第64話 さらなる増税
国王補佐官としての最初の仕事は、胃が痛くなるようなものだった。来年はさらに増税。それを、俺が国民に伝えること。増税の理由は、国王が城をさらに豪華にしたいからだ。国民の生活がどれだけ厳しい状況かなんて、国王はこれっぽっちも気にしちゃいない。自分の贅沢のために国民から税金をむしり取る。それが今のヒルトハイムの現実だった。
これまで、増税を国民に伝える役目は下級文官が担っていた。マルセルが上級文官に命じ、上級文官が下級文官へ、そして最後に国民に伝わる。完全なピラミッド構造だ。俺が補佐官になる前は、こうして国民からのクレームを下級文官だけが受け止めるように作られたシステムだった。
しかし、今回は違った。俺はこの腐った連鎖を断ち切るため、直接国民に伝えることを決めた。マルセルは渋い顔をしたが、俺は譲らなかった。政治家というのは、国民の前に立つべきだ。どんなに厳しい状況でも、国民に顔を見せ、言葉を届ける。それが俺の信念だった。だからこそ、俺はヒルトハイム中を巡ることにした。
最初の村に足を踏み入れた瞬間、冷たい視線が俺を迎えた。国民は俺をじっと見つめ、次第にその視線は怒りに変わっていった。そして、俺が増税の知らせを伝えると、罵詈雑言が容赦なく浴びせられた。
「お前は王の犬か!」
「裏切り者!」
「俺たちを殺す気か!」
その言葉は鋭く、心に突き刺さる。俺を信じて投票した者たちが、今では裏切り者だと罵ってくる。信頼を裏切ったという事実が、何よりも苦しかった。英雄だと称えられた俺が、今や憎まれる存在となってしまった。
それでも俺は逃げなかった。どれだけ罵られても、国民の前に立ち続け、彼らの怒りを真正面から受け止めた。なぜなら、政治家とは、国民に寄り添う存在でなければならないからだ。彼らの声を無視して、ただ命令を伝えるだけでは意味がない。俺がここに立つ理由は、彼らの生活を少しでも良くするためだ。そのためには、まず国民が今どういう生活をしているのか、直に感じる必要があった。
訪れる場所、訪れる場所で俺は同じように罵倒された。しかし、その中でわずかに見えるものがあった。疲れきった目、崩れた家々、そして寒さを凌ぐためにまとった薄い服。彼らの生活がどれだけ厳しいのか、言葉よりもその姿が物語っていた。俺はその現実を知るために、こうして旅を続けたんだ。
「レオン様、何でこんなことをされるんですか?」と、ある村の老人が問いかけてきた。
「俺は、ただ国民と共にありたいだけです」と俺は答えた。
嘘偽りなく、真実を伝える。それが政治家の仕事でもある。そして、それを続けることで、いつか国民の信頼を取り戻すつもりだ。




