両親、襲来。
ミレーに頭を撫でてもらったのも数分の事。目覚めたのにお父様とお母様に知らせないのはメイドとしてダメと言われて離れていってしまった。
確かに、目覚めた事を長いこと黙っていたら首が飛んでしまう。それは仕方がない。
そう思った直後だった。バタン!と扉が開く。
「リーシュ!大丈夫か!?リーシュ!」
「は、はい。お父様」
そう言って抱きついてきたのはガタイの良い男の人……リーシュの記憶にある、エドモンズ・リックであった。
「こらアナタ。リーシュは三日も寝込んでいたのよ?突然抱きついたらまた寝込ませちゃうじゃない」
そう言って引き剥がしたのはリックの妻であり、リーシュの母親。エドモンズ・スーリャである。
「お母様……」
「どうしたの?リーシュ……」
お母様、と呼んだは良いものの何を話すのか。
とりあえず、身体を乗っ取ってしまったのは仕方がないとして、リーシュの分の謝罪はしておくべきだろう。
「すみません。エドモンズ家の聖女でありながら、まさか高熱を出して寝込むなど……」
ぺこり、とふかふか過ぎるベッドの上から謝罪すると二人は驚いた顔をした。
その後、父親であるリックの方が先に口を開いた。
「何を言っているリーシュ!お前に非は……」
「アナタ」
熱くなる父親。それを冷静に収めるのは、母親だった。
「確かに、熱で倒れた事は事実よ。私達は、お付の人も含めて数日間貴女が二度と起きないのでは無いかと心配していたわ」
「……はい」
この口調からするに、母親は厳しい人なのだろうか。
ギャルゲーや乙女ゲーで言えば、父親が甘やかしすぎ、母親はキツすぎるで性格がネジ曲がるタイプの子だったのかもしれない。
「……けれど、目覚めてくれて良かった。本当に。それに、熱を出したことを『初めて』メイドの人のせいにしなかったわね。きちんと謝れたわね」
「……?当然、では……」
ないのか、と言いかけて脳内に某弁護士の待った!が響く。
母親の口から初めてメイドのせいにしなかった、謝ったという言葉が聞こえた。
つまりこのリーシュという少女はかなりド派手にやっていたことをメイドに押し付けていた可能性が高い。
そんな子が謝るだろうか?否。謝るわけが無い。
従って、俺ではなく『リーシュ』が謝るのは当然ではない。
けれどこの先生き残るには、リーシュという存在そのものを正していく必要がある気がする。謝れない、責任を人に押し付ける存在はゲームでも世界でも大抵ろくな事にならないものだ。
「……いえ、当然ではありませんね。私は、変な意地で謝らなくて……。これからは、自分の非は自分で認めていきたいと思います」
「リーシュ……」
リックが感慨深そうに呟く。咄嗟に出た言葉だが、とりあえず一人称が俺、にならなくて安心した。
両親が来たのだから、現状の把握がしたい。問いかけをするとしよう。
「忙しい所すみませんお父様、お母様。実はここ数日の記憶がなくて……。どのような事があったか、そして私がすべき事は何なのかの指標を教えて頂きたいのです」
そう言うと、リックが大声で叫ぶ。
「そんな!お前に指標があるとしたら、幸せになる事だけ……」
「アナタ?」
やはり抑えられる父親。代わりに母親であるスーリャが言った。
「そうね、指標は難しいけれど……この数日間にあった事なら答えられるわ」
曰く、リーシュは三日前に突然水遊びがしたいと言ったらしい。
学業が始まる数ヶ月前に何をしているんだこのバカ、という言葉は抑えつつ聞く。
許可を得られなかったリーシュは、傍付きメイドのミレーを強制連行。そのまま庭の綺麗な噴水で水遊びに付き合わせたと言う。
その結果、熱を出して寝込んだという訳だ。
(余りに……あまりにミレーちゃんが不幸すぎる……)
半ば脅した感じだったのだろう。ミレーは首が飛んでもおかしくなかったはずだ。
それが飛ばなかったのは俺が憑依して目覚めたことと、ミレーに責任を押し付けなかった事。それに加えてきちんと謝ったからなのだろう。
「そんな事が……。ミレーち……ミレーには、後で私から個人で謝罪をしておきます」
そう言うと、クラりと眠気が襲ってきた。
それを察知したのは、ミレーちゃんであった。
「リック様、スーリャ様。どうやらリーシュ様はまだ目が覚めたばかりで体力が戻っていないと思われます。また後で起床されたら知らせますので……」
ミレーちゃん、すごく良い子。このメイドさんだからギリギリの所で俺は生き残れたのか。
「あり、がとう……ミ、レー……」
そう言って俺はふかふかベッドにばたりと倒れた。
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