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第8話 疾風の剣

 俺はゴブリンを斬り殺した。

 あの時が生き物を斬った初めての瞬間だった。だが、血の感触も、生き物が絶命する感覚も、特に心を揺さぶらなかった。この戦場を生き延びるために、そんなものを感じている余裕なんてない。俺はただ、次へと向かった。


 むしろ、ゴブリンを斬った瞬間の感覚――その異様な快感に近い感覚を、もう一度体験したいという欲求も湧き上がっていた。この謎の力を完全に自分のものにしたい。だから、日没まで俺はゴブリンを斬り続けた。何度も、何度も。気づけば手足は鉛のように重く、足元には血溜まりができていた。


「疾風の剣技」と呼ばれ始めたのも、この頃からだ。理由は単純だ――剣と一体となって敵に斬りかかる俺の動きが、まるで人間離れした速さだったから。


 もっとも、この頃の俺はまだ、この戦い方に慣れていなかった。敵を一閃で斬り捨てられる時もあれば、思ったより浅い一撃に終わり、殺しきれないこともあった。そんな時、助けてくれたのは背後に控える魔法銃部隊だった。


 魔法銃――これはこの異世界で戦争の形を大きく変えた革命的な武器だ。見た目はほぼライフル銃と同じだが、弾丸は鉛ではなく、魔弾という特殊な弾を撃ち出す。魔弾には魔法が込められており、その魔法を無詠唱で発動させることができるのだ。つまり、魔法の修行を積んでいない者でも、少量の魔力さえあれば、簡単に強力な魔法を扱えるというわけだ。


 この魔法銃を開発したのは、かの有名なハイエルフの天才発明家、ロシェ・リヴィエール。彼の発明によって、これまで魔王軍に圧倒されていた西方諸国連合は息を吹き返し、再び攻勢に転じることができるようになった。

 その日の戦いでも、俺が斬り損なったゴブリンに魔法銃部隊がとどめを刺してくれた。魔法銃部隊がいなかったら、何度も危ない場面があった。


 魔法銃が実用化されて以来、それまで魔王軍を相手に劣勢だった西方諸国連合は息を吹き返した。特に、西方諸国連合の主戦力である俺たちヒルトハイム王国は、その恩恵を多分に受けた。この世界で人間は、人によってバラツキはあるものの、少量の魔力を持つ種族。魔法銃が扱えるほどの魔力を持つ人間は、魔法銃部隊に配属され、特に重用されることになった。

 俺の兄、ルイスは魔力に恵まれた戦士の一人。彼は指揮官としてだけでなく、魔法銃兵としても優秀な能力を持っている。


一方で、レオンには魔力がなかった。だから俺は魔法銃を使うことができない。兄とはここでも正反対。だからこそ、剣に頼るしかない。俺は剣の技を極めるしか、この世界で生き延びる道はなかった。


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