表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

ペテリウス辺境伯領へ

以前投稿した短編【後日談プリシアのその後追加】全て今更ですわをベースにした作品となっておりますが別のお話として読んでいただければと思います。


短編ではR15設定しておりませんでしたのでご注意ください。こちらはR15です。




設定などふんわり、ちゃっかりしてます。ご都合主義です。ご容赦を。


優しい目で見ていただけると嬉しいです。

「アードルフ!? 一体アメリアに何が有ったと言うの?」


 娘を抱きかかえて帰ってきた夫を見てクリスティーナは驚き声を上げていた。


「すまない。今は大丈夫、眠ってるだけだ」


「今は!?」


「クリスティーナ、アメリアを連れて急ぎペテリウス辺境伯の所へ向かうから支度をしてくれ」


「聞きたい事は沢山有りますけれど、着いたらきちんと説明してくださいませ!」


 父上の所にアメリアを連れていくと言う事は王太子妃教育で何かがあったに違いないわ。そうなると2~3日と言う訳では無さそうね。


 執事のルートヴィックと侍女のシーラを呼び家族で実家に3ヵ月間程滞在する準備をするよう命じだ。


「ルードヴィック、突然で申し訳ないけれど、いない間の事をよろしくお願いするわ。明日には出発するでしょうから」


「奥様、ご安心くださいませ」


「ありがとう。シーラとドリスを連れていくわ」


「かしこまりました」



 ◇



 アードルフはペテリウス辺境伯へ連絡を入れ、明日訪問する旨を伝えた。


「何の問題も無いし、何も遠慮する事は無い」と簡単だが温かい返事があった。



 アードルフはルードヴィックの元へ行くと、明日は馬車を3台ペテリウス辺境伯の所へ向かわせる事、自分達は転移魔法で行く事を伝えた。


「私は半日程で戻ってくる。何か不測の事態が有れば直ぐに連絡をくれ。この邸を訪問した者は全て控えておいておくように」


「仰せのままに」



 ◇



「お父様、お母様、何処に行くのですか? 私は王太子妃教育の為に王宮へ参内しなくてはならないのではないのですか?」


「アメリア、暫くの間は王太子妃教育はお休みになったのだよ。これからヴィクトル御祖父様とロヴィーナ御祖母様の所に行こう」


 アメリアの表情は特に変わらなかった。表情豊かな子であったのに。たった1週間でここまでになってしまうとは。


 それを見たクリスティーナも驚いたが、すぐに表情を隠した。


「アメリアは私が抱っこしてあげよう。クリスティーナ、私の手をしっかり掴んで」


 そう言ったのに、クリスティーナは私の首に手を回してきた。


「お、おい」


「いいではありませんか」


 左手にアメリアを抱え、右手は抱き着いてきたクリスティーナの腰に回した。


「これはこれは、仲がよろしいくて何よりでございます。行ってらっしゃいませ」


 ルードヴィックに見送られ、私は転移魔法を使った。



 ◇



「フッフッフ随分派手な訪問の仕方だな、アードルフよ」


「お久しぶりにございます。義父上様。義母上様。これは転移魔法の関係上、安全を考慮いたしました」


「全く、相変わらず真面目なやつだのう」


「お父様、お母様、ただいま戻りました。アメリア、ご挨拶は?」


「ヴィクトル御祖父様とロヴィーナ御祖母様にご挨拶申し上げます」


「あらあら、アメリア。リサと一緒に庭園を散歩してきてはどうかしら? 今は色々なお花が咲いているのよ。リサ、お願いね」


「奥様、かしこまりました。 アメリアお嬢様、リサにございます。さあ行きましょう」


 リサがアメリアの手を引いて出ていくのを確認したヴィクトルは全員を座らせ、アードルフからの説明を待った。


 アードルフは王太子妃教育が始まってからの1週間、1日数時間にも及ぶ全ての授業においてアメリアは虐待され、暴力をうけ、罵倒され続けていた事を話した。


 どうやら、能力を国の為に使わせる為の洗脳を受けていたらしく、首謀者はやんごとなき人であるだろう事。


 気付いたのはライネン宰相で、対応に当たったのは、ライネン宰相の令息のルーカス公子とラインハルト王太子殿下である。ライネン宰相が講師の入替えに気付き、ルーカス公子が現場を確認しラインハルト王太子殿下を直接お連れしアメリアを助けた事。


 そして、どうしても証拠を掴んで手出し出来ないようにする為に、ルーカス公子と殿下は自分達では力が足りないと認識し、ライネン宰相と自分を頼ってくれたことを話した。


 アメリアをこのペテリウス辺境伯の所へ身を寄せる事を提言したのは、ラインハルト王太子殿下であり、数か月或いは数年単位で考えて下さったが、ルーカス公子が苦渋の決断で数か月にした事。


 若い2人がアメリアの為を思ってこれ程迄に考えていてくれた事に正直驚き、それと同時にとても嬉しかったことを淡々を説明した。


「数か月でアメリアの心の傷が癒えるとは思ってはいませんが、王都を離れたここで健やかに自由に過ごさせてあげたいのです」


「そう言う事ならば、全力で協力しようではないか。ライネン宰相には娘のみならず孫迄助けていただくとは頭が上がらんな。クリスティーナもアメリアのところに行っておいで。私達も後で行こう」


