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フォルトナ・ミレー

私の名前はフォルトナ・ミレーと申します。

生まれは平凡な家でした。裕福すぎず、かといって貧困ではありませんでした。

幸せな日々でした。とある事件が起きるまでは。


それは、私が五歳の頃。時刻は近所の友達と遊んで帰る五時程。

いつもと変わらない帰り道、ふと騒々しさを感じた事を覚えています。

何か胸騒ぎがして、急ごうとします。そこに、近所で仲の良かったおばさんが近寄ってきます。


「ミレーちゃん!無事で……無事で良かった……」


突然抱きつかれて、涙を流されました。何が何だか、分かりませんでした。

けれど、すぐに知ることになりました。


私は、おばさんから話を聞こうとしましたがおばさんはグッと堪えて口を開こうとしません。

だから、私はおばさんの手をすり抜けて、自分の家へと向かったのです。


そこで見たのは、あまりに無惨なものでした。

あったのは、かつて暮らしていた家だったものと、体温を失って地面で治療されている両親。


「……パ、パ?ママ……?」


ふらふら、と無意識に近づいていきます。そんなわけが無い。夢だ、嘘だ。


でも、現実は残酷でした。

治療をしていたのは、偶然通ったというエドモンズ家という名家の人でした。


後から聞いた話によると、エドモンズ夫妻は何かの悲鳴を聞いた後、すぐに従者と共にその場へ駆けつけました。そして、私の両親と周辺の人々を傷つけた人を即座に拘束。そのまま牢屋へと運んだようです。

その後、従者の皆さんが治療。しかし、一番最初に襲われた上に、近所の人を逃がしていた両親は傷が深すぎた。


そう、両親は息絶えたのです。


他の人は命からがら生き延びたようです。その皆が私に感謝し、謝って来ました。


「君の両親が守ってくれたから生きている」「しかし、そのせいで君を孤独にしてしまった」

「ありがとう」「ごめんなさい」


たった数時間前はあった、家族を私は失いました。

その後、エドモンズ家の当主であるリック様が身元引受け人になると宣言し、私はメイドとして雇われることになりました。

メイド、と言っても当時は仕える事を強要されませんでした。立場上、養子として引き受ける訳には行かなかったのでしょう。


転機が訪れたのは、私が六歳になる頃。私を救ってくれた、エドモンズ夫妻が妊娠したというのです。

私は嬉しかった。けれどそれ以上に、その子に対して愛情を注いであげたかった。

だから私は、メイドの作法を教わりました。礼から物の運び方、歩き方、掃除方法まで。拙いながらも、努力しました。

その甲斐あってか、執事長やメイド長、他の人からも『立派で凄いね』と言われました。


妊娠してから、生まれる数ヶ月前。私は親代わりである二人の元で三人、食事を取っていました。それは、子供が産まれれば三人で食事することは無くなるから、というお母さん代わりのスーリャ様が仰った事でした。

その場で、スーリャ様は不思議な事を口に出しました。


「私が痛い時、お腹の中から癒してくれるような、そんな魔力を感じるの。……もしかしたら、生まれてくるのは聖女、真人かもしれないわ」


聖女、真人。この世界で、努力では追いつけない治癒魔法に特化した存在。

もしかしたら、父親代わりのリックさんも同じことを考えたのかもしれません。


「もう、失わせない。少なくとも、目の前で救える命は」


そう言って、私は数ヶ月後に産まれた子供……リーシュ様の専属メイドになりました。


リーシュ様は自由奔放な方でした。とても、良い意味ではありません。

スーリャ様が言った通り、彼女は聖女でした。しかし、名門の令嬢と聖女という称号が彼女を天狗の鼻にさせ、やりたい放題でした。

それでも私は付き合いました。何をされても、何をしようとも、人を、死の淵から救える聖女を失いたく無かったのです。


それがふと、転機になったのは私が十八歳の時。リーシュ様が十二歳であり、もう少しで学校に入られるという時でした。

私は断ることが出来ず、彼女の提案した水遊びに付き合ってしまいました。その果てに、彼女は三日間寝込むことになりました。

これには私だけでなく、エドモンズ家の皆が大慌てしていました。私は、必死にリーシュ様が目覚めることを神に祈っていました。


三日間眠り姫となった後、目覚めたリーシュ様。……その態度は、別人としか言いようがありませんでした。


私もメイドにも謝ることの無かった彼女が謝り。

どこか、常識を備えた……そう、普通の教育を受けたお嬢様のようになり。

そして、私に無茶を言うのではなく、甘えてくるようになりました。


私は、それまでリーシュ様を『聖女』としか見ていませんでした。

けれど、今は違います。リーシュ様は私に隠れながらも無茶を言わなくなり、只管に勉学に励んでいます。何かを、知ろうとしています。

だから私は、『リーシュ様』のメイドとして、この先も仕えて行きたいと思ったのです。

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