第24話 近衛兵団
王の近衛兵に任命された俺。正直なところ複雑な気分だった。近衛兵になることは、田舎貴族の次男坊である俺にとって、異例の大出世だ。しかし、目指していた文官ではなく、武官としての出世。皮肉だが、国王直属の部隊に加わるというのは、本当に名誉なことだ。
だが、ミュラー兵団にとっては、まさに大損害だった。実はこの時、俺1人だけではなく、ミュラー兵団からは優秀な肉体強化魔法の使い手が10人も近衛兵に異動させられた。これも王の命令によるもの。俺を1人で近衛兵に入れるのはかわいそうだからだそうだ。大きなお世話。これでミュラー兵団の戦力は一気に削られた。まさに痛恨の一撃。
10人の精鋭が抜けることで、兵士たちは戸惑い、肩を落としていたが、王の命令は絶対だ。俺たちはその命令に従わざるを得なかった。
兄がミュラー兵団に残っていることだけが、唯一の救いだ。兄がいる限り、ミュラー兵団はまだ崩れない。この頃の兄はすでに、ミュラー兵団どころかヒルトハイム王国で最も強い戦士だった。彼がいれば軍の士気は保たれる。
近衛兵団。こいつらはこの国で一番の歴史と伝統を誇る部隊だ。国王直属の部隊で、その主な任務は王族の守護。王とその一族の命を守ることが目的の部隊で、それ以外の任務ないに等しい。国ができた時から、剣と盾で王を守り続けてきたエリート部隊。基本的には世襲制で、選ばれた家系のみがその任に着くことができる。だから、近衛兵は全員が強いエリート意識を持っている。『俺たちは普通の兵士とは違う』というプライドを持っている。
そこに今回、俺たちが『特例』として入隊することになった。しかも、ミュラー流剣術という、伝統とは全く異なる新しい技術を教える立場として。田舎の貴族が王都のエリート貴族に剣を教える。それが、彼らの誇りをどれだけ傷つけることになるか。この時の俺は、それを知るよしも無かった。




