エミリオ頑張る
『毎日の魔法訓練は楽しいし夕食後の魔法座学も楽しい、ただパパとママに負担かけすぎてないかな?』
『パパとママは朝4時には動き出して、6時に軽い朝食を食べパパとママは仕事に出かけ12時頃中々の量の昼食、13時から16時迄僕の魔法訓練で17時にそこそこの量の夕食、18時から19時迄魔法座学、僕は20時前には就寝、パパとママは毎日夜のお勤めをしてから就寝している…小さいログハウスだから声が駄々漏れなんだよな…』
『しかもクゥーさん家の方からは同じ頃、男女の遠吠えが毎日聞こえてくるし……』
エミリオが両親に申し訳なく思っていた頃、ロザリオとエミリーは楽しそうに明日の魔法訓練の打ち合わせをしていた。
「エミリー!明日の訓練スケジュールはどうする?」
「そうね〜、明日は家の左側の原っぱを大地の魔法で耕してもらうのはどう〜」
「そうだな!エミリオが魔法で耕した畑は作物の実のつき方が違うからな!」
「クイックを〜使えば直ぐに収穫出来るし〜」
「決まりだな!明日は畑作業だな!」
「先日魔法で〜掘ってもらった井戸は〜と〜ても使いやすいのよ〜」
「穴を掘って〜穴の周りに石を積み上げるのと違って〜、穴を掘って直ぐに〜穴の周りを〜焼き固めて終わりだから〜ほんの数分で井戸が出来ちゃうのよ〜しかもその穴がとっても深いの〜」
「実家の城にも井戸は有ったが作るには大勢の人手と長い時間が必要だからな!」
「私の城の井戸も〜凄く出来るまで時間がかかってたから〜ロザリオ家の井戸がすぐに出来て驚いたわ〜」
「キャミーさんからも〜、今度クゥー家にも〜井戸お願いしたいわ〜と頼まれたわ〜」
「この辺には川が無くて〜私達が此処に住むまでは〜、クゥーさん一家は雨水を貯めて〜使ってたみたいだし〜」
「そうだな!エミリーが毎日我が家とクゥーさん家の分の水を魔法で出してたからな!」
川が近くに無いのでこの近辺にはクゥー家族とロザリオ家族しか住んでは居なかった。
この世界では井戸を作るには莫大な費用と膨大な時間がかかる為、裕福な国の城以外は井戸を持っていなかった。
水が無くては生きてはいけないので、川沿いに集落や街が出来ている。
交通手段の面でも陸路を馬車で走るより、船で移動したほうが遥かに早かった。
クゥーとキャミーの獣人はいくらこの国の王が平等を決めたとはえ、差別を受けていたのでなるべく人とは絡みたくないので、川などの水源が無い為に人が住んでいないこの地から動く気はない。
井戸という水源を確保できたら尚更である。
ロザリオとエミリーもまた、自分達の髪色と瞳の色がこの大陸では異質で、たまに街のいちに行っても好奇の目に晒されるので生活ベースを他の地に移す気がない。
「明後日はクゥー家の井戸作りだな!」
「エミリオさまさまだな!はははは」
「私達の〜子供ですから〜ふふふふ」
実は魔法訓練を兼ねてついでに魔法で労働をさせられている事を、エミリオだけが気付いていなかった。
『そろそろこの世界の生活水準、文化、価格相場を実際に見て知りたい』
『料理の調味料も欲しいし、甘い物も果物以外で食べたいな』
『パパの書斎の書物も読みたいし』
『流石に前世の知識を使うにも、この世界を知らない事には始まらない』
『書物を読んで、街等も実際この目で見て見識を広げれば怪しくも無いだろう』
エミリオは好奇心と知識欲を抑えられずにいた。
だがエミリオは気が付いていなかった、自分がすでに両親に規格外認定されている事とを。
「パパ、書斎の本を読みたい」
『本に興味を持ったか!俺も見識を広めたくて父に子供の頃お願いしたな!』
「分かった!先ずは字の練習を始めるか!字を読めないと本は読めないからな!」
『俺とエミリーはチャラチャラした老人に!万能翻訳と言う聞いた事の無い魔法をかけられてるから!レパード大陸の本は勿論、この大陸の字も読めるが!さてエミリオには何方の言葉を教えるか?』
『普通はこちらの字を教えるのが正解だが!城から持ってきた俺の本は全部レパード大陸の言葉で書かれてるからな!』
『うーん!どっちの言葉を教えたら良いんだ!流石にいきなり2種類の言葉を教えても理解できないだろうし!』
『うーん』
ロザリオは難しい顔して額に両手をあて悩みまくっている。
その後ろをパタパタと往復してるエミリーがいた。
「ね〜エミリオ〜この本のタイトルよめる〜」
「うん!レパード大陸記」
「うわ〜凄い〜流石エミリオ〜」
「エヘ」
「エミリオ〜本を開いて〜そこに書いてる文字を読んで〜」
「うん!これは私レオナルドがレパード大陸を……………」
「ね〜ね〜じゃあママの書いた字も読める〜?」
『ママが羽と小さい壺と和紙?イヤ和紙じゃない、もう少し柔らかそうだ、あああ!洋紙か!前世で言うコットンペーパーか』
『あの鳥の羽は?ママが鳥の羽の先を斜めにナイフで切って、爪切りみたいな物に羽の斜めに切った根元を入れて挟んだぞ!おおおおすげぇ〜!羽の先がペンの形になってる』
『この世界には紙が存在してるのか…チートネタが一つ消えた…残念』
『あの道具は凄いな、あの道具はに羽を入れて挟むだけで羽ペン先が出来るなんて』
「ママ!その道具凄いね」
「凄いでしょ〜これはママの国で作られた〜羽ペン製造器て言うのよ〜ふふふふ」
「羽ペンは〜直ぐに先がすり減って〜文字が太くなるからまめにナイフで先端を削らないと〜いけないけど、この道具があれば〜挟むだけで直ぐに羽ペンが出来るの〜」
『ママが洋紙に羽ペンで文字を書いてる』
「エミリオ〜ママの書いた文字読める〜?」
「うん!エミリオだから!って書いてる」
「わっ〜凄い〜流石エミリオ〜2つの大陸の〜文字が読めるのね〜」
ロザリオは満面の笑みでエミリオを褒めていた。瞳には光は勿論無かったが。
『……!何をしてるんだ!エミリーさんとエミリオくんは!』
ロザリオは息子の為に何方の国の文字を教えるか一生懸命悩んでいたのに、天然のエミリーと天然の息子がいきなり悩んでる横でやらかしてるのを耳で聞いて、今は悩んでるのではなく頭を抱えてるのだが傍からはロザリオの変化に気がつく者は居なかった。
『何!普通にいきなりレパード帝国の文字と!この国の文字をエミリオは読めてるんだよ!』
『エミリーもそれが普通みたいに接してるけど!どう考えてもおかしいだろ!』
ロザリオはお決まりのように難しい表情をして脳天気な二人を見つめた。
ポンポン!エミリーがロザリオの肩を軽く2度叩いた。
「だって〜エミリオだから〜」
ロザリオは脱力した。
『いや!ママもも十分!エメリーだからだよ!』
心の中でロザリオは叫んでいた。
経緯はどうあれ、エミリオは書斎の本を読んで良い許可がおりた。