第41話 リリィ・ブラックウッド
エルダンシアに足を踏み入れてすぐに、俺は武器を取り上げられた。理由は単純だった。エルダンシアでは、保安兵以外の者が武器を携帯することを一切認めていないから。どこかとまどいを感じながら、俺は剣を差し出した。戦場で何度も命を救ってくれた愛用の剣を手放すのは、まるで片腕を失ったような感覚だ。しかし、ここは他国。ルールには従うしかない。
その後、俺とフランツは、彼女に出会った。リリィ・ブラックウッドだ。彼女は魔導具技師でありながら、エルダンシアの案内役として、俺たちに様々な場所を紹介してくれた。その頃から、彼女は非常に魅力的だったよ。背は低いが、すらっとした体型に、どこか挑戦的な光を宿す瞳。赤い髪をきちんとまとめ上げ、元気いっぱいのかわいらしさもありながら、顔立ちはどこか冷徹な印象を与える。それがまた、彼女の美しさを引き立てていた。
「エルダンシアでは、魔導具の技術がすべてと言っても過言ではないわ」
と、リリィは我々を案内しながら語った。その言葉には、エルダンシアの国の誇りと、それに対する深い愛情が込められていた。
エルダンシア自体は、目立った資源を持っていない。だからこそ、彼らは頭を使ってこの国を発展させてきた。具体的には、魔法石を輸入し、それを魔導具に加工することで外貨を稼いできたという。まさに加工貿易ってやつだ。日本人なら小学校の社会科の授業で習うやつ。この国ではその戦略が見事に機能している。
「私たちは知恵と技術でこの国を発展させてきたの」
とリリィは言った。確かにその通りだろう。この国を見渡すと、無駄のない建築物や綺麗に整備された道路や上下水道などが、そのすべてを物語っている。
ハーフリングの特性なのかエルダンシアの国民性なのか分からないが、彼らは真面目で思慮深く、とても勤勉だ。また政治体制も共和制で、王は存在しない。代わりに、名門とされるいくつかの家の代表が集まり、国の政治を動かしているという。リリィのブラックウッド家も、エルダンシアで名門とされる家の1つ。
さらに、エルダンシアは子供たちへの教育が非常に熱心だ。平民であっても学校に通えるし、才能があれば飛び級で成長することができる制度もある。この国には、どんな身分であろうと、才能ある者が正当に評価される機会が与えられていた。
「エルダンシアは、本当に素晴らしい国よ」
とリリィは胸を張って言った。その自信に満ちた言葉から、この国に対する誇りと愛情がひしひしと伝わってきた。
リリィが説明を続ける間、俺は彼女の背後にある世界を見渡していた。見た目は幼いハーフリングたちがせわしなく動き回っている。しかし、彼らの目には光が宿っている。未来に希望を抱いているのだろう。ヒルトハイムには無かった光景だ。
エルダンシア――この国の未来には、きっと俺が思っている以上の可能性が秘められている。俺はこのとき、そう確信していた。




