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政治経済エッセイ

「地価税」は「財源」になりえるのか? 国民民主党の「国民への裏切り行為」とは?

作者: 中将

筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。

 今回は、国民民主党の古川代表代行が日曜報道の中で「財源」として挙げた「地価税」について個人的な意見を述べていこうと思います。



質問者:

 地価税って聞いたこと無いんですけど……今は無い税金ですよね?



筆者:

「地価税」は、土地の保有コストを高めることで土地の投機や地価の高騰を抑え、有効活用を促す目的で、固定資産税とは別に1992年(平成4年)1月1日から施行されました。


 しかし、その後、土地に対する需要は低迷し、急激な地価上昇は見込まれなくなったことから、1998年(平成10年)から現在まで「停止」という状態なのです。



質問者:

 ただ「停止」となるとすぐに「復活」もできそうなので「財源」の一つとして話に挙がっているということですか?



筆者:

 簡潔に言えばそういう認識で良いと思います。


 そして、国民民主党の古川代表代行は「都心の地価がバブル期を超えてきている」ことから課税の正当性を主張しているという事です。



◇「かつての地価税」は「大企業専用税」だった



質問者:

 でも、固定資産税とは別に課税となると、消費税と同じようにまた借家などに価格に転嫁されませんか?



筆者:

 「かつての地価税」という事を前提にお話をさせてもらいますと、その可能性は低いです。


 「かつての地価税」は、所有する土地が1,000平方メートル以下の住宅地の場合、非課税になります。

 よっぽどの大規模団地で一括の土地になっていない限りでは居住地域で地価税が課税される可能性は低いと思います。

 課税されなければ転嫁される心配もありません。


 基本的に「地価税」の課税対象としているのは

 150平方メートル以上の「住宅以外の土地」です。


 住宅以外の土地でも


・農業用地や林業用地で、かつ、実際に農業や林業を営んでいるもの

・公共用地や公益法人所有の土地

・宗教法人所有の寺社などの土地


 などは非課税です。


 基本的には事業用賃貸施設、商業施設や工場などの土地に限られます。


 しかも5億〜10億の定額の基礎控除あり、よほどの大都会の一等地でも無ければ課税対象にすらなりません。



◇「地価税」を「財源」とする懸念点



質問者:

 流石に5億も価値がある土地を持っている方はお金持ちでしょうからね……。


 そんなに心配する税金では無いという事ですか……。



筆者:

 ただし注意しなくてはいけないのは、今触れたのは「かつての地価税」だという事です。



質問者:

 どういうことなんでしょうか?



筆者:

 相続税は平成6年改正まででは5000万円の基礎控除+1000万円×法定相続人の人で普通の人にはほとんど関係の無いものでした。


 しかし、平成25年の改正からは3000万円+600万円×法定相続人の数と大きく課税対象者が増えることになりました。(最低税率は変わらず最高税率が50%から55%に)


 このように、「気が付けば課税対象者になっている」という事もあり得るのです。


 ※ちなみに相続税については「現役世代が減税されて、年金が潤沢に支払われている前提において」引き上げても良いと思っていますが、現状ではようやく残したお金が没収されるだけの状況なので問題です。



質問者:

 なるほど、だから「かつての地価税」という言い方だったんですね……。

 「今の時代に合わせて」とか言って課税対象者を増やしそうですものね……。



筆者:

 消費税などの全員が関わる税金以外では、該当する人以外はほとんど抵抗しないためにこの「ちょっとずつ課税対象者を増やす戦術」は「とても有効」だと財務省は思っているはずです。

 

 社会保障費など見えにくいところで「真綿で首を締める作戦」で徐々に国民は苦しくなり可処分所得は減っていったのです。



質問者:

 でも、そもそも「地価税」って「財源」になりえるほど金額が取れそうなんですか?



筆者:

 90年代の地価税の税収を調べても分からなかったんですけど、

(分かった方いたら教えてください)

 かつての税率は住宅用地の場合は0.3%、商業地の場合は0.6%、工業用地の場合は0.4%となっていたようです。


 ちなみに、24年の固定資産税の税率は1.4%で9.81兆円の税収だったようです。


 最高税率すらも半分以下の上に、先ほど申しました通り、課税対象が少ないために僕の予測では1兆円にも届かない金額、どんなに多く見積もっても4兆円程度であることが予想されます。

 そうなると「壁を178万円に引き上げ」のために必要な金額である7兆円~8兆円には遥かに届かないことが予想されます。



質問者:

 そうなると、「地価税」が復活したとしても、「壁が178万円」になるとは限らないという事なんでしょうか?



