エミリオパパの災難
『この世界に居る全ての精霊王を無呪文で呼んでおいて!何故またクゥーさんの家に駆けて行ける力が残ってるんだ?魔法力切れ起こして普通なら倒れるだろ?!』
「だって〜エミリオですから〜」
苦悩しているロザリオを見かねてか、エミリーはニコニコした顔で言った。
その瞳には光はなかったが。
精霊王6人を呼んだ理由を求められロザリオは額に玉のような汗をかきながら説明している。
『今迄精霊王を呼んだという話は聞いたことないぞ、しかも光と黒の精霊等存在してないとまで言われてるのに、昨日から俺の中で何かが壊れていってる!…先ずは精霊王達に説明しないと!』
「昨日私達の子!エミリオが産まれて37ヶ月経ったので魔法素質テストを行った所、初日一回目なのに無呪文で上級魔法のファイアフレームを出しました!」
6大精霊王達もザワザワしている。
「火属性があるのは理解出来たので…今日は他に属性がないかと妖精を集める魔法を試したところ!貴方様たちが集まってしまいました!」
『ふつうー精霊王様達を呼べないだろ、呼び出す方の魔法力より下の者しか……、まさか精霊王様達よりエミリオの方が魔法力上なのか?』
話を聞いていた精霊王達もなんだか顔色が優れなくなっている。
「だって〜エミリオですから〜」
突然エミリーがニコニコした表情で口を開いた。
瞳に光は無かったのだが。
精霊王達もエミリーの光の無い瞳を見て変に納得していた。
「そうだの、エミリオだからのう」
「そっか、エミリオだものな」
精霊王達も口々に「エミリオだからな」と言い出した。
その者達の瞳に光が無かったのは言うまでもない事であった。
精霊王達も頭では理解していた、エミリオの魔法力が自分達より上である事を。
話が済んだことを理解したエミリオが「パパ!ママ!精霊王の皆さん、僕ジミーとショー遊んでくるね!」
とクゥーさんの家の方にとてとてと駆け出して行った。
『我らを6人も呼んでおいて、魔法力切れを起こさぬとは……エミリオだもんな…』
精霊王達は頭を掻きながら去っていった。
「ロザリオ〜何難しい顔してるの〜、エミリオは私達の子供だから凄くて当たり前だ〜と思えば良いだけよ〜」
『確かに我が子供だから凄いと思えば気持ちに整理はつくかもな…』
「そうだな!レパード大陸で最上級魔法使いのエミリーと俺の子供だから凄くて当たり前だよな!はははは!」
「そうよ〜、当たり前の事なのよ〜、ふふふふ」
エミリオの両親は満面の笑顔をしていた。2人の瞳には相変わらず光は無かったが。
翌日の昼下がり、いつものようにロザリオの家の裏の原っぱでエミリオの魔法の訓練が行われていた。
「エミリオ!今日は時空収納の魔法素質があるか試してみよう!」
「パパはレパード大陸で1番の時空収納を使えるから!エミリオもその才能が有ると思う!」
ロザリオの説明を聞いてから早速エミリオが実践してみた。
「エミリオ!空間が見えるか?!」
「はい!」
「最初は小さいカバン位だけどいずれ魔法力が増えたら!空間は広がるからな!」
「エミリオ!今どのくらいの空間だ?!」
「パパ……何か凄く広くて壁も何も見えないよ?」
『へ?エミリオくん!今何と言いました?!壁が無い……と…?!まだ幼いから説明理解してないのかな?!』
「エミリオ!ではその空間に何が入りそうか言ってごらん!」
「はい!えっと〜」
エミリオは今居る家の裏の原っぱから周りを見渡している。
「パパ!あの林にある切った木なら全て入ります」
エミリオが指を指した林には、ロザリオとクゥーがお互いの家を作り直す為に以前から切り倒してた直径2m以上長さ30mは有ろうかと思われる大木が30本程あった。
『おいおい!嘘だろ〜!切り倒して乾かすため半年位経放置していたからそろそろ短くして俺の時空収納で運ぶ予定だったのだが!そそまま運べるだと!』
『俺でさえ切断して短くしても一度に1本運べないのに!……あの規格外のエミリオならもしかして……』
「よし!エミリオ!時空収納に入れたい物の目の前まで行って!時空収納と唱えてから!それを持ち上げて時空収納に入れるイメージをしろ!入れる物が時空収納より小さければそのまま収納されるからな!」
「はい!パパ!」
エミリオはとてとてと林の方に駆けていった。勿論我が子を心配するロザリオとエミリーもエミリオを追いかけて行った。
ロザリオとエミリーはスーパーフリーズしていた。
まだ身長が70cmに満たない3才児が直径2m前後、長さ30m前後の大木をヒョイヒョイ時空収納に入れている。
エミリオは両親がスーパーフリーズしてるのを気づかず黙々と作業した。
エミリオが合計34本の大木を時空収納に入れる作業を終え両親の前に行ったが二人はまだ動かない。
「わ〜、エミリオ凄いね〜、流石エミリオだわ〜」
エミリーが先に再起動した。満面の笑みを浮かべて……瞳の光は消えていたが…
「スゴイナ!サスガエミリオダ!……」
ロザリオは何故かカタコトになっていた…引きつった笑顔で……瞳の光は勿論消えていた…
『何これ!あり得ないだろ!……エミリオの話した広い空間!壁が見えないと言うのは本当だったんだな!』
「エミリオだもん〜」
エミリーはいつものようにロザリオの肩をポンポンと叩きなが言った。
「そうだな!エミリオだからな!はははは!」
ロザリオは乾いた笑いをしたあとしばらくうなだれていた。
魔法訓練3日目終了 今日も天気がよく気持ちのいい昼下がり、ここ最近の日課の様にエミリオの父ロザリオの心が折れていた。