第56話 リリィの想い
復興作業が進む中、俺はリリィと何度か話す機会があった。特に印象に残っているのは、彼女と魔法について語り合ったことだ。
彼女が話す魔法の話は、俺にとても新鮮で、興味深いものだった。
「この世界で魔法を使う時に、一番重要なのは何か分かる?」
リリィが問いかけたので、俺は当然のように答えた。
「支配だろ」
この世界で魔法を使うには、その魔法について理解し、その魔法を自分の支配下におく、というのが常識的な考え方だ。
「そうよ。だから、どの魔法でもマスターするには時間がかかる。特に複雑な魔法ほど、それを支配するために長い修練が必要になるの。当然、その時間を惜しむ者がほとんどなのよ」
リリィは続けて、ハーフリングの魔導具についても教えてくれた。ハーフリングたちが使う魔導具の制作は土魔法を基盤としている。土や鉱物の特性を理解し、そこに自分の魔力を注ぎ込んで形を与える。そうすると、魔法銃や魔弾のような魔導具を生成することができる。
「ゴーレムも同じようなものだろう?」
俺はリリィに問いかけた。
「そうね。ゴーレムも土魔法の一種よ。魔法銃や魔弾と同じく、素材を理解し、そこに魔力を注ぎ込んで命を与える。でもね…」
リリィの言葉には少し寂しさが混ざっていた。
「ゴーレムを造れるようになるには相当な時間と努力が必要なの。そして、多くの魔導具技師はその努力を放棄してしまうの。だって、魔法銃を造った方が早くて儲かるからね」
リリィの言葉に、俺は考えさせられた。結局のところ、人は効率を求めてしまうものだ。時間も労力も限られている中で、より実用的で利益を生む方を選ぶのは当然だ。合理的な考え方を好むハーフリングならなおのことだろう。しかし、リリィは違った。
「リリィ、お前はなぜゴーレムを造れるまでになったんだ?」
彼女は少し笑い、肩をすくめた。
「変わり者だと思われてるのは知ってるわ。ゴーレムを造れるようになるまで土魔法を極めるなんて、バカげてるってね。でも私は…ゴーレムを造る技術が私たちの代で失われるのがイヤだった。ゴーレムを造り出したのは、私たちの先祖だから」
リリィはその言葉をさらりと口にしたが、その裏にはどれだけの苦労があったのか、俺には想像もつかなかった。魔力を使い、土を操り、自らの意思で命を吹き込む。まさに「支配」の究極形だ。
「いろいろ言われることもあるけど、後悔はしていないわ。それが私の選んだ道だから」
とリリィは締めくくった。俺はその時、彼女の持つ覚悟と孤独を感じ取った。リリィは自分の信念を貫いてきた。それは他者に理解されなくても、彼女にとっては重要なことだった。




