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ジェイク視点

俺はジェイク・フォン・ベスビアス。ベスビアス伯爵家の次男だ。今俺はチェリッシュ領にある中枢都市『シャリー』と隣街『ドライヴァー』の間にある森の中で魔獣討伐をしている。と言っても冒険者の仕事を奪わない程度に、馬車などが通る道に出てくる逸れ魔獣を討伐する程度。普段は騎士数名にシャーロット公爵のゴーレムとシャドードールを連れてダンジョンアタックをする事で鍛錬したり街の保安に努めたり、屋敷内の鍛錬場で鍛錬をしたりしている。

俺と行動を共にするのは貴族の子弟3人と旧帝国騎士1人だ。この旧帝国騎士はメレディスと言い、帝国の貴族出身ではあるが実家は廃爵になり家名もなくなった。実家は選民思想が根強い家だったらしいが、メレディス自身はそういう思想が薄く、どちらかと言うと剣の腕で判断している様に感じる。俺にも顔合わせてすぐに戦いを申し込んできたからなぁ。王国騎士団長である親父に鍛えられた俺も身長の差はあるものの、それはそれなりに戦って、まあ、一応俺の剣が奴の急所に当たったと言う事で勝ったと言う扱いになっている。俺も急所ギリギリだったけど、『引き分けは敗北と同じだ』と言う奴の主張で一応俺の勝ちになっている。全然嬉しくない勝利だけどな!互いに結構な重傷を負ったが、それはシャーロット公爵のシャドーゴーレムが手当てしてくれた。ちなみにシャーロット公爵と一戦交えた時は歯も立たなかった。『剣は苦手なのよねー』と言いながら、身体強化を上手く使って一瞬で背後を取っていた。『苦手』の概念を教えてやりたい!この時、騎士達の心が一つになった。


今日は最近公募された第2期チェリッシュ公爵騎士団の新人研修だ。と言っても既に在籍している騎士達も毎月行っている訓練と同じ内容だ。騎士達をいくつかのグループに分けて森の中を進軍してダンジョンアタックをして最深部のボスを討伐。指定の量の魔獣素材と鉱石を採掘してくる事だった。この領地は強い魔獣も多いしポーションの素材も多く手に入る。指定の量以上の素材が手に入った時は、その分の収入は騎士達のお小遣いにして良いと言う事もあって騎士達のテンションも上がっていた。

そうして始まった研修だが、騎士達は完全にペース配分を間違えていた。第一期の騎士メンバーでほとんどが構成されている俺のチームは来てすぐに同じ研修をしているので分かっているが、今回は第2期で新規採用された騎士達だ。公爵に良い所を見せようとして最初からハイペースで魔獣討伐をしていた騎士達はダンジョンに着いた時には既に疲労困憊。慎重な者が揃っているチームは最低限に留めてはいたが、それでも結構な数の魔獣を討伐している。ダンジョンの中はハイランクの魔獣のオンパレード。途中で力尽きた騎士達は帯同していたシャドーゴーレムに安全な場所まで引っ張り出されていた。

俺のチームは新人はメレディスだけだったし元から思慮深い正確だから問題はなかった。相変わらずダンジョンの魔獣は強く数も多いから、素材のノルマは問題ない。問題はボスの討伐とその後の鉱石の採取だ。俺達は経験から討伐隊は鉱石採取の役には立たなくなるのを知っている。だから、討伐は【コキュートス】を付与した剣を持つメレディスと足止めに俺ともう一人の騎士で行う事にした。残りの騎士は温存して鉱石の採取に当たらせる。ボス魔獣はアイアンサーペント。その名の通り金属の体を持つ魔獣だ。なのに炎に耐性を持ちマグマの中に生息している。その体は炎耐性を持つ武具として人気も高い。だが問題は討伐方法だ。今まで炎に耐性はあるが水には弱いと言われて来ていたため水の上級魔法を使える魔法使いを含めたパーティでダンジョンアタックされていたが、誰もボスを討伐できなかった。まさか氷魔法で倒せるとは思ってなかったんだよなぁ。確かにサーペントなどの蛇の系統は寒さに弱い。ただ金属の体だと言うことで寒さには強いと言う説が有力だった。むしろこいつが一番寒さに弱いなんて思わなかったよな。

