第82話 改革の始まり
総統になった俺は、邪魔者を排除できたので、いよいよヒルトハイム王国の本格的な改革を進めることにした。俺が総統に選ばれた理由は、それを果たせる男だと国民に信じられているからだ。だが、それを実現するためには、腐った土台をぶち壊し、新たな基盤を築かねばならない。
まずは、王が課していた過度な税負担をまず見直すことから始めた。街中を歩くたび、貧困に喘ぐ庶民の姿が目に入る。家々はみすぼらしく、子供たちは痩せ細っていた。彼らには生きるための最低限の余裕が必要だった。だからまず庶民の税を大幅に下げた。
そして、これまで王に賄賂を渡すことで、税が優遇されていた一部の貴族や富裕層にも、公平な負担を求めた。彼らの反発は当然あったが、それを黙らせるのが俺の仕事だ。俺は総統としての権力を行使することで、反発勢力を力で抑え込んだ。
その次に手を付けたのは、無駄な事業の削減だ。この頃、王が気まぐれで始めた、城の増築などの謎のプロジェクトが山積みになっていた。そんなことに金をかける余裕はこの国には無い。俺は事業仕分けを行い、無駄なものを次々と廃止した。そのたびに、既得権益に群がるハエたちが反発してきたが、腐敗した連中には耳を貸さなかった。俺が総統になったからには、今までのように甘い汁は吸わせない。
文官の腐敗も目に余るものだった。王の無策な統治のもと、彼らは権力を乱用し、国を私物化していた。業者からの賄賂を懐に入れ、無意味な事業を繰り返し、私腹を肥やしていた。俺は徹底的に彼らを排除した。家柄だけで採用されてきた文官たちは次々と失脚したよ。代わりに実力主義を導入した。新しい試験制度を設け、能力がある人間を積極的に登用したのだ。これによって、有能だが貧しい家の人間にも役職に就くチャンスが訪れた。能力があれば、家柄など関係ない。俺が求めているのは、結果を出せる者だ。
次に、警察組織を作り上げた。これまでは兵士が警察業務を兼任していたが、俺はそれを独立させた。ヒルトハイムに専用の警察組織を設立し、これを俺の直轄組織とした。警察には制服を導入し、デザインは日本の警察官とほぼ同じにした。これが大成功だった。この世界の人間には斬新なデザインに映ったようで、国民の間ではすぐに憧れの職業になった。
警察は、普通の犯罪者だけではなく、腐敗した文官や貴族なども容赦なく取り締まった。犯罪者どもが震え上がるほどの徹底ぶりだった。おかげで警察は俺の政治の象徴となり、国民の中で絶大な信頼を得る存在となっていった。
そして、秘密裏にもう一つ重要な組織を設立した。他国に対する諜報機関だ。近衛兵やミュラー兵の中で特に敏捷性に長けた者を選別し、訓練を施した。彼らは影となり、他国の動向を探るために活動する。情報は力だ。誰にも知られないように、静かに、しかし確実にその活動を広げていった。
「警察機関は総統の目、諜報機関は総統の耳」と国民の間でささやかれるようになった。俺の改革は始まったばかりだ。国民のため、より良いヒルトハイムを作る。国を良くするために手段を選んではいられない。俺はそう覚悟を決めていた。