筆者:

 結論から申しますとそうなります。


 ただ、先ほどから申してます通り「新しいタイプの地価税、どちらかと言うと第二固定資産税のような形」として「広く浅く」取ることになれば話は変わってきます。


 1億の固定資産から7万円徴収すれば7兆円になります。

 1万の富裕層から7億円を取ることはかなり困難(そもそもそんなに持っている人はいないし、持っている人は資産を日本から移すため)なので、


 そう言った「財源確保」の方法になってくることが容易に考えられます。



◇国民民主党が主張しなければいけないこと



質問者:

 「第二固定資産税」タイプだと悲惨なことになりそうですね……。


 「これまでの地価税」タイプだと国民民主党さんは“苦し紛れ”みたいな形で主張したに過ぎないのでしょうか?



筆者:

 国民民主党は以前からこれからのフロー(収入)に対する減税、ストックされた資産に対する課税を唱えており、その主張の延長線でしたに過ぎないと思っているはずです。


 ここで最大の問題は「税収の上振れや予算の使い残しがある」として「103万の壁を178万円に引き上げるために財源は必要ない」と玉木氏などが主張してきた内容と整合性が取れていないということです。



質問者:

 確か22年度の補正予算だけでも使い残しが11兆円あるとのことでしたね……。


 国民民主党の古川さんの発言は、

 自民党の小野寺政調会長の「財源は無いのか?」「国民の手取りが増えてしまう」

 という発言に対しての回答だと思うんですけど、

 それに対してはどう答えていけばいいんでしょうか?



筆者:

 通常の予算の使い残しでも21年度は28兆円、22年度は11兆円とある意味“安定して”使い残されているわけです。


 12月25日の報道では24年度の税収(73・4兆円)を上回り、70兆円台後半と6年連続で過去最高を更新する模様です。


 物価が上がる状況では税収が増えることは当たり前であり、それに伴う「壁」も引き上がって当然なわけです。


 2番目に、「財源が7兆円~8兆円不足」という試算が「景気の好循環の要素が皆無」であるという事を指摘しなくてはいけません。


 特に所得が低い現役世帯であれば、日々の生活に困っていますからまず消費に使います。

 そういった税収増やGDPが上がっていくことに関しては全く考慮されていないのです。


 3番目に「103万の壁設定」の時、最低賃金は611円で、毎週月曜から金曜まで毎日9時から5時まで1時間の休憩で働いた場合の年収がちょうど103万になるという試算でした。

 今の最低賃金に当て嵌めると「178万が妥当」であるということを譲ってはいけないという事です。


 発言した古川氏はこれらの前提を置き去りにして安易に「相手の土俵に上がってしまった」ことが最大の問題であると言えます。



※もっとも、役職停止中の玉木氏は火消しに走っていることから、「地価税」は党全体の総意では無いと思われます。ただし、代表代行とすら意見が違うのは党全体の意思統一が図られていないと思われるので別の懸念を生みます。



質問者:

 でも強気の発言をしてしまえば完全に交渉が決裂してしまいますよね?


 国民民主党としては成果を出したいのではないでしょうか?



筆者:

 日本維新の会が中心となって「高校教育無償化」や「学校給食無償化」などを提案してきていることから「焦り」みたいなものもあるのかもしれません。


 でも、先ほどのような説明をせずに「他の財源で補充する」という考え方は「投票してくれた国民への裏切り」だと思うんですよ。

 これをしてしまえば次の選挙で大幅に票・議席を減らすでしょうね。


 給料の手取りが増えても、他から取られたら「何も変わらない」ので“詐欺も同然”ですからね。


 仮に交渉が決裂しても自民党の小野寺政調会長や宮沢税調会長、自民党そのものを「時代錯誤」だと糾弾すればいいと思いますよ。


 本当に「国民本位の政党」でありたいのであれば交渉決裂しても問題が無いように思います。

 「財源」について話すことこそが「国民に対する裏切り行為」だという事です。


 僕としてはまだまだ国民民主党は「踏み込み」が足りず、

 「税は財源ではない」「PB黒字化目標、財政法4条が問題」「日本の財政状態は先進諸国と比べても健全」であるという事を加えて主張して欲しいように思いますけどね。



質問者:

 そもそも筆者さんは「103万円の壁は序の口」であり、消費税や社会保障・年金が日本を弱体化させている根源だという主張ですからね……。



筆者:

 消費税は正社員の給与を上げさせない理由の一つであり、

 社会保障と年金は逆進性が酷すぎて「壁」になっているわけですからね。


 この2つを解決しなければ根本的に良くはなりませんからね。


 という事でここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回は、


 ・「地価税」は90年代に存在し、現在停止中の大企業向けの税金であること。

 ・「地価税」を「財源」とするためには「第二固定資産税」として幅広く取る要素にならなくてはならないこと。

 ・そもそも景気の好循環や、使い残しがあるために「財源」の必要性が無いことをもっと国民民主党は訴えなくてはいけない。


 という事をお伝えしました。


 今後もこのような政治経済について個人的な意見を述べていこうと思います。

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