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一時の休息

毎日充実した検証を行い楽しかった旅も、とうとう終わりを迎える時が来た。

商業都市リュージュに到着したのだ。

旅の後半は嫌がるスターチスにあれこれと検証をお願いしてやつれさせてしまったが。


「やっと着いた。」涙ながらにそう言ってともかく今日は宿を取ってゆっくり休むと宿屋に一直線に連れて来られてしまった。

さすがに街中で実験したりしないよ?


宿に着いてちょっといい部屋をとったスターチスは部屋まで早歩きで向かっていく。

部屋のドアを開けると、少し良いベットと大きな桶が置いてあった。

少し経って店の従業員が何人かでお湯を持ってきて先程の桶に入れて行った。

鍵をかけたスターチスは制止する間もなく服を脱ぎさり湯の中に身体を沈めた。


いやまあ1歳ですけどね。


もう少し恥じらいを持ってだな...

色々言いたい事はあったけど、僕は紳士だからね。スターチスに背を向けてステータスボードを開いた。

最近の検証を元に魔法だけじゃなく、他のスキルも応用に必要になりましたからね。


後ろでザバッと音がしてペタペタと足音が近づいてくる。嫌な予感はした。


むんずっと頭を鷲掴みにされる。

あ、この感じちょっと懐かしい。


持ち上げられ抵抗する間もなく服を脱がされ湯船に放り込まれた。

いくら桶の風呂と言っても1歳児にはそれなりに深い。

水中でジタバタしていると、スターチスが僕を拾い上げ膝の上に乗せてくれた。

ファンタジー世界じゃ井戸で身体洗ったり川で洗ったりするのも普通だ。

それからすれば、桶でお風呂は文化的と言えるだろう...

しかしこちとら異世界出身の中身おっさんの赤ん坊なのだ、慣れない...


その後全身くまなく洗われ、また膝の上に座らされた。

彼女は気分がいいのか鼻歌を歌っている。

聞いた事のない歌だが彼女の美声によって美しいメロディが心に染みてくる。

気がついたら彼女の胸元でスヤスヤ寝てしまっていたそうだ。


「晩御飯食べに行きますよ」と叩き起された僕はタオルでぐるぐる巻きにされた状態で目を覚ました。

服は洗濯され窓の外でヒラヒラと風にそよいでいた。

え?この格好で行くの?タオルで簀巻きだよ?

俄然抗議したかったが、替えの服も持っていない。

こんな格好で連れて行ったら幼児虐待だと思われそうだが....割と似た格好のおじさんが居て言う事が無くなった。


最近は離乳食じゃなくて、ちょっと柔らかい物なら食べられる様になって来ていた。

僕は机の上に座らされスターチスの頼んだ食事を一緒に食べていた。

スターチスもエルフなだけあって少食なので、僕とシェアするくらいで丁度いいそうだ

主に野菜、少量の肉や魚など丁寧に骨をとって食べさせてくれる。

経験がある様に感じたので、子供が居るのかと聞いたら無表情にひっぱたかれた。

エルフの里ではこうして皆で子供の面倒を見るのが習わしなんだそうだ。

更に言うとこの世界のエルフは300歳くらいまではまだ子供扱いなんだって。


食事を終えた僕達は早々に部屋に戻り久々のベットでぐっすりと眠った。


目を覚ますと空が薄らと明るくなってきていた。

スターチスは未だ寝息をたててスヤスヤと眠っている。

起こさない様にステータスボードを開く


起きたら直ぐスマホを見ていたあの頃みたいだなと思った。


さてスキル検証だ、幼児の内は身体強化くらいしかフィジカル系スキルが伸ばしにくい。なのでどうしても魔法系スキルを伸ばす事が優先されてしまう。

本来であればスカウト系スキルや、クレリック系スキル等も覚えて行きたいのだがクレリック系スキルに至ってはスキルツリーの最初の一つすら暗くなっていて取る事が出来ない。

信仰する神が居ないと使えないのかもしれないな。

いずれ取りたいが今はどうする事も出来ない。


属性混合を基本とするのはどう考えても効率が悪い。「切り札」として運用するのが良いだろう。

今後は既存の魔法を現代科学の応用で強化する事を重視したいと考えている。

例えば土属性魔法にあるストーンバレットと言う魔法。名前に弾丸(バレット)と入っている様に複数の石を弾丸にして飛ばす魔法だ。ならこの弾丸に手を加えたら面白いんじゃないだろうか?

ホローポイント弾にしたり、ライフル弾にする手も良いかもしれない。

他にもファイアボールの形成時に高圧縮をかけて熱量を増加させるなんてのも面白そうだ。もっとも圧縮に関しては重力系魔術との属性混合が必要になりそうだがイメージだけでも多少の違いは作れるかもだ。


視線を感じてふと目をやると、スターチスが布団の中から顔半分だけを出してこちらを睨んでいた。

びっくりして、体がビクッとなってしまう。

「ぉあよー。」と声をかけると、ニコッと笑って「また私に酷い事をする気なんですね?」とため息をつく。

「いいですか?人には限界があるのですよ?」と体さらズイッと寄りながら凄んできた。「わ、わぁりまちた」

「よろしい。」と僕を抱き締め布団に引き込む。「分かったのなら二度寝を開始します。拒否権は認められません。」

モソモソと顔だけ布団から出した頃にはスターチスは夢の世界に入っていた。

やれやれと息を吐き、僕もゆっくりと目を瞑った。

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