第95話 史上最悪の独裁者
俺たちヒルトハイムは降伏を宣言し、戦争に負けた。それしかなかった。それが最善の選択だったのだ。俺は国を守るためにできることをした。
戦争に負けた俺は、戦争の首謀者としてハイエルフの国へと連行されることになった。ハイエルフ王は、この戦争の調停者でもあり、この世界の裁判官でもあった。俺の運命は、世界の王たる彼の手に委ねられた。
降伏を宣言した理由、それはただ一つ。核兵器――もしくはそれに匹敵する破壊力を持つ兵器が、ヒルトハイムに落とされる可能性が高かったからだ。
全てはロシェという男に原因がある。ロシェが転生者であることは、これまでの発言や『総統の耳』が集めた情報から明らかだ。そして彼が強力な大量破壊兵器を製造していることも、すでに確証を得ていた。
戦争が始まってから、ロシェはその兵器を一度も使わなかった。それはなぜか?その威力が尋常ではないことを知っていたからだ。
核兵器、もしそれが落とされれば、その破壊力は世界を揺るがし、落とした者は長期的に国際的な非難を受けるに違いない。ロシェは、その兵器を使うことで生じる波紋を恐れていた。だから彼はそのタイミングを待っていたんだ。絶対に許される状況が訪れるまで。
そして、今回の事件が起きた。『総統の目』が10万人もの人間を皆殺しにした。
総統の目の行為は、ヒルトハイムにとって最悪の結果を引き寄せそうになった。彼らは暴動を抑えようとしただけだが、結果的に大量虐殺となり、俺たちの運命は決定的なものとなった。ロシェがその報復に動き出す前に、俺は敗北を宣言するしかなかった。核兵器が落とされるより、戦争に負けた方がまだマシだ。
ハイエルフの国に着くと、すぐに戦争裁判が始まった。戦争の首謀者として俺は徹底的に非難された。裁判は粛々と進み、誰も俺の言葉に耳を傾けようとはしなかった。彼らの目には、ただ冷酷で無慈悲な独裁者としての俺しか映っていなかった。
「この戦争の首謀者として、あなたは無数の命を奪い、無意味な破壊を繰り返した。あなたが行った残虐な行為を、我々は許すことはできない」
俺は何も言わなかった。言葉を返すつもりも無かった。もちろん、言い訳なんて通用する状況でもなかった。
「皆殺しの命令も、あなたが下したものだという報告がある。それについて、何か弁明はあるか?」
俺が口を開く前に、もう裁判は俺を冷酷非道な独裁者として裁こうとしていた。もちろん、俺が指示したわけではない。だが、そんなことは誰も聞く耳を持たなかった。
こうして俺は、この世界において史上最低最悪の独裁者として名を刻むことになった。




