まずは検証
「*******」
「******、******」
むう、うるさいな。
目を覚ますとそこには知らない若い男女が俺を覗き込んで話をしていた。
あ、どうも。私のご両親ですかね?
満面の笑みで優しく触れて来る感覚は心地よい。
「*********?」
言語理解スキルが無いから何を言ってるか全く分からない。
とりあえずにっこり笑っておこう。
俺が笑うと両親と思われる2人の顔もとろける様に笑顔になった。
言語が分からないのは面倒だが、スキルポイントを使わずにスキルが得れるか検証にもなる。
ここは観察と思考でもって言語理解に努めよう。
そう言えばステータスボードって他人にも見えるんだろうか?
見えると問題だな、内容を確認されるし今この赤ん坊状態で知性がある事がこの両親にバレてしまう。
そしたら気味悪がられて森に捨てられるかもしれん。
仕方ない、日中は基本言語習得に努力しよう。
お?女性が何か持ってきたな。
「******」
何やら声をかけられ、何かドロっとしたペースト状のモノを皿に乗せてある。
あれか、離乳食ってヤツか。
となるとさっき声をかけた内容は「ご飯ですよー」とかかな?
「****」
スプーンで小さくすくったペーストを俺の口元に持ってくる。
「あーーん」と言ったのだろうと理解し口を開く。
押し込まれたペーストは芋っぽい何かだった。ほのかに甘く悪くない。
モリモリ食べていたら親父っぽい方のヤツが何やら喜びながら頭を撫でて行った。
うむ、分からん!とりあえず分からん時は満面の笑みだ。
お腹いっぱいになった俺は、またも眠気に襲われる。
ええい、赤ん坊の身体とはこうも燃費悪いのか?と思いつつ眠りにつく。
夜までにこんな事を数度行い、ようやく夜が来た。
よおし!両親は寝静まった、ここからが俺のターンである。
昔深夜に起き出してこっそりゲームをやった時の事を思い出した。
さてスキル検証だが、まずは生き残れなきゃ意味が無い。ポイントケチって死んだら目も当てられない。
今のところ身体は元気だし問題は感じていないが病気にでもなればどうなるか分からない。
耐性は上げておいた方がいいかもだ。
後は絶対に必要になる鑑定系スキルの習得だな。
特に鑑定は言語を理解する助けにもなるかもだし先に取っておいて損はないだろう。
スキルレベルの上昇方法の検証もできそうだしな。
スキルツリーから鑑定を探す。
お、あった、が前提スキルを取らないと取れないっぽい。
鑑定の文字が暗くなっている。
前提スキルは看破(0/3)か、鑑定の事を考えたら迷う必要はないな。
看破に1P振ってみる。
スキル「看破」を習得しましたとステータスボード上に小さいウインドウが出た。
まだ鑑定は暗いままだな。
看破を3にしないと鑑定は取れないのかもだ。
さてここが重要、スキルレベル0-1は1Pの消費だった。スキルレベル1-2が何ポイント必要かでスキル習得の幅がぐっと変わってくる。
と言っても取らなきゃ始まらないから、看破をLv2に上げて見る。
よし!1Pの消費で行けた!!
これは看破Lv3まで上げてしまおう。
よしよし看破Lv3ゲットで残りSP2だ。
予定通り鑑定が明るくなっている。
よーし、鑑定をゲットだーっと押してみると「スキルポイントが足りません(3P)」と表示された。
なぁにぃ、思わず全身を曲げ伸ばしして怒りを発散させる。
となるとレベル表記が無い以上LvUp以外の何らかの手段でスキルPをゲットしないと鑑定が手に入らない。
むうー、スキルポイントの取得条件が分からないとなるとここで他のスキルを取るのはもったいないか?
出来れば耐性系か身体強化系スキルを取っておきたいのだが。
何かでSPが1入れば直ぐ鑑定が取れる状態で我慢するか、他のスキルを取っておいて検証を進めるべきか。
実に悩ましい。
ここは一旦看破を検証しよう。
ページを1ページに戻してふとした事に気がついた。
存在値が上がっているのだ。
上昇幅は消費したスキルポイント分3P存在値が上がっていた。
この存在値と言うやつは、何やら重要そうだが今出来ることも特に無いので後回しだ。
さて看破に戻ろう....うん、これパッシブ系スキルだな。なんと言うか何か見たり聞いたりすると「こゆことかな?」と察しが良くなる感じだ。
悪くない!!(むふーーー!)
感覚的に何かを察する力は重要だ。
とは言えこれでは能動的にスキルを使って検証する事は出来ない。
何か赤ん坊のままでも使えて目立たない有用なアクティブスキルが必須だ。
次にスキルポイントがいつ入るか分からないからこそ、それまでの時間を無為に過ごすのは避けたい。
ここは検証用も兼ねてスキルを取っておこう。
候補は2つ、身体強化と出ました魔力操作の2つだ。
個人的には将来的に魔法は必須技能と考えているので魔力操作なんて必須に決まっている。
スキルツリーを見ても身体強化と魔力操作はその後に続くツリーの長さがとんでもない事になっている。
この家の感じからしてどこかの村で暮らす農家か狩人かと言った感じだし、動けるようになれば身体強化はあった方がいいだろう。
しかし魔力操作は早い内から慣らしていった方が才能以上に優秀になれるかもしれない。
....両方取っちゃおう。
鑑定の事を考えると愚策と思わないでも無かったが何の検証も出来ないままなのは非効率極まりない。
そんな訳で看破Lv3、身体強化(1/10)、魔力操作(1/10)となり、存在値5となった。
早速身体強化を使ってみよう。
ふんっ!と力を込めつつ身体強化を使ってみた。
....マジかこれもパッシブ系でやんの。
身体がさっきより動かせる。
むっ、ほっ、っと寝返り達成!!
これで魔力操作がアクティブじゃなかったら検証は言語習得だけになるな....
おりゃっともう一度寝返りをうって仰向けになる。
目を瞑り魔力操作に意識を持っていき体内を探る。
おお?これは発動してる感があるな。
体の中心に何か暖かいものが有り動かせる気がする。
定番で身体全体に魔力と思われるものを広げてみる。
おおお、身体が軽い!
カッと目を開くと上体をムクっと起こしてみた。
こっちの方が身体強化じゃん!となったが、まあいいだろう。
更に空中に漂うぼんやりとした光も操作できた。
なるほど、魔力とは体内と空気中双方に存在するんだな。
体内の魔力に比べて空気中の魔力は操作しづらいが動かせる事は分かった。
試しに空気中の魔力を引き寄せて触れてみると体内に入っていった。
魔力を吸収したのだろうか?
少々動かしただけで疲れてしまった。
まだ赤ん坊だし、仕方ない。
今日のところはここまでにして、と思った瞬間激しい眠気に襲われ意識を失った。