第54話 復興
一ノ町を取り戻したとはいえ、俺たちの戦いはまだ終わっていない。次に待っているのは、街の復興だ。
復興。それは一筋縄ではいかない仕事だ。ましてやフェンリルの襲撃によってボロボロにされた一ノ町を立て直すとなると、その労力は計り知れない。俺は知っていた。この手の仕事において、何が最も重要なのか。それはまず、被害状況の正確な把握だ。
戦場から戻った俺は、早速ハーフリングの文官たちに被害状況の正確な把握を指示することにした。まずは現状を知ること。それが何よりも重要だ。被害の全貌が分からなければ、復興の計画を立てることもできない。計画がなければ、街を元通りにすることは不可能だ。
フェンリルに襲われた後の一ノ町は、まるで廃墟だ。荒らされた家々、破壊されたインフラ。すぐに全てを元どおりにすることは不可能だろう。だからこそ、何を最優先に修復するべきか、優先順位をつけて進めなければならない。上下水道、道路、住居、それに城壁。優先すべきものは山ほどある。
ハーフリングたちは真面目だ。俺の言葉に無駄口を叩く者は一人もいない。すぐに動き出し、状況を整理し、報告書を作り始める。彼らの勤勉さには目を見張るものがある。まるで兵士のように、指示通りに動く。だが、その一方で、彼らはやはり事務仕事に精通している者たちでもある。だからこそ、すぐに問題が浮かび上がった。
「予算が、足りません」
淡々とした声でそう報告してきたのは、文官の一人だった。背が低く、いつも細かい書類を手にしている小柄なハーフリング。彼の冷静な目が、俺をじっと見ている。まるでそれが当然の事実であるかのように。
予算が足りない?この非常時に?復興作業が最も必要とされている今、そんなことを言っているのか。
どうやら、事務屋はどこの世界でも同じらしい。
非常事態が発生して、普段とは違う対応が必要な時に、真っ先に口にするのが「予算がない」「前例がない」って台詞だ。今回も例に漏れず、ハーフリングの文官たちはそんなことを言い始めた。
「予算がないだと?」俺は思わずため息をついた。
「フェンリルの侵攻なんて前例がないんだから、その復興作業の予算が足りないのは当然だろう?」
俺は皮肉を込めて言い返す。
「予算がどうだとか、前例がどうだとか。そんなことを気にしている暇があると思うか?今は非常時だ。俺たちが行動を起こさなければ、一ノ町は二度と蘇らないかもしれないんだぞ」
文官は黙った。
「分かるだろう?」俺はさらに一歩前に進み、文官の肩に手を置いた。
「机の上で書類に目を通しているだけじゃ、この町は救えない。復興には行動が必要なんだ。何が何でも、この町を再建しなきゃならない。それが俺たちの仕事だ」
彼は目をそらしながら、何度か頷いた。
こういうとき、事務屋を説得するのは一苦労だ。だが、俺は知っている。最終的には、無理やりでもやらせてしまえば何とかなるものだ。そう、どんなに反論があろうとも、やるしかないのだ。予算がなければ、他の方法を探す。前例がないなら、俺たちがその前例を作る。それが俺たちの役目だ。
文官たちは渋い顔をしていたが、俺の言葉に反論する余地はなかった。彼らもまた、この街の住人だ。自分たちの家族や仲間が戻ってくる場所を再建しなければならないのは、彼ら自身の責務でもあるのだ。
「すぐに予算の調整をしろ。そして、今すぐ取り掛かれるところから手をつけるんだ」
俺は冷静に、だが強く命じた。
どんなに難しい状況でも、行動を起こすことが重要だ。復興作業が遅れれば、街の人々は再び家を失い、生活を立て直すことができなくなる。だからこそ、俺たちは動き続けなければならない。
俺は、もう一度街の廃墟を見回した。この瓦礫の山を、もう一度人々が暮らせる街に戻すために、何ができるかを考えながら、次の一手を打つ準備を整えた。




