アラーナ視点
私はアラーナ。母は王都の酒場で働いていた。今は仕事も辞めて、家で酒を飲んでグータラしている。平民である母は本来ならばここまで堕落はできない身分だ。それが出来るのは私が公爵にメイドとして雇われたから。
私の父は元チェリッシュ公爵。王都の酒場で働いていた母に手を出したらしい。そこはまだ良い。よくある事だ。問題なのは生まれたのが女だと言う理由で認知せず、連絡を絶った事だ。チェリッシュ公爵には娘はいるが息子がいないらしい。正妻は娘を産んですぐに死んだとか。だったら後妻を貰えば良いのに、『私には彼女しかいない!』と言って後妻は貰わなかったらしい。絶対嘘だ。本当なら酒場の女に手を出して娘を産ませるなんてしない。
そんな状況に陥れた父に復讐をするために最低限の読み書き算術を教会で学び、付与魔法で魔導具を作れる様になり、そして図書館であるジャンルの本を読み漁った。それは『拷問の歴史』だ。主に罪人から情報を入手するために行うものだ。私を認知せずこんな環境に落とした父は控え目に言っても罪人だと思う。だから拷問にかけても良いと思うのだ。
魔導具はその辺で捨てられている廃品を使っている。母には内緒だが、実は私は錬金術を使える。廃品の中から金属だけを取り出して使いやすい道具に作り変えて魔導具にしているのだ。殺す事なく、少しでも長く苦痛が続く様にするにはどうしたら良いか。私は森に入って手頃な魔獣を捕まえては魔導具を使い試した。捕まえるのはゴブリン。最も人間に近く私が捕まえられる魔獣だ。最初こそ使った瞬間にゴブリンがショック死するとかよくあった。しかし試していく内に加減が分かる様になって、殺さず苦しみを味合わせる方法を知って行った。
そんな矢先にチェリッシュ公爵が死んだと聞いた。ショックだった。復讐も出来ず、あっさりと屋敷で病死していたらしい。そんな楽な死に方があるのか。もっと苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで死んでいって欲しかった。いや、死んで欲しくはなかった。永遠の苦しみの中で生き続けて欲しかった。ああ、奴に使いたかった魔導具がいくつもあったのに。母は奴の死を聞いて喜んでいた。そして『祝杯よぉ!』と言って浴びる程酒を飲んでいた。母が酒に溺れていくにはそんなに時間も掛からず、仕事も辞めてしまい、10歳になった私は金策に困った母に体を売らされる所だった。
そこに現れたのが一人娘と言われていたシャーロット・フォン・チェリッシュだった。名前だけは有名だった。『闇魔法使い』として恐れられた彼女は、その噂とはかけ離れた美しいご令嬢だった。『あの父が男の子が生まれていない状況をそのままにしておいたわけがない』と言って、隠し子の存在を調べたらしい。そこで何人か認知されていない子供達がいることが分かったそうだ。
初めて彼女と顔を合わせた時、ゾクッとした。足元から寒気が上がってくる様な恐怖。まともに視線を合わせていられず足元に視線を落とすと、影が少し揺れている様に感じた。母と何を話していたのか、半分も頭に入って来なかった。しかし要点だけはっきりさせると、どうやら彼女は認知外の子供達を責任を持って世話すると言っていた。望めば学ぶ機会も作ると。どうやら彼女は公爵位を継いで領地運営をしているらしい。領地には教会と協力して学舎を作ったそうで、そこに入学する事も出来ると言っていた。その時にかかる雑費は負担すると。その後、望むならカーディナル商会などでの働き口も手配すると言ってくれた。もちろん母の生活費なども負担すると。
母は二つ返事で快諾した。そりゃそうだ。こんなチャンスをみすみす逃すわけがない。そして彼女は私を見て一言。『ただ、彼女は既に最低限のお勉強は出来ているみたいですから、学舎で学ぶ必要はなさそうですけどね』と言っていて驚いた。曰く、『だって貴女、魔法も使えているでしょう?』『付与魔法が使えて、錬金術も使えて、闇魔法に適性もありそうね。使ってはいないみたいだけど』だそうだ。
なぜ分かった?
