第十四話 冷たい
きっと私は幼いから
ずっとずっと変わらないで
一人になりたいくせにひとりになんてなりたくなくて
思いがあるのに言えなくて
自分で自分の首を絞めていた。
心の中では息ができなくて苦しいくなって
理由もわからず涙が出そうで
自分の中だけじゃ抑えきれなくて
言いたいことがあるのに
言おうとすると何も言葉が出なくて
どうしてかわからなくて
感情が何なのかわからなくて
これが怒りなのか悲しみなのか…その前に感情なのかもわからなくて
周りの人は普通に泣いて、笑って、怒って
なのに私はそんなものが偽物に見えて
偽物じゃないのは分かっている。
でも、私がそれをわからないから作り物に見えて
こんな気持ちが言葉にできなくて
だからいつも私は作られた世界で生きている。
そんな気がしてた。
こんな事を思い出してしまうような、懐かしい夢を見ていたのだろうか。
もし、そうなら夢に出できてしまうくらい記憶に残る出来事だったのだろうか。
そして今度こそ…
5:00。
そろそろ起きようと思い、目を覆っていた腕をどかして、窓からさす月明かりを眺めながら壁に背中を預けながら考える。
今度こそ本当に作られた世界で生きている。
作られたというよりプログラムされ終えた世界というべきか。
もしかしたら、前の方が幸せだったのかもしれない。
名前が分からないだけで感情があったから。
…今、私はどんな思いで過ごしているのだろう。
何を考えて生きているのだろう。
きっと、何も考えてなんかいやしない。思いも考えも無くても生きていける。
ただ退屈なだけ。
私は幸せになりたいんじゃない。
それに幸せなんてものは振り返ったときに感じるものだ。
楽して生きたい。だらだらしたい。それだけで十分だ。
あ゙~ぼーっとして、こんなしょうもない事を考えて15分は経ってしまった。朝食まで45分。このまま過ごそうか。
でも、明るくなってしまうな。
…着替えるか。
帯を解き浴衣を脱ぐ。
タイツを履いて少しダボッとしたズボンにハイネックじゃない普通の長袖。カーディガンを着てダウンコートを羽織る。
ここでブーツ、と言いたいとこだが流石に持ってきていないため少し厚底の入った黒いスニーカー。
部屋のドアノブに手をかけて、
あ、髪…まぁいっか。
そして出掛けようとすると、
…顔も洗ってないな。歯磨きもしてない。
さすがに顔は洗おうと、諦めて部屋に逆戻り。
洗面所の水で顔を洗う。
…つめたー
乾いたふかふかのタオルで水滴を拭き取る。
アメニティのパッケージに入った櫛を取り出すのも面倒なので手櫛で適当に髪をとかす。
流石は宿のトリートメント。手櫛をする必要もなかった。
うがいだけでもしとくか。
もう一度靴を履いて、今度こそ部屋を出る。
ほぼ受験生と教師の貸し切りの上、この時間に起きている人は少ないため昇降機はすぐに来た。
宿の外は真っ暗で心地の良い静けさがある。
都市部は地元よりも比較的暖かい方なのだが夜明け前は普通に寒かったらしい。
こんなに寒かったけ。
ずっと寒さなんて感じなかった。
そうだよね…冬だもんね。
こんなに寒かったんだ。
ずっと熱かった。
その季節は始終、熱を帯びていた。
寒さと冷たさという概念が捨て去られ、存在を許されない
そんな季節。
でも、最期は少し…冷たかったかもしれない。
微かに頬を触れる冷たさが…冬の寒さを教えてくれた。
微かに頬をかすめる…彼らの体温を嘲笑うかのような熱い風を
冷たく感じさせた。




