第13話 お勉強とホットココア
ゆるやかでほっこりした日常系の話を書いてます。
1話あたり2~3分で読める短いショートショート形式で、基本的にどの話からでも楽しめるようにしていく予定です。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
午後の陽ざしがやわらかく差し込むリビングで、美羽ちゃんが机に向かっていた。
ひらがなの練習帳にまだ少し大きめの字で「な、に、ぬ、ね……」とえんぴつを走らせる。
「……あれ? なんか変な形になっちゃった。」
小さな眉をきゅっと寄せて、消しゴムでこすっては書き直している。
「上手よ、美羽ちゃん。前よりずっときれいに書けるようになってる。」
「ほんと?」
「本当よ。本当に上手。ゆっくりでいいから、丁寧に書こうね。」
私は笑いながら隣に座り、その小さな努力を見守る。
やがて美羽ちゃんの手が止まり、ぷくっと頬をふくらませた。
「もう疲れた……。」
「そろそろ休憩にする?」
「する!休憩する!」
元気に手を上げる姿に思わず笑って、私は立ち上がった。
「今日はね、頑張ったご褒美にホットココアを作ってあげるね。」
「ココア!? あまくておいしいやつだ!」
リビングから弾むような声が返ってくる。
私は小鍋に牛乳を注ぎ、弱火にかけた。
スプーン山盛りのココアパウダーと、ほんの少しの砂糖。
ゆっくり混ぜるたび、ふわりと甘い香りが立ちのぼる。
混ざりあったところで火を止め、マグカップに注ぐ。
最後に小さなマシュマロをひとつ浮かべて、できあがり。
「はい、美羽ちゃん。熱いから、気をつけてね。」
「わぁ……いい匂い!おいしそう!」
カップを両手で包み込む小さな指先が、ほのかに赤く染まっている。
「ふー、ふー……あまい!おいしい!」
「よかった。少し休んだら、もうちょっと頑張ろうね。」
「うん!」
私も自分のカップに口をつけた。
あたたかな甘さが喉を通るたび、胸の奥までぽかぽかとほどけていく。
窓の外では小鳥がさえずり、午後の光がゆるやかに流れていた。
「ねえ、葵お姉ちゃん。」
「なに?」
「葵お姉ちゃんと一緒に勉強するの、好き。」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温まる。
「ありがとう、美羽ちゃん。私も一緒に頑張るの、大好きだよ。」
ココアを飲み終えると、美羽ちゃんは再び机に向かい、えんぴつを握った。
今度は背筋をぴんと伸ばし、真剣な表情で。
「は……ひ……ふ……」
小さくつぶやきながら書く姿が、なんとも愛おしい。
ココアの香りに包まれたまま、穏やかでまったりとした午後のひとときが流れていった。
新作を書きました。
恋愛小説です。
1話目5分ぐらいで読める話にしてるので、ぜひこちらも読んでください!
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