第26話 近衛兵団の戦い方
近衛兵に任命されてから数日が経過したが、俺たちは相変わらず、近衛兵団の一員とは認められていなかった。というか、無視されていた。まるで存在しないかのように扱われていた。王の命令によって『特例』で入団した俺たちだったが、近衛兵団での立場は厳しいものだった。
近衛兵団は50人程度。小規模な部隊だ。兵士としての人数は少ないが、一人一人が鍛え上げられているのは見て取れた。彼らは日々、城の中庭で剣術の稽古をしていた。みんな大きな体をしていて、目を引くような筋肉を持っている。だが決してそれを誇らしげに見せびらかすようなマネはせず、地道に真面目に稽古に励んでいた。
左手に盾を持ち、右手に剣を持って構えている。盾は前に突き出し、どっしりとした構えを作っている。見たところ、防御がメインのスタイルのようだ。彼らの剣術もまた、無駄に華美な動きがなく、どこかしら実戦的なものを感じさせるものだった。
また、素振りや型の稽古もしている。剣の技術は体系的に組み立てられていた。自由組み手だけで終わっていた以前のミュラー兵団の稽古とは比べものにならない。さすが、伝統と格式ある近衛兵団は格が違う。
だからこそ、とても惜しい。
彼らの剣術は、防御は確かに完璧だった。だがそれだけ。攻撃の技術がなければ、いくら守ってもジリ貧だ。防御だけでは敵に勝てない。俺は数日間、黙ってその稽古を見守ったが、どうしても気になって仕方なかった。
数日我慢してみたが、もう限界だった。本当に惜しい、もったいない。こんなに恵まれた体と真面目な性格の兵団なのに。俺が指導すれば、もっと強くなれるはずだ。
そこで、ヴォルフガングに伝えた。
「近衛兵も、ミュラー流剣術を学んでみないか? きっと、もっと強くなれるはずだ。」
しかし、彼の反応は予想通りだった。
「やれやれ……」
まるで田舎者の戯言を聞いているかのように、ヴォルフガングはため息をついた。俺を軽くあしらうように、『お前は何を言っているんだ』という顔をされた。
だが、俺は諦めなかった。毎日、毎日、繰り返し伝え続けた。「ミュラー流剣術を試してみてくれ」と。こちらの剣術なら、攻撃力が格段に向上する。それが彼らにも伝われば、近衛兵団はもっと強くなるはずだ。
しかし、返ってくるのはいつも同じ反応だ。誰も耳を貸そうとはしない。それでも、俺は言い続けた。数日が過ぎ、俺の忍耐が試される日々だった。だけど、ここで引き下がるわけにはいかない。俺の言葉がどんなに無視されても、俺の意志は折れなかった。
「それなら試合をしないか」
俺はそう提案した。一対一の勝負だ。勝てば、こちらの強さを証明できる。俺の強さを見せれば、きっと彼らも納得してくれるだろうと考えた。
最初は、ヴォルフガングを含め、誰も乗り気じゃなかった。田舎者の挑戦なんてと鼻で笑っていた。しかし、俺のしつこさに根負けしたのか、ついに試合をしてくれることになった。
試合とはいえ、俺にとっては久々の実戦だ。しかも近衛兵団に俺たちの力を見せつけられるチャンス。これを逃したら、次は無いかもしれない。俺の心臓が静かに高鳴る。




