今すぐ
『なんで、加藤と一緒にいるの?』
日高からのメッセージは一言であり、文面からは、彼がどのような心持ちで送ってきたのか、皆目検討もつかない。
『光星君? 急にどうしたんだろう。それに、この感じ、もしかして』
キョロキョロと辺りを見回して、それから、湯山は再びスマートフォンに向き合った。
『光世君、もしかして近くにいるの?』
問いかけると、すぐにメッセージが既読になり、それから、素早く次のメッセージが送られてきた。
『関係ないでしょ。いいから、質問に答えてよ』
『加藤君は、確かに一緒にいるけど、それがどうかしたの?』
今度は、すぐに既読がついたものの、しばらく経っても返信がこない。
不思議そうに首を傾げていると、加藤が無遠慮に湯山のスマートフォンを覗きこんだ。
「誰?」
「光世君。なんか、近くにいるみたい」
答えながら、加藤からスマートフォンを遠ざける。
すると、さらに加藤が身を乗り出して画面を覗こうとしてきたので、湯山はスマートフォンを閉じると、胸に抱えた。
「あのさ、人のスマホ見るのやめてくれる?」
「はぁ!? なんだよ! 別に良いだろ、それくらい。見られてやましいもんでもあるのかよ」
「ないけど、加藤君に見られるのが不快」
ギロリと睨み付ければ、加藤が舌打ちをして、
「なんだよ、つまんねーな」
と、悪態をつく。
そうして、静かに雰囲気を険悪にしていると、唐突にスマートフォンが着信音を鳴らした。
発信者を確認すれば、案の定、日高だった。
「もしもし、光世君、どうしたの?」
「今すぐ、俺のとこ来て」
「光世君のところ? どこ?」
「俺も今、フードコートにいるけど、俺の方は解散になったから、俺の家に行こう」
「光世君のお家?」
「うん。俺、フードコートから一番近い出口のところで待ってるから。今すぐ、来て」
少し震えた冷たい声。
内容もそうだが、日高の態度が普段に比べて明らかにおかしい。
湯山は、内心不安になりながらも、「分かった」と頷いた。




