第80話 新しい時代の始まり
国に戻った俺は、すぐさま行動に移した。ヒルトハイムの政治の全権を俺に委任するかを問う国民投票を実施することにした。正直なところ、投票なんてしなくても良かった。世界の王とも称されるハイエルフ王から直接「レオンにこの国の政治を任せろ」とお墨付きをもらったのだから。俺が実権を握る理由は、本当はそれだけで十分だった。だが、俺はあえてそれを避けた。国民が俺を選んだという事実が欲しかったんだ。
何故か?それは、この国を変えるために、国民の意識を変える必要があったからだ。政治とは、国民が選んだ人間によって行われるべきだ。彼らには、自分で自分たちの未来を選ぶ義務があるのだ。
ヒルトハイムには、まだ「政治は生まれつき特権を持つ者がやるもの」という固定観念が根強く残っている。民衆はただ従うだけ、自分たちに何の力もないと信じ込んでいる。それが間違いだということを、俺はまず彼らに教えたかった。国民は上の決定を鵜呑みにするだけの存在じゃない。
今回の国民投票は、その第一歩だ。形式的には、王の持つ権力を俺に委任するかどうかを問うものに過ぎない。選挙とは少し違う。しかし、これが民衆に自分たちの意思を行使する最初の機会を与えたという意味では、ヒルトハイムにとって革命的な出来事だった。国民が自分たちの選択で未来を作るという感覚を、少しずつでも植え付けたかった。
結果は予想どおりだった。国民人気が高い俺の提案が否決されるはずがない。もちろん圧倒的多数で可決された。これで俺は、正式にヒルトハイムの政治を掌握した。
だが、これからが本当の戦いだ。投票は単なる始まりに過ぎない。ヒルトハイムはまだ「特権階級が国を支配するのが当然だ」という古い体制に縛られている。俺が目指しているのはその打破だ。権力は生まれながらに持つものではなく、国民に選ばれた者が持つべきものだという理念を、この国に根付かせること。それが俺の使命だ。
国民投票は無事に終わった。これから待っているのは数々の改革だ。古い制度を打ち壊し、民衆が政治に参加できる社会を築くための改革。そのために、俺はこれから数々の壁にぶつかる。だが、決して引き下がらない。
この国は、俺の手で変える。俺は静かに胸の内に決意を刻みつけた。ヒルトハイムは、これから大きく変わっていく。国民が主役となり、自分たちの声で政治が動く国へ。
ヒルトハイムは、もう元には戻らない。俺が、この国を変えるのだ。




