第48話 逃走劇の終焉
目の前には三頭のフェンリルが俺を囲んでいる。低い唸り声をあげ、鋭い牙を見せながら狙いを定めてくる。三頭のフェンリルを相手にして、さすがの俺でも武器無しでは勝てない。だが、この時の俺の目的は奴らを倒すことじゃない。ハーフリングたちが安全に避難を終えるまで、時間を稼げればそれでいい。
フェンリルは速い。肉体強化魔法を使っても、その俊敏さにはついていけない。俺の拳や蹴りは、ことごとく空を切るだけだ。相手が一頭だけならカウンター攻撃をしかけることもできるが、相手が三頭もいてはそれも難しい。二頭や三頭から同時に攻撃されると、カウンター攻撃を繰り出すことができない。
ただし、肉体強化魔法により俺の防御力も強化されている。奴らの攻撃を受けても、致命傷にはならない。傷は増えていくが、まだ耐えられる。
俺は冷静に時間を稼ぐことに専念し、少しずつ後退しながら門へと向かう。奴らの攻撃をかわし、かわされつつ、なんとか引き延ばす。
やがて、門が視界に入ってきた。どうやら、ハーフリングたちは無事に避難を完了したらしい。これで俺も城壁を超えて二ノ町へ逃げ込むことができる。――そう思った瞬間、背後に異変を感じた。
「なんだよ、これ……」
振り返ると、いつの間にかフェンリルの数が増えていた。どこかから次々と集まってきたらしい。今では十頭以上が俺を取り囲んでいる。いくら肉体強化魔法を使っていても、この数を相手にして城壁を越えるのは無理だ。
「やばいな…」
焦りを感じ始めたその時、突然、上空から轟音が響いた。見上げると、城壁の上から無数の魔弾が降り注いでいた。ハーフリングの保安兵たちが魔法銃を乱射して、フェンリルの群れを狙っている。
フェンリルたちは一瞬、ひるんだ。これを逃すわけにはいかない。俺は全力で動き、フェンリルたちの包囲をすり抜けた。そして、肉体強化魔法を使って一気に城壁を駆け上り、二ノ町へと飛び込んだ。
息を切らしながらも、無事に城壁の向こう側へ避難できたことに安堵する俺。しかし、一ノ町にフェンリルたちはまだ残っている。戦いはまだ終わっていない。




