第50話 高速移動砲台
俺はハーフリングの保安兵たちを指導することにした。ハーフリングの保安兵たちを広場に集める。彼らの小柄な体格は、どこか頼りなさを感じさせるが、見た目に騙されちゃいけない。こいつらは、魔力の扱いにかけちゃ人間より上だ。うまくいけば、俺の教えがあっという間に身につく。そう思っていた。
「これからお前たちに、一ヶ月で肉体強化魔法をマスターしてもらう」
そう口にした瞬間、保安兵たちが驚きと戸惑いの表情をみせる。この世界において、魔法をマスターするには、長い年月が必要というのが常識。とても一ヶ月でできるものではない。
「まず、ミュラー流剣術を教える」
そう伝えると、保安兵たちは、さらに困惑した表情をみせる。しかし、全てを説明している暇はない。俺は保安兵たちに練習用の木剣を渡し、剣の振り方から教える。
ハーフリングたちは戸惑いながらも、とりあえず俺の指導にしたがってくれた。するとどうだろう。俺の思ったとおり、彼らはすぐに肉体強化魔法を体得し始めた。さすがハーフリング。魔力の扱いに長けている。
しかし問題もあった。ハーフリングたちは小柄で身体能力が人間ほど高くない。
肉体強化魔法で身体能力を強化しても、その効果が人間ほど高くならなかった。
だがそれを解決する方法がある。魔法銃だ。そう、彼らにはこれがある。
「肉体強化魔法を使って高速移動しながら、魔法銃を撃つんだ。動きながら撃つ。その速度で遠距離から攻撃を仕掛ければ、敵は為す術も無いだろう」
俺の言葉を理解すると、彼らも練習に熱が入る。彼らの動きは日々、研ぎ澄まされていった。
練習は初めてちょうど一ヶ月後。広場に集まるハーフリングの保安兵たち。手にする魔法銃に魔弾を込め、視線は真っ直ぐ前方を見据えている。その瞬間、広場中が再び静寂に包まれた。風の音さえも聞こえない。まるで時間が止まったかのようだった。
そして次の瞬間、彼らの足が地面を蹴り、音を置き去りにして駆け出した。空気を切り裂く音と共に、四方八方から魔法銃の閃光が次々と走る。照準はブレず、見事な命中率だ。肉体強化魔法は視力も強化する。それにより、高速移動しながらも、敵を正確に狙撃できる。
「これで完成だな……高速移動砲台の誕生だ」
俺は胸の中で静かに笑った。あいつらの戦い方は、まさに魔法銃を装備した移動要塞だ。これで、一ノ町に潜むフェンリルどもを一掃する算段は立った。あとは実戦で、この新たな戦術がどれだけ通用するか……俺は楽しみながら、決戦の日を待った。




