ホクホクの体と心
結局、二回もギュッと日高に抱き締めてもらった湯山はご満悦だ。
ニヨニヨと口角を上げながら、日高の肩に頬をくっつけている。
「暑いよ」
真っ赤な顔で、日高が文句を言う。
「私も。でも、離れないよ」
湯山もコクリと頷いて、いたずらっぽく笑った。
日高は、内からも外からも温まり続ける体を抱えて、「全く……」と、口を尖らせた。
しかし、チラリと横目で湯山の姿を確認し、彼女が満足そうにしているのを見ると、満更でもなさそうな表情になった。
「ふふふ」
日高に柔らかく頭を撫でられて、湯山が嬉しそうに笑い声を溢す。
『私も体が熱い。けど、幸せ。光星君の体臭が、どこか甘く感じるのも、くっつきたくなるのも、頭を撫でられるのが、無性に心地よいのも、きっと好きだってことだと思うから、嬉しい』
湯山は本能的な人間だ。
嫌いだと思う人間とは、話すだけで心のどこかが不快になっていたし、好きではない男性の匂いは臭くてたまらなかった。
以前、格好つけた男性の友人に頭を撫でられた時は、背筋がゾワゾワとして嫌な心地になり、手を叩き落としてやりたくて仕方がなくなった。
そんな湯山が、身体的にも心理的にも受け入れることのできる相手。
それは、きっと、彼女にとって恋愛的に愛しい相手に他ならないだろう。
少なくとも、湯山は、そのように日高を判断し、既に彼を好いている、または、これから非常に好きになることができる可能性を実感して、たまらなく嬉しくなった。
「ねえ、光星君、多分、好きだよ」
熱く吐息の漏れる口元から不確かな愛をささやく。
それから、光星の頬に温かで柔らかなキスを落とした。