがある。

「……やっぱり、家のご飯が1番だな。」

ぽつりとつぶやくと、葵がにっこり笑った。

湯気の向こうで、美羽が満足そうに大きなあくびをしている。

その穏やかな光景を見ていると疲れが飛んでいくように感じた。

新作を書きました。


恋愛小説です。


1話目5分ぐらいで読める話にしてるので、ぜひこちらも読んでください!




新作 恋愛秘密クラブ



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