魔力吸収してみたら光った
目を覚ますと両親が心配そうに俺を眺めていた。
おや?何かあったんですかね?
もしやと思い窓を見ると真っ暗だ。
む?まだ夜だと?
これはあれか、昨晩ハッスル(死語)し過ぎて魔力回復に時間がかかり過ぎて夜まで寝てたという事か?
目を覚ました俺を見て涙を流す両親。
心配をかけてしまった様だ。
でも俺は元気だし問題ないぞ!!っと体を元気良く動かし笑ってみせた。
まあ、手足を曲げ伸ばしただけなんだが。
元気そうな俺を見て安心したのか、例の離乳食を持って来て食べさせてくれた。
うむ、美味い!
全部食べてもまだ足りなく、もっと欲しいと何とかアピールしてみる。
「*****、******?」
二人ともキョトンとした顔で俺を見た上で追加の離乳食を持って来て試しに食べさせる。
モリモリと食べる俺を見て笑いながら喜んでいるのが、何か嬉しかった。
さて腹も膨れた。
身体強化のお陰か眠気はまだ来ない。
そこで俺は昨日の魔力操作検証の続きを行う事にする。
気になったのは空気中の魔力を操作し体内に取り込んだ事だ。
MPゲージが無いので増えてるのか減ってるのかも不明だが取り込めるなら、何か意味があるんじゃないだろうか?
操作の難しい空気中の魔力操作の練習にもなるしこれを繰り返してみよう。
近くにあった光を持って来て取り込む。
体内の魔力を感じる。
また近くの光を取り込むを永遠と繰り返す。
夜はもちろん、日中も暇さえ有れば周囲の光を集めてみた。
疲れたら寝て、ご飯を食べてを繰り返すこと2週間。大きな変化が2つ起きた。
1つ目は両親が話しかけて来る時度々言う同じ単語が名前なんじゃないかと認識したらステータスボードに名前が表示されたのだ。
名前はアルト。ファミリーネームはあるのかどうかも分からないが、とりあえず名前が判明したのだ。
もう1つは体内にある魔力が増えたと実感出来る程増えた事だ。
これはもしや最大魔力量が増えたという事じゃなかろうか!!
魔力量が増えればきっと意味がある。
そこで俺は可能な限り空気中の光を吸収する様に心がける事にする。
それから日々空気中の光を吸収しつつ、言語習得に励みつづけた。
そしてひと月経った頃俺はハイハイをマスターし、自由を得ていた。
苦手だったキッチン手前のコーナリングも重心の位置を調整する事で克服し、今では逃げる俺を捕まえるには夫婦2人がかりでないと不可能になりつつあった。
まだ家の外へは行けないが、家の中だけでも自由に動けるのは有難かった,
そんな事を繰り返す内に言語習得の前に身体強化と魔力操作がLv2になった。
言語理解スキルで検証していた、スキルポイントなしでスキルレベルは上げられるかについての検証結果が出たと言っていいだろう。
ただ修得したスキルに対してはそうでも、未修得スキルの場合スキルを得るまでに必要な期間が違う可能性はありそうだと考えた。
言語習得は引き続き検証していく。
こうして成長を実感すると、やはりやる気が違う。日々効率的に学んでいる為成長が著しいのだろう、両親も喜び半分躊躇い半分といった反応だった。
最近は両親の言っている事もだいぶわかってきた。
難しい言葉はまだ分からないが、簡単な事なら理解出来てきていた。
あえて言葉として話してはいなかったが、今ならおそらく言葉を話す事もできるだろう。
しかし余り目立ち過ぎても良い事は無いだろうと判断しあえて話さない様にしていたのだ。
しかしある日、思わぬ形で両親に俺の能力がバレる事となった。
それはいきなりの出来事だった。
周囲の光をいつも通りに吸収していたら、光った。
うん、光ったんだよね、全身が。
隠すとかそんなレベルじゃなくて、全身が薄らと光出した俺を見て両親はギョッとした顔をしていた。
まあ、自分の子供がある日光出しましたって聞いた事ないしね。
驚いて当然だろう。
試しに身体内部に意識を集中したら、身体中に魔力が溢れていた。
赤ん坊の身体に集め過ぎたかーと思ったが、身体は元気だしどうしたもんかと考えていると焦った両親がワタワタと騒ぎ始めた。
そして父親が家の外へ飛び出して行き、母親は泣きそうな顔をしながら俺を抱き締めていた。
数分後一人の女性を連れて父親が帰って来た。
長い耳に金髪の髪、美しい顔をした少女に見える。
エルフだ!!母親の肩越しにエルフを見て思わず興奮する。
ふんふんと鼻息荒く興奮していると、母親がエルフ少女に話しかける。
「この子は何故光っているのでしょうか?」
お?言葉が聞き取れるぞ。
母親の言葉にエルフの少女は俺に近づき頭に手を乗せる。
優しい手だ。そう思った矢先にワシっと頭を鷲掴みにされる。
む、この感覚は魔力操作?
俺の体内の魔力に干渉し魔力を循環させる。
それと共に光っていた俺の身体は光を失い落ち着いた。
「魔力の飽和現象ですね。魔力量の最大値を超えて魔力を集め循環させなかった為に漏れ出してしまったのでしょう。」
ほうほう?と話を聞く俺の目を見てエルフの少女は話をつづけた。
「確かに魔力の最大値は周囲の魔力を吸収する事で増やす事が出来ます。しかし赤ん坊である貴方の身体では増える最大値にも限界が有るのです。」
なるほど、じゃあある程度成長しなければこれ以上の増加は見込めないという事か。
残念だ。
少女はじーっと俺の目を見つめている。
「あなた理解していますね?」
ドキッとして動揺する。
目線を外しシラを切ってみる。
鷲掴みされた頭が力づくで戻される。
再び合う目線。
どうしたものかと悩んでいると、「少し奥の部屋をお借りしても?」と少女が両親に問いかけた。
両親は動揺しながらも彼女の言葉に従い俺を彼女に託す。
頭を鷲掴みのまま持って行かれる俺。
せめてちゃんと抱っこしてくれ!と思う。
部屋の扉をしめ俺をベットに置いた少女は何か呪文を唱えた後、語りかける。
「貴方は何?魔物? それとも精霊か悪魔か何か?」
これは誤魔化せそうもない。
この世界に転生して来て初のコミュニケーションにしてはレベルが高くないか?
「...ぼぅはただのにゅんげんです。」
ええい、噛みまくった!
「ただの人間の赤ん坊にしては成長が早過ぎる。知識量が多過ぎるし、それにあの大量の魔力は何?」
うわー、すっごい不味いなこれ。
一歩間違ったら魔物か悪魔認定されて焼かれかねない。(看破Lv3発動中)
正直に話すくらいしか、方法が思いつかない。
「ぼぅはいしぇかいから、てんしぇーしてきまちた。まりょぅはひかりをあちゅめてたりゃ、あーなた。」
噛まずに話せん!!
「異世界転生者?大気中の魔力を吸収してああなったと言うの?」
「うん」
短く答えた俺に彼女はため息をつく。
お嬢さんため息は一つ着く度に不幸になりますよ?
「嘘は言ってないわね。」近くにぼんやりと見える光の塊がうなづいている。
しばし考えた彼女はまた俺の頭を鷲掴みにする。
こいつ持ち方これしか知らんのか!
普通の赤ん坊だったら首いってるぞ。
だらんとしたまま両親の元に運ばれ慌てて両親が抱き抱える。
「お話があります。」少女の目に決意の灯火が見える。