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少年少女大戦  作者: セイセイ
第一章:カラフル編 - 色彩の侵食者
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プロデューサー・ヌシPの美学

「まわれ、まわれまわれまわれ!」


カラフルプロダクションの中庭に、ヌシPの情熱的な声が響く。彼の美学は常人には理解しがたいものだった。


「アタクシの回転こそが、この世で最も美しい芸術なのです!」


全裸で事務所の周りを回りながら、ヌシPは最高のインスピレーションを探している。通りがかりの人々は呆れた視線を向けるが、彼は意に介さない。


「おい、また変態が回ってるぞ」


「カラフルプロの人でしょ?いつものことよ」


近所の住民たちも、もはや慣れた様子だ。


事務所の窓から、グレーケルが心配そうに見守っている。


「またヌシPが…」


「お姉ちゃん、大丈夫だよ。ヌシPはヌシPなりに頑張ってるから」


ベロスが慰めるように言うが、グレーケルの胃痛は治まらない。


中庭で回転を続けるヌシPの脳裏に、ふとある記憶がよぎる。


『セイン、お前は本当にバカな兄だな』


『でも、私たちの大切な兄さんよ』


かつて家族と呼ばれた人たちの声。しかし今の彼には、その記憶すら曖昧になっている。コスモブックの脅しによって、セインという存在を封印してしまったから。


「…家族、か」


ヌシPの回転が一瞬止まる。しかし、すぐに首を振って記憶を振り払った。


「いえいえ、アタクシはヌシP!最高のプロデューサーなのです!」


回転を再開する彼の姿に、どこか寂しさが滲む。


その時、レトリバー金が地下から顔を出した。


「ヌシP、実験に協力してくれる?新しい回転装置のテストをしたいんだ」


「回転装置?それは興味深いですね!」


ヌシPの目が輝く。彼にとって回転に関することなら何でも興味の対象だった。


地下実験室では、金が巨大な回転台を設置していた。


「これは『美的回転増幅装置Mark-II』だ。君の回転を科学的に分析して、より美しい回転を追求できる」


「素晴らしい!アタクシの美学を科学で証明するのですね!」


回転台に乗ったヌシPが、いつもの何倍もの速度で回り始める。


「回転速度、毎分180回転…190…200!」


「これです!これこそアタクシが求めていた究極の回転!」


しかし、その時装置が故障した。回転台が止まらなくなったのだ。


「あ、あれ?止まらない?」


「計算ミス!緊急停止ボタンが効かない!」


ヌシPは目を回しながらも、なぜか満足そうだった。


「これは…新しい美の境地です…」


「おい、大丈夫か?」


グレーケルとベロスが駆けつけた時には、ヌシPは目を回してその場に倒れていた。


「ヌシP!」


「だ、大丈夫です…アタクシは…美の追求者ですから…」


朦朧とした意識の中で、ヌシPは小さく呟いた。


「セイン…僕は…」


しかし、その言葉は誰にも聞こえなかった。


意識を取り戻したヌシPは、いつものように元気に回転を始める。


「今日の体験を活かして、さらなる美の高みを目指します!」


その奇行の裏に、彼が失った過去と家族の影があることを、まだ誰も知らない。


ただ、グレーケルだけは何かを感じ取っていた。


「ヌシP…あなたも何かを抱えているのね」

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