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飛んで火に入る恋の虫  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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16/17

ポテン

 たっぷり遊ぶことができて嬉しかったのだろう。

 湯山は日高の上にもたれかかり、白い胸板に頬をくっつけて幸せそうに目を閉じている。


「満足した?」


 柔らかく笑って自分の頭を撫でる日高に、湯山はフルフルと首を横に振った。


「まだ」


 ギュッと抱きついて、何かをねだるように自身の頬を日高の肌に擦り付ける。

 酷く甘えた湯山と目が合うと日高は驚いた表情になって、そっとズボンを引き上げた。


「かわいいけど、俺は満足しちゃったというか、もう出ないよ」


 少し顔を赤くして、恥ずかしそうに告げる。


「出ない? なにが……あっ! そっちじゃなくて、そうじゃなくて、抱っことか、キスとか、イチャイチャが足りないだけ。そっちは私も満足した! 多分」


 湯山は一瞬、日高の言葉の意味が分からなくて首を傾げかけたが、すぐに意味を察すると真っ赤になって大慌てで弁明した。


「多分なんだ」


「うん」


「あんなに甘えて、いっぱいシたのにね。杏ちゃん、スケベさんだね」


「……光星君は、意地悪」


 自身をからかって笑う湯山にそっぽを向くと、日高は楽しそうに微笑んで、「拗ねないの」と彼女の頬をつついた。


「結局、アレは使わなかったね」


 ふと、視界に入り込んだ小箱を見て、呟くように言葉を出す。


 小箱は、日高家に来る途中で買った品だ。


 買い物袋からは出していたものの、結局、包装が破られることはなく、箱は新品未開封のままで放置されていた。


「どこかの誰かさんが、がっついたからね。出番がなくなっちゃったんだよ」


 食いしん坊さん、と悪戯っぽく笑って、日高が湯山の唇をつつく。


 すると、なにを思い出したのか湯山が既に赤くなっていた頬をポンッと爆発させて真っ赤にした。


 体温も酷く上がっている。


「だって、つい、その……興奮しちゃって。光星君は嫌だった? 普通にシたかった?」


 モジモジと身じろぎをして、ジッと不安そうに日高の顔を覗き込む。


 初めてできた大切な人と二人きりでイチャついて、少々はしゃぎ過ぎた自覚のある湯山だ。


 興奮と勢いに身を任せ、日高の嫌がる行為をしてしまったかと、今更ながら心配になったのだ。


 すると、湯山の態度に日高がのんびり笑って、緩く首を横に振った。


「嫌だなんて思わないよ。俺も楽しかったし、はしゃいでる杏ちゃん、かわいかったから」


「うん。でも、私は光星君に触られて、その、すごく恥ずかしくなったのに、光星君は平気そうだった。なんで?」


 問いかけながら、そっと衣服の中に手を滑り込ませ、日高の胸を揉む。


 湯山だったらば、恥ずかしくなって身じろぎを繰り返したり、何らかの反応を見せるところだが、案の定、日高の様子に変化は現れない。


 平然とした様子で湯山を眺め、それから、彼女がそっと尻に触れようとしたところで、ようやく体を動かした。


「汚いからダメ」


 湯山から自身の尻を遠ざけ、おまけにパシッと彼女の手を掴む。


「汚くないよ。お肉を揉むだけだし、それに、光星君のお尻は綺麗!」


「どこから出てくるの、その自信。とにかくダメだよ」


 呆れた様子の日高に手を遠ざけられ、湯山はプクッと頬を膨らませた。


「お洋服の上からなら、いい? 光星君のムチムチお尻、この際、布の上からでもいいから堪能したい」


「まあ、服の上からならいいけど、そんなに触りたいの? 杏ちゃんは、やっぱり変態さんだね」


 からかわれても日高に夢中になっている湯山には効かないようで、コクコクと頷きながら彼に触れた。


「平然としてる光星君もかわいい~」


 鼻歌でも歌うように笑って、幸せそうに日高に覆い被さり、緩く彼に触れる。


「光星君、抱っこ~」


「もうしてるじゃん」


 自信に抱きつく湯山に日高は呆れて苦笑いを浮かべたが、彼女はフルフルと首を横に振った。


「抱き締め返してもらってないもん。これは抱っこじゃないの! はやく、はやくギュッてして!!」


 日高の腕をペチペチと叩いて催促をする。


 そして、望み通り日高が湯山をギュウッと抱き締めると、彼女は照れたように身をよじらせて、嬉しそうにはしゃいだ。


 日高の自宅を出るまでの間、湯山はこの調子で日高にじゃれて、時々、彼に反撃されては顔を真っ赤に染めた。


 ギリギリまで日高に甘えて、帰宅の時間になると湯山は酷く名残惜しそうに自宅へと帰っていった。

次で完結です

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