第97話 ロシェの告白(中編)
牢の中で、ロシェ――鬼頭は淡々と語り続けていた。薄暗い部屋に彼の声だけが響いている。俺は冷たい石の床に座り、鉄の枷が手首を締めつけている。外からは湿っぽい風が流れ込み、錆びた鉄の臭いが鼻を突いた。この状況で俺は、彼の言葉を黙って聞くしかなかった。
「レオンに出会ったときだ」
と鬼頭は言った。彼の目は微かに光を帯びていた。まるで過去を懐かしむように、ゆっくりと話し続ける。
「あの時、話しているうちに感じたんだ。お前も俺と同じ、転生者なんじゃないかってね。だから俺はお前を助けた。仲間ができたと思ったよ。俺はこの世界に来てからずっと孤独だったから。だが………」
彼の声が一瞬止まり、低くなった。彼の目が冷たく俺を見つめる。
「その後、俺はお前の正体を知った。お前が黒崎剛志だったと分かった瞬間、俺は奈落の底に突き落とされた気がした」
彼は苦々しく笑いはじめた。
「なぜ、運命はこうも俺を弄ぶんだ? せっかくできた仲間がお前だったなんて。だがな………逆に考えれば、これはチャンスだとも思った。俺は転生前の世界でお前に復讐することができなかった。でも、今ならできる。俺のこの手で、お前を苦しめて、そして殺すことができるんだ!」
鬼頭の声は徐々に狂気を帯びていった。彼の手は、目の前に存在しない何かを握り締めるように震えていた。
「魔粒子爆弾だ。それをお前の国に落としてやろうと考えた。俺が考えうる中で、お前を一番苦しめる方法だからだ」
「あの爆弾は、俺がこの世界に来てから作り出した最強の武器だ。爆発と同時に放射線に似た魔光線を放出し、後遺症は放射線以上の惨事をもたらす。俺は10年以上前に無人島でその威力を確認している。だからこそ、あの兵器を落とすには理由が必要だった。俺は知っている、核兵器を使った国が、戦後もずっと非難を浴び続けていることをな」
鬼頭の口角が耳まで届きそうなぐらい上がっていた。彼は心の底から、その爆弾を落とすことを楽しんでいるように見えた。
「だから俺は魔粒子爆弾を落とすための計画を立てた。ヒルトハイムに魔粒子爆弾を落とした後に、俺が非難されないための計画だ。まずは、ハイエルフの王を煽り、ヒルトハイムに戦争を仕掛けさせた。次に魔王をけしかけ、停戦協定を破らせた。そして、マルセルらを魅了の魔法で操り、暴動を起こさせたんだ。全てが計画通りだった。だが………」
鬼頭はそこで一息つき、俺を睨んだ。
「お前は俺の邪魔ばかりする。降伏なんて………このタイミングで降伏なんてしやがって。お前のせいで、俺は完璧な復讐を遂げられなくなった」
俺は言葉を失った。すべてが、彼の手のひらの上で踊らされていたのだ。マルセルらの暴動も、10万人の死も、すべて彼が仕組んだものだ。彼が俺への復讐をとげるために。
だが俺が降伏を宣言したことで、彼の計画は狂った。
しかし、その冷酷な目は、まだ俺への復讐の炎を宿していた。




