十三話 振り払う思考
「つかれた〜」
そう言ってベットにダイブする雫月。
の後に続々とベットに倒れ込む人たち。
隣であわあわしている1名。
それを静かに見守る私。
明輝も駄目だったかー。
はぁ
心の中で一息ついて
「お風呂入る時間だから早く起きろー」
そう呼びかける。
『…』
一同沈黙。
試験の概要を聞かされた後、夕食を食べただけでこんなに疲れるのだろうか。
確かに説明は長く重要な所が多々あったから追いつくので精一杯だった。それに慣れない環境、ここまで来る道のりでの疲れ…
…私が2回目だからか…
私も慣れている環境ではないけれど、この子達より慣れているだろうし、遠征は当たり前のようにやっている。
私も疲れていただろうか。
…覚えてない。
ただ、そこに泊まったという事実しか覚えていない。
それくらいどうでもよかったのかな。
思い出らしきものが思い出せない。
全てがぼやけ、均一になっていく記憶。
昨日のことのように覚えているなんて言うけれど、それってどんな感覚かな?
鮮明に覚えてるってどんな感じかな?
感じてみたいな〜。
鮮明に覚えている記憶が何一つ無い私にもいつかわかるかな。
一生分かる気がしない。
あぁ…私はまだ期待しているんだ。
まだ人でありたいと思っている自分がいるのか。
今更なにを
「もうとっくに無いだろ」
「え、なんか言った?」
隣りに居た(普通組である)冬美に気付かれたらしい。
「いや、なにも?」
まるで何も言っていないような口ぶりをする。
とっさに嘘をついてしまうのは悪い癖だ。
自分の身を咄嗟に守ろうとして嘘を付く癖が付いてしまい、その延長線としてちょっとしたことでも口が先に動き、本当のことを隠してしまう。
言いたかったことがあったのに、口が先に否定してしまうようになったのはいつからだろうか。
こんな悩み事も少しすれば考えなくて済む。
もう少しの辛抱だ。
「それより冬美は大浴場行く?」
「いや、流石にそんな元気ない」
「…えっと、どうする?」
そう言いながら冬美はベットの方を指で指す。
「気にしなくていいよ。先にお風呂入ってきな」
「私大浴場の方行くからさ」
「いや、それは申し訳ないよ」
無駄に律儀だな
「いいって、早く寝たいし」
短縮できる事は短縮しとかないと。
「あの子達はそのまま寝かせて朝風呂でもしてもらおう。洗い終わったら先寝てていいからね。」
先に言っておかないと私は帰ってくるまで待っててそうだし。
「じゃ、行ってくるね~」
「え、あ、ちょっと」
話しながら入浴準備をしていた為直ぐに部屋を出る。
今更だけど、雪美…久しぶりに会ったな。
まぁ会っただったら明輝も雫月もそうなんだけど…なんというか…存在を感じたのが久しぶりだなと。
明輝は結構有名だった。雫月に関しては会うことはなくても任務に間接的に参加していたりするので名前は何度か名簿みたいので見ている。
もしかして…
いや、もう関係ないか。
そうやって頭から振り払う。
丁度良く大浴場に着いた私はその思考を完全に振り払っていた。
――――――――――――
明日、1グループは全員自由行動で起きる時間は決まっていなが、食べるなら朝ごはんは7時から10時まで。
班行動は強いられていない為、他クラスまたは男女での行動が可能。明日はいないだろうけど他校でも良い。自由である。
宿で食べるなら夕食は6時から9時まで。昼は各自で。
唯一の決まりとして点呼が10時にあるからそれまでに帰って来ること。
…てっとこかな?
ここで嬉しいのは班行動を強いないところだ。
一人行動が許可されているという事である。
そう、明日私は一人行動をする。
できれば夜に行動したかったけど出入り口や窓付近に不審者侵入防止として監視映写機が設置されている。その上、学生のエネルギーの乱れを監視・観測する為の感知装置も無い所は存在しないかというくらい設置されている。
室員の子たちが起きる前に出掛けよう。
疲れてみんな寝てるといいけど。
それに少しやりたい事もあるし。
そんな事を考えながらお風呂に浸かるのだった。