確かに私は闇魔法も使えるらしい。昔、スラムにいた鑑定を使える人に見てもらって知った。そして『絶対に公言するな!』と忠告された。今思うと良い人だったよ、あの人。
そんな素直な気持ちが顔に出ていたのだろうか。彼女は面白そうに笑う。『闇魔法使い同士はすぐに分かるわ。さっきも闇魔法を使って少し探りを入れたのに気が付いてたし、才能はありそうね』と言っていた。あの恐ろしい寒気は闇魔法だったのか。すると足元の影から小さな黒い人形が飛び出して来た。母は『ヒッ!?』と悲鳴を上げていたが、どうしてか私にはその恐怖を感じなかった。さっきはあんなに怖かったのに……。
『無理やり探りを入れられると、闇魔法に適性のある子は嫌悪感や恐怖があるものよ。元が影だし、そこに魔力を含んでいるから一般人でも恐怖は感じるみたいだけど。この子は【シャドードール】と言って、害がないから安心して良いわよ』と。確かにそっと指を出すとハイタッチの様に手を合わせて来た。とても可愛い。私の皹だらけの手に気が付いたのか、彼らは回復魔法を使い始めた。生傷状態だった皹が少しだけ治る。『皹は何度も繰り返すから、普通の回復魔法じゃ治らないのよね。大丈夫よ。薬を使ってやれば治るわ』助けを求めてシャーロットのそばに駆け寄るシャドードールを優しく宥めて言う。『貴女は才能もあるし欲もある。私の側付きメイドになるなら世話するわよ?どうする?』そう言われて断る訳はない。この人には期待をして良いのかもしれない。私は彼女の提案を受け入れた。
闇魔法使い同士は『意思』だけで契約が出来るらしい。実際に私もそれで契約が出来た。そして彼女の影に入る事ができた。そこには老齢の執事とメイド、3人の魔法使いがいた。3人は私と同い年だそうで、闇魔法使いだそうだ。今は護衛兼斥候として仕えていると聞いた。
彼女の事は公の時には『ご主人様』と呼び、プライベートでは『お姉様』と呼ぶ事にした。『お姉様』呼びは予定になかったけど、試しに呼んでみたらとても嬉しそうだったからセバスチャンさんと相談して決めた。
私はメイドとしての仕事をメイド長のアグネスさんから教えられた。一番はお茶の入れ方だ。何しろ貴族の紅茶どころか、紅茶そのものもまともに見た事がない。アグネスさんの指導の元、初めて入れた紅茶はお姉様に『確かに濃いのは好きだけど、これは濃すぎよ!』と笑われた。そして次に注意して入れたら『今度は薄すぎ!これは香りの付いたお湯よ!』と。そして熱すぎたりぬる過ぎたり、紅茶の入れ方は思ったよりも難しかった。教えてもらった通りに入れているのにどうしてここまで失敗するのか。
そこでまずは美味しい紅茶を飲んでみようとアグネスさんが入れてくれた紅茶を飲む。入れている時から心地良い香りがしていた。飲んでみると、鼻から花の様な香りが抜ける。熱さも丁度良く、一緒に出されたケーキともよく合った。何回かアグネスさんの紅茶を飲んで試作を重ね、ようやく合格点を頂いた。そこまでに約2週間掛かった。『美味しい紅茶を飲める様になって俺達も嬉しいよ……』とノアに言われた時は正直申し訳なかった。濃すぎたり薄すぎたりする紅茶をひたすら飲んでもらっていたからなぁ。
そしてその間にセバスチャンさんから【シャドーボックス】や【シャドードール】の使い方を教えてもらった。シャドーボックスは荷物を収納しておけるので便利だ。今待機している場所もお姉様のシャドーボックスの中だ。天地の分からない真っ暗な空間に棚や扉がある様子は妙な感じがする。私達はここの中に用意された寝室で寝泊りするらしい。屋敷には使用人の部屋はないらしい。闇魔法使いだし、必要に応じて呼ばれるのでこの方が私達も便利なのだとか。
私は与えられた部屋に作りためた拷問道具を収納する。初めてお姉様にこの魔導具を見せた時、苦笑いされたが止められなかった。『父上が貴女達にした事はこれを全て使われても文句が言えない程だったからね』『その才能をどう使うかが主人の務めだからね』と言われた時は凄く嬉しかった。そしてまさかこの時は、この技術が役に立つ時が来るとは思わなかった。
最初に役立ったのは帝国騎士を尋問する時だ。セバスチャンさんからは『帝国側の情報を入手してください。方法は問いませんが、殺さない様に』と指示された。お姉様からも『殺すんじゃないわよ』と言われている。逆に言えば『殺さなければ何しても良い』という許可をもらったのと同じだ。
私の魔導具ちゃん達が火を噴くぜ!ヒャッハァ!!
と興奮する気持ちを抑えつつ、セバスチャンさんから渡された選民思想に染まり切ってしまっている騎士に1人づつ拷問魔導具を装備させて O☆HA☆NA☆SHI☆ をする。魔導具がどういうもので、どういう効果があるのかを一つ一つ丁寧に説明しながら装着すると、それだけで恐れ慄き怯え許しを乞うその姿はとても興奮した。
奴に使う予定だった魔導具には痛みを伴う物が多かった。それは奴が騎士ではなかったのもあり痛みに耐性がないから。痛みというのは騎士であれば耐える事が出来る人も多い。ならばとお姉様と相談して私が用意したのは大量の水分を魔力を流している間だけ供給する魔導具とお通じを良くするお薬を注入する魔導具。それを騎士に装備させた。……何処とか聞くな!大体想像はつくでしょうが!