「ええ、分かったわ。お父様」


 クリスティーナは話を聞いて明らかに動揺していたが、アメリアに直ぐに会いに行きたかったのだろう。飛び出すように部屋を出て行った。それを見たロヴィーナがゆっくりとお茶を淹れ直した。


 ハーブティーの柔らかい香りが漂ってきた。


「アードルフ、ロヴィーナの薬は毎日飲んでいるのかな?」


「もちろんです。アメリアの後に子供を授かれないと気にしているクリスティーナには、可哀そうな事をしております。また義父上、義母上にも、これ以上の孫を望めなく申し訳ありません」


「仕方のない事だ。何も手掛かりを掴めていないのだろう? アードルフもエリアスも」


「はい…」


「私の方でも調べている。全く何も掴めていないが。クリスティーナには言ってやるなよ」


「承知しております」


 魔法の痕跡を残したくない場合、薬は何かと役に立つ。


 義母上は魔法の発達した国では珍しい薬師でもある。何故か聞いたところ、「辺境を守るヴィクトル様が戦いで魔力枯渇状態になった時に備えてよ」と教えてくれた。


 一度も枯渇状態に陥ったことは無いらしいが。



 ◇



 昼食の間も、その後の薬草園の散策や、お茶の時のお菓子を見ても表情をほとんど変えないアメリアに全員が驚き、悲しみと怒りを感じた。


 数ヶ月後には、また王都へ戻らなければならない事を誰もが憂いた。


 私は義父母とクリスティーナにアメリアを託して王都へ戻る準備をした。


「私は、一度王都に戻ります。時々様子を見に来ます。どうかアメリアをよろしくお願いします」


 クリスティーナもさぞ不安な事だろう。気持ちを聞いて落ち着かせ、アメリアと一緒に穏やかな時間を過ごすべきなのだが。




 ◇◇◇




「マルヴァレフト侯爵、たった1週間程の王太子妃教育でアメリア嬢が倒れたとか。随分と辛抱の足りないこと」


「我が娘は、まだ幼いと申し上げたはずです」


「ライハルトは厳しい王太子教育を軽くこなしているというのに。なんと情けない」


「ええ、仰る通りにございます。ライハルト王太子殿下をお支えするには情けなく不釣り合いにございます。ラインハルト王太子殿下には逞しく頑丈なご令嬢がよろしいでしょう。我が娘に未来の王太子妃など恐れ多い事でございます。ここは婚約解消が妥当でしょう」


「婚約解消などと、そんな大袈裟な事を」


「辛抱が足りなく情けない娘では王妃殿下も不安でございましょう。しかし、私は娘を溺愛してますゆえ甘やかすことしか出来ないのです」


「そんなものは、これからの王太子妃教育で何とでもなる事です」


「婚約解消されないと言うのであれば、アメリアが倒れてご迷惑をおかけする事が無い様、付き添いとして侍女と護衛をかならず付けましょう」


「その様な必要には及びません」


「こちらとしましては、王妃殿下のお心を煩わせるのも、王太子妃教育が進まないのも、心苦しい事にございます。不安は取り除くべきでしょう」



 ノックの音が聞こえ、ライハルト王太子殿下の到着を告げた。



「王妃殿下にご挨拶申し上げます。マルヴァレフト侯爵が来ると聞いて会いに来た。アメリアの具合はどうだろうか」


「ラインハルト王太子殿下にご挨拶申し上げます。アメリアは、あまり芳しくないのです。その為、本日は王妃殿下に婚約解消を願い出ておりました」


「こ、婚約解消だって!? 王妃殿下、一体どういう事ですか?」


「私は、何も言っておりません。マルヴァレフト侯爵が願い出たことです」


「承諾するおつもりですか?」


「そのようなつもりはありません。マルヴァレフト侯爵も大袈裟に考えないでいただきたいですわ」


「王太子殿下、1週間の王太子妃教育で倒れる辛抱が足りなく情けない娘は、殿下をお支えする事は出来かねるでしょう」


「マルヴァレフト侯爵、婚約解消などするつもりは無い! 私はアメリアを守り味方でいると誓った。嘘偽りは無い」


「では、ラインハルト王太子殿下、今後の王太子妃教育で娘が倒れてご迷惑を掛けない為にも、我が家門の侍女と護衛を、必ず付き添いとして置いていただきたいのです」


「もちろんだ。それに今後の教育はライネン宰相と見直しをして、全て私と一緒に受ける事にした」


「ライハルト! 何を勝手に!」


「王妃殿下、何の問題が有るというのですか? マルヴァレフト侯爵、アメリアの体調や精神状態には十分配慮をする。婚約解消は考え直していただきたい」 


「ラインハルト王太子殿下、承知いたしました」


「マルヴァレフト侯爵、ペテリウス辺境伯領へは視察も兼ねてマーカス公子と共に行こうと考えている」


「それは良いご経験になる事でしょう」


「王妃殿下、王太子殿下。私はこれで失礼いたします」


「王妃殿下、私も失礼します」



 ◇



 自分の執務室に戻ると、エリアスが我が物顔で座っていた。


「やあ。その顔を見ると上手く行ったようだね」


「ライハルト王太子殿下の名演技のおかげで滞りなくな。急な王妃殿下からの呼び出しに良く対応してくれたものだ」


「ラインハルト王太子殿下はアメリアの事を随分大事にお考えになられていて、好感が持てるじゃないか」


「有難いことだよ」


最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)


是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。


よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