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『能力者(神の手)を守りし者達』と『能力者を手に入れたい者達』

設定などふんわり、ちゃっかりしてます。優しい気持ちで読んでいただければうれしいです。

『リンデル国に守り手が現れたのですね』スペンサーは執務の手を止めた。


 最近、守り手の間で、リンデル国の評判は良くない。


 守り手が現れたとなれば、「そろそろですかね」スペンサーはそう呟き、きっと現れるであろう友人の為に、お茶とお菓子の準備をさせた。


 程なくして、執務室にシルバーの髪にアイスブルーの瞳の美しい顔の神官がふんわりと現れた。


「こんにちは、クリストファー。いとも簡単に結界を抜けて入ってくるなんて、ショックですよ。久しぶりだと言うのに」


「こんにちは、スペンサー。結構てこずりましたよ。やはり私と同じくらいの魔力の持ち主は違いますね。お茶とお菓子の準備もしてくれてるなんて、歓迎してくれてありがとう」


「あなたの事ですから、新しい守り手が現れたので来ると思いましたよ。あなたは守り手がどういう条件で選ばれるのかを研究していますからね」


「今回はリンデル国の公爵家令息で13歳。親子で守り手と言うのは初めての事だね。能力者は王太子殿下の婚約者なのに、王太子殿下が守り手には選ばれないなんて、すこし不思議じゃない?」


「そうですね、守り手は王族の割合が若干ではありますが高いですからね。ですが、まだまだ、守り手にに関しては謎が多いです。それは神の手に関してもですが」


「各地の守り手も神託を聞いたから、新たな守り手と能力者の出現を認識したよね。この国では神の手と呼ぶのだったか。今回もリンデルだから、みんないつも以上に敏感かもね」


「そうですね。リンデルの両陛下は神の手を捕まえようと、必死になっていると聞きますからね。よく今まで守り手がきちんと守り通して、逃がしてきたと思いますよ」


「既に王太子殿下と婚約してるから、何か動き出してるかもね。それにしてもリンデルって能力者が出る確率が高いね」


「そうですね。私達は保護を求められれば協力しますし、全ては神の手のお望みのままにですよ」


「そうだね。じゃあそろそろ行くね、ごちそうさま」


 クリストファーは来た時と同様に、ふんわりと消えていった。


 実際、守り手の事はよく分かっていない。ある日、神託を受け自分が守り手であると同時に、自分が守るべき神の手が何処にいるかを唐突に理解する。そして、同じ守り手の存在も把握する。


 自国で危ない場合には、他国にいる守り手と連絡を取り合う。そして神の手の思いを聞き、神の手の望む地へ導く。平穏無事に暮らす能力者も多い。


 各国で呼び方は違っており、守り手、守護する者、守護者などと呼ばれている。神の手は能力者と呼ばれる事が多い。


 守り手は、自身が守り手だと、公にはしていないので、その存在を知る者は守り手と、守り手が選んだ守り手を補佐する者達だけである。


 能力者に至っては、守り手は助けてくれる親切な人と言う認識かもしれない。


 クリストファーも守り手であり、この守り手の謎について調べているが、手掛かりが何もないと嘆いている。彼にしてはとても珍しい事である。





 ◇◇◇





「全く侯爵家の分際で、身の程を弁えず、国と国民を守り豊かにするとお約束してくださいとは何事か! 忌々しい。能力を王家に有難く差し出し馬車馬の如く働けと言うのに!」


「セシリア、そう荒れるでない。ラインハルトとの婚約は決まったのだ。豊穣により農作物の被害は無くなる。それに結界の強化、治療をアメリアにやらせれば、我が国は相当潤うはずだ」


「そうね。……教師達を洗脳できる者達で揃えましょう。体罰と罵声を浴び続けていれば、心の拠り所はラインハルトしかいなくなるわ。必ずラインハルトの為に能力を使う事でしょう。幼い子は簡単でいいわ! 早速手配しましょう」



 王妃殿下は王家の影を使い、性格・素行に難有りとされた講師達を詳しく調べさせた。その調査内容から特に酷い嗜虐性の有る者達を選び、再審査の為に至急招集するよう宰相へは通さずに秘書官から人事官へ指示を出した。



