ギルド登録
お披露目会が終わり、一週間が経った。王都の学園では入学式が行われる日。シャーロットはエイベル達に連れられて冒険者ギルドに登録に来ていた。
ギルドに来て貴族の子女である事を伝えると、すぐに個室に案内された。貴族を想定してあつらえられた部屋は豪華な調度品が並べられている。それでも華美過ぎないその部屋は、シャーロットには印象の良いインテリアだった。
「それではシャーロット・フォン・チェリッシュ様。こちらの水晶に触れてください」
受付をしていた女性とギルドマスターが揃い、シャーロットは人生初のスキル鑑定を行う。今まで自分で【鑑定】をする事で魔力量や体力は分かったが、スキルはまだ見る事ができなかった。これは水晶を使ってのスキル鑑定を行った後でないと分からないらしい。
水晶に触れると光が溢れ、空中にスキルが表示された。さながらパソコンの画面が浮いているかの様だ。
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名前;シャーロット・フォン・チェリッシュ
年齢:10歳
性別:女
種族:人族
体力:100,000/100,000
魔力:1,000,000/1,000,000
スキル:賢者/武神/ゴーレム使い/薬師/錬金術師/料理
称号:神に愛された者/父を見限った者/国王のお気に入り/王妃のお気に入り/
ダンジョンマスター/魔族の敵
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「うわー……」
「規格外、ここに極まれりってヤツよね」
「この歳で『賢者』に『武神』か。魔力量が桁違いだよな」
「私もここまでになっているとは……」
正直、称号に『転生者』が入っていないだけ良いと思う。いや、『神に愛された者』がそれに値する称号なのかな?
「これは……下の受付でやらなくて良かった……」
「このスキルではGランクから始めると、他の冒険者の仕事を奪ってしまいそうですね」
「ちなみに、今まで討伐した中で一番強い魔獣と言ったらなんだ?」
「強さで言ったらブラッディーウルフが強かった気もしますけど……」
弱いとは言え、集団で掛かってくると狡猾さも相まって手こずる事はある。素材を気にしないなら一瞬で片付くんだけどね。
「いや、どう見てもワイバーンだろうが……」
「シャーロット。ブラッディーウルフの方がワイバーンよりランクは下なのよ。魔獣の強さだけならワイバーンは桁違いよ」
「まあ、どちらも瞬殺出来るシャーロット嬢なら狡猾なブラッディーウルフの方が面倒かもしれないがな」
そういやそうだった。ワイバーンは空飛ぶトカゲ程度にしか思っていなかったから強いとも思っていなかった。まあ、うちのワイバーンちゃんは強いけどね!
「ワイバーンを……瞬殺……」
「先日のお披露目会に出現した魔族も5体を相手して瞬殺した。正直、現時点で俺達と同じSランクだと言っても遜色はない」
エイベルのとどめの一言で、シャーロットは登録初日でSランクに登録された。別にちゃんと登録されればGランクでも良かったのだが、『お前みたいなGランクがいてたまるか!』という事でSランクになった。
「依頼はあそこの掲示板に張り出されてる。とは言え、俺達やシャーロットは勅命が下ることの方が多いな」
「こうして見ると、魔獣も種類が多いですね」
「だな。よくこんだけの種類が生まれると思うよな」
「いくつか素材を持ってますね。素材を持っていけば討伐達成になります?」
「ああ、なるが何を持ってるんだ?」
「アイアンサーペントとエルダースネーク、あとポイズンスネークが大量に」
「「「……」」」
エイベル達は頭を抱えた。この歳でAランクBランクの魔獣素材を大量に持っているなんて普通はないのだ。
「ちなみに、何処で討伐したの?」
「ダンジョンですね。あそこはサーペントとスネークの巣窟ですから」
「ああ……あそこを周回してたんだっけね……」
「いくらかは売ってますけど、まだ結構な量が残っているんですよね。使用人の給料は冒険者としての収入で雇うので、売れるなら売っちゃいたいんです」
「ギルドが潰れない程度に売ってくれよ」
「どのくらいでしょうね?」
「むしろどのくらいあるんだ?」
「……数えるの諦めたから、もう分からないです」
当然、受付では処理しきれないため、もう一度控え室に戻り素材売却と洒落込むことにした。その結果、アイアンサーペントは3体分、エルダースネークが5体分、ポイズンスネークは20体分買い取ってもらう事になった。これでもまだ半分どころか1/10も売っていないという事実にシャーロット自身も頭が痛くなった。
「今日だけで大白金貨1枚です。残りを売るだけでも前公爵の着服した金額を軽く超えますよ」
「まさかそこまでの価値だとは思わなかったのよねぇ」
セバスチャンが紅茶を入れながらする報告を聞いてシャーロットは頭を抱える。それを売るだけでどうにかなるんだったらそれを提案したのだが、流石に素材だけで賄えるとは思っておらずエリクサーを王家に献上する事でチャラにする返済計画を立てていたのだ。そして素材を売ってセバスチャンやアグネスをはじめとした使用人達の給料を賄う気でいたのだ。まさか素材だけで着服分の返済と今年分の使用人の給料までいけるとは思っていなかったのだ。
「陛下も素材よりエリクサーを献上される方が有難いと仰っておりましたし、結果的にはよろしかったのではないでしょうか」
「使い勝手はその方が良かったでしょうね。はぁ……下調べ不足だったわ」
「良いじゃねえか。とりあえず金に困ることはなくなったんだからな」
「まあ、確かに魔獣素材の価値は知る必要がありそうね」
「この屋敷の書庫にそういう本はないか?」
「執務室にあります。恐らく前公爵様が素材を効率よく売るのに読んでいたのかと」
エイベル達の話を聞いてセバスチャンは側にある本棚から一冊の本を取りだした。そこには魔獣の種類とランク、素材の価値などが書かれていた。
「すっごく.......分かりやすいデス.......」
「これが領地にもあったらなぁ.......ここまで規格外には.......なってたか」
「まあ素材の価値は分かっても、ダンジョン周回はしてたでしょうね。ゴーレム作るために」
「ゴーレムなしであの領地は無事ではいられなかっただろうな」
確かに。父上に渡す素材を選ぶ事はしただろうが、ダンジョン周回はしただろうな。あの領地で娯楽なんてなかったし、前世のようにテレビなんてなかったし。ダンジョン周回が唯一の楽しみだったんだよなぁ。
「ダンジョン周回が娯楽って.......」
「まああの環境なら.......」
「ダンジョン奥にある鉱脈はお宝そのものだしな」
「お嬢様のお側にいると常識が分からなくなっていきますね」
「「「それな!」」」
まあ、父上が既に常識なかったからね。さて、この本を読んで素材の価値を確認して売る時期とかを決めるとしよう。
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