聖女と魔力
俺はミレーちゃんを初めとしたメイド、執事たちに甲斐甲斐しく介護されながら、復活した。
具体的に言うと朝昼晩きっちり三食食べて、後はベッドで寝てとにかく体調管理に努めた。
そうして自由に行動する権利を得た俺がまずやった事が、執事とメイドさんへの謝罪であった。
恨みを買いすぎては行けない。聖女と呼ばれる立場は偉い。だからこそ、将来の敵を今から減らす。
という建前だが、実際ペコペコ謝るタイプの人間であった俺はリーシュの記憶を貰って、仕えてくれる人達にかなり罪悪感を感じていた。それの解消でもあった。
実際に一人一人謝罪をして回った時は誰もが驚いたが、優しく応対してくれた。好感触ではなかろうか。
その次に。十二歳になって、数ヶ月後……俺のいた日本で言う、四月。こちらでも変わらず四月、にやってくる入学に向けて、本を読むことにした。
特に重点的に読んだのは、聖女と呼ばれている原因……魔法に関する本であった。
ここで分かったことは三つ。
魔法とは自身の中にある魔力を使って使うことが出来る。
聖女とは、先天的に治癒魔法を得意とする人達の総称であり、聖女とは反対の男子でこれを発揮した場合には『真人』と呼ばれる。魔力は総じて高い傾向にある。
魔力は少なくても、後天的に鍛えられるとされている。ただし、その方法を確立した人はいない。
これだけの情報を得て、疑問を抱いた。
何故、聖女と真人はほぼ必ず魔力が高くなるのか。
これが神様の天啓とかそう言った類であるのならばそれは頷くしかないのだが、そうなると後天的に魔力を増やせる事に首が傾く。
もしも最初からゲームで神様が魔力を振り分けて、その中から聖女や真人を選んでいるのだとして。俺がゲームの神様なら魔力は増やせないようにするだろう。そうしないと、凄い調整をかけない限りゲーム……世界として成り立たないからだ。
それに、後天的な例として昔は魔力の少ない人が魔力をどうやってか増やし、暴れるドラゴンを武器と魔法で討伐したらしい。これは歴史書に載っていた。
俺の知っているドラゴンであれば、余程の力量差が無い限り武器だけでは戦いきれない。暴れていれば尚更だ。
となれば、この歴史書が嘘をついているのではなく討伐した本人すら分からない魔力の鍛え方で魔力を増やして戦ったという考え方をするべきだろう。
「魔力、魔法……」
俺の口から飛び出る可愛らしい声の独り言。未だに慣れない。
魔力が増えるとしたら、どんな条件だろうか。
ゲームであれば神託か、レベルアップか。
しかしこの世界にはキャラクターレベルは存在しない。あるのは、まぁ序列としてレベルをつける、といった前の現実世界のような可視化出来ないものの順位付けだ。
となれば、魔力を増やす仕組みは恐らく。
「……筋トレと同じかなあ」
筋トレ、筋肉トレーニング。身体を鍛えるのと同様で、魔力を使い続けてはギリギリで止めてまた使う。というのを繰り返すのが妥当だろう。
ただこれは簡単に思いつく方法だ。誰かが実践しているはず。なのに結果が出ないということは、方法が間違っているか、別の要因があるのか。
どん詰まりだが、幸い俺は魔力が沢山ある。この問題は暇な時に考えればいいだろう。
そう思っていると、コンコンと控えめなノックがされる。
「失礼致します。お昼の時間でございますよ、リーシュ様」
「!ミレーさ……ミレー、そんな時間ですか?」
慌ててさん付けを直して扉の向こうに返事をすると、はい。と彼女らしい可愛らしくも落ち着いた声が入ってくる。
「……」
最近お父さんもお母さんも忙しい。だから一人でご飯を食べる事が多いと言っていた。
「ミ、ミレー。この部屋に食事を運んでもらうことは?」
「可能ですよ」
「……ミレー、食べている間、一緒にいてはくれませんか?」
ドキドキしながらもその言葉を発すると、ミレーから即座に言葉がやってきた。
「はい。分かりました。では、お食事をお運びするので少々お待ちくださいね」
「ありがとう!」
そう言うと、静かにミレーが離れていく足音が聞こえた。
即座に片付けを始める。魔法書だけでなく歴史書、文学本、果てには振る舞いの本。様々な本が大きな部屋の中に散らばっていた。
惚れた女性に、例え主人だろうが……いや、主人だからこそ、汚い部屋を見せたくない。新生リーシュこと俺は、ミレーちゃんに変なところを見せないように頑張るのだ。
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