騎士達は涙目で私に魔導具を外してくれと訴える。だけどそこで外したら困るのは彼らなのだ。何しろ魔導具のおかげで排泄を我慢できている。試しに1人の騎士の魔導具を外すと、外した瞬間から出るわ出るわ。豪雨の様な状態だ。同僚の前での惨劇に自尊心はズタボロ。号泣しながらも滝の様に溢れ出す様子は見ていて興奮する。笑いも止まらない。うっかり殺してしまわない様にと監視していたノアとノエルがドン引きしていたが知った事ではない。こっちは笑い過ぎて腹筋は痛いし涙が止まらないしで大変なのだ。
騎士達は生贄よろしく犠牲となっている同僚を見て恐ろしくなったのか素直に帝国の内情を話していく。ノアとノエルがその証言を書き取っていきセバスチャンさんに報告書として提出する。
その後尋問が終わってから、一人一人に労いの言葉を掛けながら魔導具を外してあげた。だって、私からしても排泄の我慢とか恐ろし過ぎるもの。それを耐え切った彼らにはご褒美が必要でしょう?だから一人ずつ皆の前に引っ張り出して褒めながら魔導具を外してあげた。騎士達は泣きながら何かを言っていたが、そんなに褒められて嬉しいのかな?自分で垂れ流した排泄物の上で突っ伏して泣き叫んでるけど。排泄物で汚れたその場をお姉様のシャドーゴーレム達が魔法で綺麗にしてくれた。ついでに騎士達の事も綺麗にしてくれていた。数名の騎士が放心状態で呆然としていたが、まあ死んではいないから良いだろう。
気分が良かった。こんなに気分良く1日を終えるのは生まれて初めてかもしれない。すっきりとした私の様子にお姉様は『良い顔になったわね』と微笑んで頭を撫でてくれた。あの男に復讐ができなかった事は想像以上にストレスだった様で、私は無表情な人形の様な顔だったらしい。笑顔の私にお姉様とアグネスさんはホッとしていた。セバスチャンさんとノエル達は私が何をしていたのかを知っているだけに複雑みたいだけど。まぁ、お姉様とアグネスさんだって私が何をしていたのかは知っているが、それよりも私が笑顔になったという事の方が大切だったらしい。
次に私の所に来たのは冒険者だった。お姉様のお抱え冒険者であるセレスト様を襲ったらしい。お姉様から支給されていた魔導具のおかげで無事だったらしいが、お姉様は激怒していた。大切なお抱えに手を出されたのだ。怒らない方がおかしいだろう。お姉様からは『殺さず、精神的な崩壊をギリギリ回避する程度にお願い。精神的に追い詰めすぎて鉱山奴隷として使い物にならなくなったら困るからね』という指示だった。
それにしてもこの冒険者達、すでに白目剥いて失神してるんだけど。泡まで吹いてるし。これ、私の拷問必要かな?と思っていたら目を覚ました途端に超元気。私を見て馬鹿にして『暇なら俺達が相手してやるよ』ってこの後に及んでまだ発情してたよ。だったらご自慢のブツが使い物にならなくなるまで相手してもらおうじゃない。
リーダー格の冒険者以外はシャドーゴーレムにお願いした。私はシャドーゴーレムに拘束してもらった状態で踏み付けてやった。……だから何をとか聞くな!分かるでしょ!?醜い声で叫んでいたけど、聞いていて気分の良い声ではなかった。だから口も塞いで色んな体勢にしてひたすら踏みつけ蹴り上げた。奴隷商が来るまで数日間、私の相手をしてもらっていたが、流石に一日中は仕事もあるし無理なので私がいない間はシャドーゴーレムにお願いした。何しろ疲れ知らずのゴーレムだから、昼夜問わず相手させられていた。もちろんお姉様の言いつけも守っていたから食事は3食与えてはいた。シャドーゴーレムが、だが。
奴隷商が来るまで相手をさせられていた冒険者達のブツはすっかり大人しくなっていた。多分、一生使い物にならないと思う。どうせ鉱山奴隷だし、良いよね☆
それにしても、旧帝国騎士が謀反を起こさない様にする魔導具はそこそこ役に立ってるし、あの騎士達に使った魔導具は庭の散水の道具になったりと結構役に立つもんよねー。でも、あの男に使うはずだった『一思いに殺して欲しい』って懇願する位の痛みを伴う魔導具とか、使ってみたいんだけどなぁ。四肢をそれぞれ拘束して八つ裂きにならないギリギリの所で止めて放置してー、四肢を拘束してるのを魔導具にしておいたら死なない程度の強さの【サンダー】を流せるしー、足の裏はムチで飽きるまで叩いてー、指は親指だけ爪が割れるくらい締め上げてー。あ!醜い声で五月蝿くならない様に口の中に大きなトゲを突っ込む様なお面を用意しておかないとね!
うふふふふふふふ!想像しただけで興奮して来ちゃった!お姉様に相談してみようかなー?何処かにそんなお拷問をさせてくれる人はいないかなー?
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