「王太子妃教育の為に、各分野の講師を探している事は皆さんもご存知の事でしょう。一般的なご令嬢であれば、慈愛の心を持って、優雅に上品に王太子妃教育を行うのです。この度、王太子の婚約者と決まったご令嬢は、随分と自由に育ったのか、尊大な態度と王族にそぐわない考えをお持ちなのです。私としては自由にさせてあげたいのですが、将来の事を考えますと、お分かりになりますでしょう」


 王太子妃教育の講師陣の入替えは即時人事官へ伝えられ日程の調整が行われた。


 能力者と結婚したいばかりに婚約期間を引き延ばされ、社交界で笑い者となっていた時期がある王妃殿下の能力者に対するぞっとするような悪意に気付く者はいなかった。





 ◇◇◇





 それは、突然だった。宰相である父の補佐として出仕するようになって、宰相の執務室にいた時、頭の中に響いてきたのだ。


『ルーカス・ライネン。新たな守り手に幸多からん事を』


 そして自分が守らなければならない人、他の守り手の人達の情報が一気に頭の中に流れ込んできた。


「おや、私の息子が新たな守り手となったか。そうかそうか。今回は同時では無いのだな。他の守り手に神託が下りた訳でも無かったのか」


「父上…。父上も守り手なのですね。同時では無いという事は通常は同時という事なのでしょうか」


「そういう事が多いというだけだ。さて、既に事は動いている。王太子妃教育の講師の選考結果は入れ替えられていた。能力者の事は新たな守り手に任せるとしよう」


 ◇


 息子が守り手となったのには驚いたが、アードルフの娘を両陛下から保護するべく動いていたので、それは僥倖であった。


 アードルフの執務室へ行くと、彼はお茶を用意させた後に当たり前のように人払いをした。


「やあ、エリアス。君が来るって事は良くない話なんだろう?」


「いい話を持ってきたいのだけどね。単刀直入に言うとアメリアは王太子妃教育と言う名の洗脳教育を施されている」


「なんだって!? 陛下は約束を反故になさるおつもりなのか!」


「落ち着けアードルフ。言葉に気を付けろ。証拠と言えるような物は今は無い。王妃殿下が既に決定していた講師陣を、講師として不適格な者達に変更していた。分かっている事はこれだけだ」


「不適格な者達? エリアス、はっきりと言ってくれ」


「特に嗜虐性の高い者達だ。おい! 落ち着いてくれ! 頼む!」


飛び出そうとするアードルフを慌ててエリアスが止める。衝撃で床に書類が散乱した。


「エリアス! これが落ち着ていられると思うのか! もう1週間もアメリアは酷い目に遭い続けているのだろう? 娘を守らなければ、どけ!」


「助けるにしても証拠を掴んで、手出しできないようにしたい。気持ちは分かる。しかし抑えてくれ。頼む! アードルフ!」


 アードルフは長い長い嘆息を漏らした。


「……分かった。すまない、取り乱した。アメリアの事をありがとう。家族の事となると私は感情的になりすぎるからエリアスに任せるよ。既に動いてくれているのだろう?」


「ああ、任せてくれて構わない」


 椅子に座り直した2人は、自分達を落ち着かせるように冷めた紅茶を口にした。


「アードルフ、毎回同じ事を聞くが、何か変わった事や気付いた事は無いのかい?」


「これと言って無いんだ。2~3ヵ月に1度使途不明金が出てくる。いくら調べても毎回の如く分からない。さほど大きくは無い金額だが」


「君ほどの魔術師でも分からないんだなんてな。あれからもう6年か」


「6年前の事も朧気にしか思い出せない。いっそ夢であってほしいよ。エリアス、万が一、僕に何かあったらクリスティーナとアメリアを頼む」


「親友の君に万が一なんて起こらないようにしてみせるよ」



 アメリアを手に入れられなければ、もう一人の能力者、アードルフの妻のクリスティーナに手を出すかもしれない。


 クリスティーナの守り手は自分である。クリスティーナは能力の開花が遅かった訳では無い。


 陛下が結婚されるまでそう見せかけていたのだ。ペテリウス辺境伯には随分と協力してもらった。今回もペテリウス辺境伯には苦労を掛ける事になるだろう。


『陛下と王妃殿下には困ったものだな』そう思うとエリアスもアードルフのような嘆息をしていた。

最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)


是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。


よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

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