第47話 襲い来る獣
街中を見回していると、逃げ遅れて家の中で怯えているハーフリングたちを数人見つけた。彼らは恐怖に震えながら、助けを求めてきた。俺はすぐに声をかけ、彼らを連れて門の方へと向かうことにした。
途中、暗がりで何か異様な音が聞こえた。立ち止まり、音のする方へ視線を向ける。そこにいたのは一頭のフェンリルだった。獣のような唸り声を漏らしながら、何かを貪っている。
目を凝らすと、それが何を食べているかがはっきりとわかった。
その瞬間、胸が冷たく締め付けられるような感覚に襲われた。フェンリルがむさぼっていたのは、昼間に出会ったあの少年兵だった。既に命を失っている彼の顔は、恐怖で凍りついていた。
「くそ……!」
その光景を見て、俺の胸に怒りが沸き上がる。しかし、今は逃げるしかない。ハーフリングたちを先に避難させようとした。だが、フェンリルがこちらに気づき、鋭い視線をこちらに向けた。
「ここは俺が引きつける…… お前たちは急いで逃げろ!」
俺は自分が囮になることを決め、彼らを先に二ノ町につながる門の方角へ逃がす。フェンリルを引きつけるために、自分から前に出て跳び蹴りを繰り出すが、獣のような素早さであっさりとかわされる。
「食事を邪魔されたって顔してるな……」
フェンリルは唸り声をさらに大きくし、俺に向かって突進してくる。仕方ない、戦うしかない。
俺は空手四段だが、四足歩行の獣と戦うのは初めてだ。まずは様子を見るために、通常の打撃で何度か攻撃を試みる。当たらない。フェンリルの動きは速すぎる。
肉体強化魔法で自分の身体能力を上げているものの、スピード勝負ではフェンリルの方が勝っていた。俺の攻撃はことごとく空を切り、逆にフェンリルの爪や牙が俺の体に浅い傷を刻んでいく。
「スピードじゃ勝てないか……ならば……」
俺は戦い方を変えることにした。低く構え、スピードではなく一撃必殺に賭ける。フェンリルの動きは直線的だ。行動を読みやすい。チャンスがくるまで防御を固めて待つ。
切り傷が増えていく。チャンスは来ない。肉体強化魔法で防御力が上がっているとはいえ、あまり長くはもたない。
だが、ついにその瞬間が来た。正面からまっすぐやってくる相手の噛みつき攻撃に合わせて、俺は正拳突きをカウンターで繰り出した。
俺の拳が、フェンリルの顔面に深々と食い込む。
その一撃で、フェンリルは沈んだ。なんとか勝利を得た俺は、深く息をつきながら立ち上がる。
やはり武器無しで魔物の相手はキツい。こんな戦いを続けていては体がいくつあっても足りない。そう考えていた、その時、背後から新たな気配が俺を包み込んだ。
いつの間にか、俺は別の三頭のフェンリルに囲まれていた。




