手厚い お も て な し
私事ですが、My birthdayです!
白い砂浜。青い海。青い空。雲一つない晴天。そんな海の真ん中に大きな波を立てて大きな白い城が浮上した。海水を滝の様に落とし浮上してくる城壁や城には色とりどりの貝などがくっついている。
「うわぁ……」
「すっげぇ……」
「美しいですわね……」
白の建物は王国でも珍しい。一体何を使っているのだろうか……
「船がお迎えに来たわね」
「この距離を、この巨大船でですか……」
「あはは……」
豪華客船もかくやという大きさの船が港に停泊している。距離としては城を簡単に目視できる程度なので、ここまでの大きさはいらなかったと思うのだが。
「強さを強調したかったのかしらね」
「ああ、なるほど」
確かに領民達は立派な船に恐れを感じている様だ。この船が攻撃してきたら……と考えている様だが、この船は軍艦じゃない。まあ、防御程度のものは積んでいるかもしれないが、積極的に攻撃するための武器は積んでいないだろう。
「お待たせ致しました。ご乗船ください」
騎士の1人が母様を見て、少しガッカリした顔をして頭を下げる。何なのだろう。母様は贔屓目を抜きにしても美人だと思うのだが。
《あまり強そうに見えないからかしらね。王国最強の『影の支配者』とは思えないのでしょう》
母様は闇魔法で俺にだけ伝えてくれた。確かに、母様は天使みたいな容姿をしているからな。見た目だけは。中身は色々とアレだけど。
船の中は豪華客船だ。正直、ここまで豪華な船でなくてもよかったのではないだろうか。確かに技術などを見せ付ける意味はあったのだろうが……
「……予算の無駄使いじゃないかなぁ」
「まあ、うちの国ならそういう意見が出るよな」
「大臣達が総出で反対しますわ。見栄えも必要とはいえ、無駄にして良い予算なんてありませんもの」
ハリーとヴァイオレットは静かに言う。どちらかと言うと見栄を張っている様に感じるのだ。見た目は大事だが、これではみっともない。
「トゥールーズ合衆国までは約30分の旅となっております。どうぞ、お寛ぎください」
騎士はそう言って案内された部屋から出て行った。俺はすかさず闇魔法で出て行った騎士の影にシャドーゴーレムを派遣した。もう一つ気配がするのは母様のゴーレムだろう。
〔……首尾はどうだ?〕
〔ああ、順調だ〕
〔そうか。……どう思う?あの公爵とやらは〕
〔ふん。確かに見た目はまあまあだ。しかしアレがオンディーナ王国最強の『影の支配者』とはな〕
〔やはり我らの敵ではないか〕
〔地上の猿に遅れを取るわけがないだろう?〕
〔そうだな。例の準備は?〕
〔問題ない。抜かりなく準備している〕
〔では……〕
《物騒ね》
《でも、こうやってシャドーゴーレムを派遣できるって事は……》
《ええ。少なくともトゥールーズ自体が邪神の影響を受けているわけではないって事かしらね》
とりあえず、最悪の事態は回避しているという事か。あとは国家元首が影響を受けていないと良いけどね。
「……フゥン?やってくれるじゃない」
母様はニコッと笑って言う。丁度、船が港を出て合衆国との中間地点に差し掛かった頃だ。ハリーとヴァイオレットは分からない様だが、俺は気がついた。この船、俺達以外がいなくなっている。そして船が沈みかかっている。
「船ごと沈めて殺そうって魂胆かしら?」
「いつぞやの仕返し、といった所でしょうか?」
「し、沈んでるんですの!?」
ヴァイオレットは慌てている。いやまあ、普通はこんな反応になるよね。分かる。
「どうします?母様。ゴーレムで行きますか?それとも水魔法で?」
「そうねー。ゴーレムで行きましょうか。私といえば、みたいな所もあるし」
「そうですね」
俺達は甲板に出た。本当に一人もいなかった。甲板からは合衆国の城が大きく見える。
「こんな時のために用意しておいて良かったー!」
そう言って出したのは黄金の船だった。今乗っている船程ではないが、丁度良い大きさだ。それは良いのだが……
「母様、これってゴーレムですか?」
「一応ね。自力で動くし、スキルつけたし」
「ちなみに何を?」
「【結界】と【一斉射】。あと【索敵】と【急所必中】かな?」
それ、軍の船でも良いんじゃないか?だって、人間が乗ってなくても自衛して攻撃してくれるんだろ?陛下に報告はしているのだろうか?……してないだろうな。
「ほら、乗るよー」
「はい。……殿下」
「は、はい、ですわ」
船の性能に唖然としているのか、呆然としていたヴァイオレットに手を差し出す。ヴァイオレットは慌てて俺の手を取り船に乗り込む。ハリーも諦めた様子で船に乗り込む。
「じゃあ、出発するわよー」
船は動き出した。乗っていた合衆国側の船はあっという間に沈んでいった。
「さて、どう交渉して行こうかしらね」
「まあ、正直言って『過去の件の報復だ!』と言われたら何も言えませんけどね」
「それでおあいこに出来るといいわね」
母様には何やら策がある様だ。
「エドウィン。向こうに着いたら国王謁見後、貴方達はすぐに視察に向かって」
「邪神捜索、ですね?」
「ええ。出来る限り早く見つけて、邪神の脅威を取り除く。それと今回の一件でトントンに出来ると思うから」
「なるほど。承知しました」
船型ゴーレムはトゥールーズ合衆国の港に到着した。まさか船を持参しているとは思っていなかったのだろう。沈んでいく船を見て笑っていたトゥールーズ騎士団は唖然としていた。
「素晴らしいお出迎え、ありがとうございます。さあ、国王に謁見と参りましょう」
何事もなかったかの様に言う母様。ニコッと微笑む母様に騎士達は何も言えず、黙って城に案内した。ぶっ飛ばしてんなー、母様。自重しない転生者ってこういう人なんだろうなー。俺も気をつけよう。
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