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Episode1-16
今日一番の、いやもしかしたらこれまでで一番感情のない言葉だった。
床に穴が開いたよう。とはこういう感覚を言うのかとミオはあっけに取られていた。
この国へ連れて来られてから、悲しいことや辛いことはたくさんあった。
けれども、こんなにも冷たい言葉をかけられたことはあっただろうか。
「ティリア!!」
少なくともほんの少し話しただけだが優しく穏やかな人という印象のソルファから、怒りのこもった声が飛ぶ。
けれども、そんな言葉も届かないくらい。ミオは茫然と立ちすくんでいた。
「とにかく。さっさとその女を辞めさせろ」
ただの平民ならともかく、何故異民族なんて。侍従部は何を考えているんだ。とティリアは吐き捨てた。
「ティリア、彼女は偶然この隊に配属されただけだ。それなのに──」
「その言い方はないだろうと? じゃあ、なんだ。下賤な者とでも言うか?」
「いい加減にしないか!」
嘲笑うかのような、挑発的なティリアの物言いにソルファは一歩前に踏み出た。
鬱陶しいと言いたげな目と怒りに満ちた二人の視線がぶつかる。
「そういうことだから、他所へやるよう言っておいてくれ」
一方的に会話を終わらせれば、ティリアは妙にさっぱりと片付けられていた執務机の上の書類を手に部屋を出て行った。




