第25話 ヴォルフガング・プラントベルグ
近衛兵団に配属された初日、城の中庭には冷たい空気が漂っていた。いや、冷たいのは空気だけじゃなかった。俺たちに向けられる視線も、まるで氷のようだった。
「彼らが今日から『特例』で近衛兵団に加わることになったものたちだ」
俺達を近衛兵団の団員に紹介したのは、大柄な近衛兵長、ヴォルフガング・プラントベルグだ。身長は190センチ超、体重は200キロ近く。巨漢という言葉では片付けられない筋肉の塊。服の上からでも、その分厚い筋肉が分かる。鋼鉄でできた壁のように、圧倒的な存在感があった。おまけに、その顔には深い傷跡がいくつも走り、これまで生き抜いてきた修羅場の数を物語っていた。
「さて、稽古だ」
ヴォルフガングが一声かけると、近衛兵たちは無言で動き出した。彼らはいつものように、中庭で剣の稽古を始めた。俺たちに目もくれず、完全に無視している。紹介が済んだ後は、まるで俺たちなんて存在しないかのように振る舞っていた。
近衛兵団は全員がヴォルフガングに負けず劣らずの大柄。俺たちとは比べものにならない。また、彼らの服装は派手ではないが、質の良い布で作られており、上品さを感じさせる。俺たちみたいに、貧相な体とボロボロの服で城に来た連中とは、全くもって対照的だ。俺たちが、彼らの目にどう映っているかは言うまでもない。
どうすれば良いか分からず呆然と立ち尽くす俺達。それを見たヴォルフガングが話しかけてくれた。
「お前たちも急に変な命令をされて大変だったな。どうせ王のきまぐれだ。しばらくはここで過ごせ。そのうち元の軍に戻れるだろうから、それまでおとなしくしていればいい」
この時に俺はやっと、彼らは俺たちから剣を教わるつもりがないことに気づいた。彼らにとって、俺たちの存在など取るに足らない。それが態度の隅々から滲み出ていた。




