第65話 反乱の火種
国内を回り、各地で直接国民の声を聞いたことで、俺はヒルトハイムの現状を詳細に把握することができた。そして、その現実は俺の想像をはるかに超えるほど酷かった。
まず、俺がエルダンシアに行く前と後で、国民の税金は倍に膨れ上がっていた。それだけでも重い負担だが、問題はそれだけじゃない。ヒルトハイムは今も魔王軍との戦争を続けている。その戦争が無理に続けられているせいで、徴兵により農村部では男手が奪われ、農作物を育てることすら満足にできない状況だった。収穫が減れば、当然食料が不足する。都市部ではこの影響が顕著で、物価は急激に上昇。国民の生活は困窮の一途をたどり、経済は崩壊寸前だった。
「もう我慢の限界だ……」そう言ったのは、ある町の商人だった。
物資が不足し、店を開けても売るものがない。略奪行為が頻発し、治安は悪化の一途をたどる。彼の目は、疲労と絶望で沈んでいた。生活に困った人々が盗みを働き、それを止めるために軍が出動。治安維持を強化していた。一時的に略奪は減ったものの、国民の不満は噴き出しそうなほどに膨れ上がっていた。
この状況で、自然発生的に反乱軍が組織されたのは当然の成り行きだった。民衆は声を上げ、剣を手にし、怒りを爆発させる準備をしている。だが、その動きを水面下で抑え込んでいたのが、俺の兄、ルイスだった。リーダーとして担ぎ上げられながらも、彼はなんとか反乱軍をなだめていた。
ルイスは水面下で民衆の怒りを食い止めていたんだ。反乱軍はルイスを信じ、彼の言葉に耳を傾けていた。
そんな折に行われた選挙で、俺が国王補佐官になったため、反乱軍は一時的に沈静化した。だが、それも表向きの話だ。民衆はまだ怒りを抑え込んでいるだけ。少しの火種で一気に燃え上がるだろう。今はただ、選挙の結果に対する期待感がその怒りを押しとどめているに過ぎない。あちらこちらでくすぶり続けている火種が、いつ大きな爆発を起こしてもおかしくない状態だった。
俺の中で焦りが募る。この国の状況を改善するために、俺は何をすべきか。国王やマルセルが目先の利益に囚われている中で、俺が何かしなければ、ヒルトハイムは確実に破滅への道を進んでしまう。
俺は国王補佐官として、この国をどうにかしなければならない。しかし、与えられた役割は広報担当に過ぎない。俺にはほとんど力がない。それでも、国民のために行動しなければならない。反乱の火種が消え去る日まで、俺の戦いは続く。
俺は拳を握りしめ、決意を固めた。




