詠唱と方陣
村を出て数日、これといった出来事があるで無し暇を持て余したイアンとチャックがアルトの古代魔導師としての魔法に興味を示した。
アルトは詠唱魔法をざっと説明し、詠唱理論を説明する。
この理論はスターチス達精霊使いや魔法使いであっても応用ができる。
基本は3節でアイスアローを詠唱式にすると
「纏いし氷は蒼氷、舞い散る雪は白銀の矢、撃ち抜け」となる。
1節目がその撃ち出す魔法の規模や熱量などを表し、2節目でその魔法の強度や特徴を付ける、3節目でその魔法をどう相手に伝えるかを確定する。
3節目の強度が高い程早く鋭い一撃になる。
同じ様にウインドスラッシュも作ってみると「纏いし風は翠風、鋭き刃は疾風の一閃、斬り裂け」といった感じだ。
同種の規則性を持たせれば、割と同じ様な火力を属性別に出す事が出来る。
この3節詠唱は簡易ながら威力、強度共に高く出来る技術で異世界の知識が生きやすい技術だ。
「纏いし炎は烈火、内に秘めたる力は爆裂の奔流。舞い散る火花は灼熱の花、爆ぜよ!」「フレア・ブラスト」。
上記は特殊な3節詠唱だ。
実質4節なのだが爆裂魔法等は補助呪文を使う事が多く、こういった感じで3節呪文とする。
呪文とはサポートでありブースターの様な物だ。理解力が高ければ高い程呪文は意味を成す。故に現代科学の知識が意味を成すのだ。
勿論だが核爆発の様な大爆発を作る事も可能だが制御が圧倒的に難しくなる。
ブラックホールや縮退、反物質と言った要素に手を出せばおそらく世界が滅んでしまうだろう。
適度な火力で満足しないと、将来的に魔王となりかねないのでやり過ぎには注意したい。
この3節詠唱を強化すると5節詠唱、7、11と節を増やして強化を測れる。
長文化すれは隙が大きく使いにくくなるが、後方から大火力を求められているなら、圧倒的だ。
用途に合わせて規模も効果範囲も設定できる。
その分自由度が高過ぎて知識がないとまとめる事が出来ないのも事実。
僕はこの詠唱魔法を3節、5節で基本利用し
方陣魔法を併用する事で攻守共に高いレベルで対応可能になっている。
方陣魔法で多用するのは「条件付け発動」
を組んだ方陣魔法だ。
「触れる」「入る」「通過する」「魔力を感知する」等など、条件を満たしたら発動する。
この方陣には火力が高い魔法か、拘束力が高い魔法を主に使っている。
起点にして、他の魔法を唱える時間を作り出す為だ。
他にも前衛メンバーにだけ見える様にし、トラップとして利用して貰ったり、壁替わりにしたりと汎用性が高い魔法だ。
アルトの説明が一通り終わり、イアンとチャックはその内容に圧倒されつつも、興味深そうに頷いた。特にチャックは、戦闘での応用方法に関心を示していた。
「なるほど、条件付き発動の方陣魔法は便利そうだな。敵の侵入を防いだり、仕掛けとして利用できるってわけか。でもさ、方陣を設置するには準備が必要なんだろう? 戦闘中にそんな余裕があるのか?」と、チャックが尋ねる。
アルトは軽く微笑みながら答えた。「確かに準備は必要だけど、それを補う工夫もしている。戦闘前にいくつか基本的な方陣を作っておき、決まった配置と数で魔法陣をまく。必要なときに発動させるだけで済むし、短時間で再設定することも可能ですよ。簡易的な方陣であれば即座に作れるよう訓練しています。」
「なるほど。事前準備が勝負を分けるってわけか。」チャックは感心した様子で腕を組んだ。
一方、イアンは興味深そうに目を輝かせながら質問した。「方陣魔法と詠唱魔法の併用って言ってたけど、それって具体的にはどうやってやるんだ? 例えば、敵が突然現れたときに、どんな風に対応するの?」
アルトは少し考えた後、説明を続けた。「例えば、敵が突撃してきた場合、まずは『条件付け発動』を活用して敵の進路を封じる。火力の高い方陣を発動させて足止めしたり、氷や雷の拘束魔法を使ったりして、時間を稼ぐ。その間に詠唱を開始して、大火力の魔法で反撃するんだ。具体的には、『纏いし雷は黒雷、閃光の矢は天空を貫く雷槍、轟け!』みたいな形で雷属性の強力な攻撃魔法を組み合わせることが多いね。」
「ふむ、それなら後方支援としては完璧だな。でも、もし複数の敵に囲まれたらどうする?」とチャックが重ねて質問する。
アルトは笑みを浮かべた。「囲まれた状況なら、全体攻撃に切り替えるよ。例えば、火力重視の『纏いし焔は灼熱、燃え盛る嵐は炎熱の旋律、焼き尽くせ!』みたいな広範囲の炎属性魔法を使う。あるいは、氷や風を組み合わせて敵の動きを遅らせるのも効果的だ。」
「なるほどな。だが、アルトの技術は理解できたとしても、俺たちみたいな魔法素人には真似できそうにないぜ。」チャックは少し自嘲気味に笑った。
するとアルトは首を横に振った。「そんなことはないよ。確かに僕の魔法は少し特殊かもしれないけど、基本的な詠唱理論を覚えれば誰でも応用はできる。特に、君たちみたいに身体能力が高い人が簡易詠唱を覚えれば、魔法と肉体を組み合わせた戦術も作れるはずだ。」
「簡易詠唱?」とイアンが首を傾げた。
アルトは軽く手で印を作って見せた。「例えば、詠唱を短縮し簡易方陣と合わせた呪文だよ。『纏いし氷は氷矢となれ、放て!』みたいに、1節か2節で素早く発動する。威力は下がるけど、スピード重視で戦いたい場合には有効だ。理論さえ理解出来れば、職業に関係無く使える。」
イアンとチャックは顔を見合わせると、少し興奮した表情になった。「それなら俺たちでも使えそうだな!」
こうしてアルトの詠唱理論は、イアンとチャックの興味をさらに引き出し、彼らの戦術に新たな可能性をもたらすものとなった。彼らの暇潰しはいつの間にか鍛錬になっていた。