メレディスに持たせた魔剣でどうにかボスを討伐。疲労困憊の俺達が休んでいる間に残りの騎士2人で鉱石を採掘する。ボスさえ討伐してしまえばこの場は何処よりも安全な場所になる。そのためか坑道の中には休憩スペースも作られている。公爵が作っておいてくれたらしい。最初に潜った俺達の様子を見て設置したのだとか。曰く『私はシャドーゴーレム達で討伐してたから気が付かなかったわ。やっぱり第三者の目って大事ね』らしい。


「だからといって宿を作る必要はないと思うんだよなぁ……」


そこは公爵曰く『休憩スペース』らしいが、ちゃんとキッチンもあって、食堂もあって、寝室もある。もちろん料理人が常駐している訳ではないし、掃除は自分達で行わないといけない。寝室も男女が分かれているだけで、後は二段ベッドで共用だ。それでもこれはおかしいシステムだと思う。というか、どうしてダンジョンをいじれるんだよ!

公爵とクリフによると、公爵はダンジョンアタック周回をし過ぎたせいで『ダンジョンマスター』という称号が付いてしまったらしい。ダンジョンというのはそこを管理する『ダンジョンマスター』というのが存在する。時としてそのマスターがいないダンジョンもあり、そこは魔獣が外に溢れ出す『スタンピード』という現象が起きやすくなる。ダンジョンマスターが定期的にダンジョン内の魔力を発散させる事でその均衡を保っているという事もあり、マスターのいないダンジョンは暴走しやすいのだろう。チェリッシュ領のダンジョンもマスターのいないダンジョンの一つだった。そこに何度も攻略する存在がいれば、そりゃあダンジョンマスターにもなるよなぁ。

ダンジョンマスターになった事で、どうにかしてダンジョン内の魔力を消化しないといけなくなった公爵は『そうか!ダンジョン内の魔力で施設を作ればいいんだ!』という斜め上の発想で作ったのがこの『休憩スペース』なのだそうだ。


「我らが公爵は発想が斜め上で面白いな!飽きる事がなくて良い!」

「確かにダンジョン内に宿泊スペース作る奴なんていないよな」

「うむ。しかし、これのおかげで採掘量が増えるのだから良いだろう?」

「確かにな?俺達もここで休めば採掘に参加できるから採掘量も上がるぜ?上がるけど、これは流石に……」

「まあ、規格外ではあるがな」


そう、『規格外』とはシャーロット公爵のためにある様な言葉だ。俺達はしっかり体を休めて採掘から戻ってくる騎士達のために食事を作り、食べ終わると採掘組を休ませている間に鉱石採掘に入った。ノルマの量は取ったが、小遣い分も少し採掘する。


「む?これは何だ?」

「うん?」

「この黒い鉱石だ」

「おお!それ、今噂の属性持ちの魔石だ!モリオン っつうらしいぞ?」

「高いのか?」

「普通の魔石より高く売れるぜ!ノルマには入ってないからまるっと小遣いだな!」

「ほぉ!それはありがたいな!もう少し出ると良いのだがな……」

「滅多にお目にかかれないらしいからな。運が良かったな」

「うむ!帰ったら祝杯だな!」

「俺は飲めねぇけどな」

「そうだったな。果物のジュースで祝杯としよう」


完全に元を取れた俺達は帰りの体力を温存するために早めに切り上げて帰路に着いた。モリオン の件で公爵から『おめでとう』とお褒めの言葉を頂戴し、それの売り上げに少し色をつけてくれた。褒賞らしい。モリオン の収入をパーティで山分けして、色がついた分は自由時間に領内の酒場で祝杯をする事にした。俺はジュースだけどな!


ちなみに、途中でリタイアしたりノルマを達成出来なかったパーティは反省会と報告書を提出し次に生かす様に配慮されている。今の公爵はそういう所が旧帝国騎士にも慕われる所なのだろう。俺も公爵の役に立てる様にもっともっと強くならないとな!


予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします

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