第88話 二つの国を背負う覚悟
ヒルトハイムの国としての基盤が徐々に固まりはじめ、俺の総統としての仕事も軌道に乗り始めた。そんなある日、突然エルダンシアからの使者が俺のもとに現れた。
「エルダンシアの国民が、レオン総統にエルダンシアも統治してほしいと願っております」
信じられなかった。確かにヒルトハイムは俺の統治の下で驚異的な発展を遂げている。減税と公共事業により経済は回復。そして総統の目による取り締まりのおかげで治安も良くなった。どうやらその噂がエルダンシアにも広がっていたようだ。エルダンシアを救った英雄が、ヒルトハイムを繁栄へと導いたと。
もちろん、一国を治める者は、その国の民が選ぶべきだ。他国のリーダーに自分の国も治めてもらおうだなんて、考えが甘い。優秀なリーダーを求める気持ちは分かるが、それは本来の道ではない。
だが、エルダンシアは俺も世話になった国だ。その恩を忘れるつもりはない。俺の心の中には、エルダンシアへの感謝と、彼らを見捨てることはできないという思いが常にあった。それに、彼らが自ら望んでいるならば、それに応えるのもまた俺の役目かもしれない。
「分かった。エルダンシアの要請を受け入れよう。ただし、これは一時的なものだ。国民が自ら国を治めるまで、俺が一時的に政治を預かることにしよう」
俺がそう告げると、使者は深く頭を下げ、感謝の意を示した。
エルダンシアを長期間支配するつもりはない。あの国は魔導具の技術は発展しているが、政治的には未熟な部分もあった。しかし、エルダンシアは真面目な国民性を持つ国だ。国民の政治レベルが上がるまで、俺が一時的に政治を預かるのも一つの道だろう。
こうして、俺はヒルトハイムに続いて、エルダンシアも背負うことになった。
エルダンシアに向かう準備を進める中で、俺は再び思案を巡らせた。ヒルトハイムと同じく、まず手を入れるべきは教育だ。この国の未来を築くためには、国民の政治レベルを上げることが最優先だ。いくら俺が政治を立て直しても、民が未熟なままでは意味が無い。
「エルダンシアも、ヒルトハイムも、国民が知識を得て、国を動かす力を持つまで、俺が一時的に導く。俺の役割はそこまでだ」
俺はそう腹を括った。




