夢と同じ未来へ
アフターストーリーです。
また、新作のハイファンを始めましたのでそちらもぜひ。
下のタグから行けます。
■柿崎初穂視点
「あは! お帰りなさい!」
夜になり、私はあのアパートで彼……疲れて帰ってきた優太を出迎える。
あは……これは、一緒に暮らすようになった五年前のあの日からずっと変わらない、私だけの特権だ。
「いやあ……今日も結構疲れたよ……」
ネクタイを緩めながら、優太がぼやく。
去年ようやくロースクール(法科大学院)を卒業して司法試験に合格した優太は、晴れて法律家の道を歩むことになったんだけど、やっぱり司法修習(研修)は大変みたい。
「だけど、あと二か月もすれば司法修習も終わりだし、もうちょっと! 頑張れ優太!」
「はは……もちろんだよ!」
私は優太の背中を叩くと、彼は笑顔で力強く頷いた。
「それよりも、初穂こそもうすぐ大学を卒業してロースクールに進むんだ。いよいよ、君の夢が近づいてきたね」
「うん! ……本当に、五年前には想像もつかなかったよ……」
私は優太に出逢って、救われてから、ずっと幸せな毎日を過ごすことができた。
彼のお父様やお母様も、私を大学に通わせてくださるばかりか、ロースクールの費用まで用立てていただけるだなんて思いもしなかったな……。
「それで、優太はどの道に進むか決めた?」
「ウーン……実は、まだ悩んでるんだよね……」
司法修習が終われば、弁護士、裁判官、検事の道に進むことができるけど、優太はずっと決めあぐねている。
私としては、その……優太と一緒に弁護士として、以前の私みたいに弱い人を助けられるようになりたい、なんて思ったりもしてるんだけど……うん、こればっかりは、優太のことだもん。
私は、世界一大好きな彼を全力で応援するだけだ。
「あは! 頑張る優太に、今日の晩ご飯は奮発してすき焼きにしたから、早く着替えてきて!」
「おお! やったね!」
すき焼きって聞いた瞬間、優太は大急ぎで着替える。
あは……本当に優太は可愛いんだから。
◇
「はああああ………やっぱり初穂のご飯は美味しいなあ……」
すき焼きのお肉を噛みしめながら、優太がしみじみと呟く。
こうやって美味しそうに食べる姿も、五年間ずっと変わらない。
「そうそう、初穂に相談があったんだけどさ」
「? 相談って?」
「うん。どの進路にするかは迷ってはいるけど、四月からは法律家として正式に働くことになるから、もっと広いところに引っ越そうかな、と思って」
「ああー……」
確かに、木下先輩が住んでいたアパートに移り住んでから、今までずっとだもんね。
「だけど、別に二人暮らしなのは変わらないし、あえて引っ越す必要もないんじゃ……」
「そ、それはそうなんだけど……」
珍しく、優太にしては歯切れが悪い。
何か引っ越したい理由でもあるのかな……。
すると。
「は、初穂!」
「は、はい!?」
突然、優太は正座をして真剣な表情で私の名前を呼んだので、私も驚いて同じように正座をしてしまった。
「そ、その……僕はもうすぐ、一人の法律家として歩いて行くことになる」
「う、うん……」
「そうすれば、司法修習とは違って収入も安定するし、生活だって今以上になるよね!」
「そ、それはまあ……」
あ、あは……ここまでくれば、優太が何を言いたいのか……何をしたいのか分かる。
どうしよう……まだ優太は言ってもいないのに、もう嬉し過ぎて胸が一杯で、泣きそうになっちゃうんだけど……。
そして。
「あ……」
優太が、ス、と差し出したそれは……光り輝く、ダイヤの指輪だった。
「初穂……絶対に君を幸せにすると約束するから、その……僕と、結婚……してください……」
顔を真っ赤にし、勇気を振り絞って優太はプロポーズしてくれた。
もちろん……優太がいつかそうしてくれるってことは、ずっと分かってた。
だけど……だけど……っ!
「は、初穂!?」
「うう……うわああああああん……!」
私は嬉しすぎて、思わず泣き出してしまった。
だって……あの暗闇の中で逃げ続けるしかなかった私が、世界一大好きな人からプロポーズされたんだもん……こんなの……こんなの、幸せ過ぎるよお……!
「ゴ、ゴメン! そ、その……急すぎた、よね……?」
私への心配と不安で、泣きそうな表情の優太がオロオロする。
ああ……本当に、優太は……!
「うわ!?」
「優太……嬉しい……嬉しいよお……! 私も、優太と一緒になりたい……だから、どうかよろしくお願いします……!」
「! よ、よかったあ……!」
抱きついた私の答えを聞き、優太は最高の笑顔を見せてくれた。
ああ……私は優太のこの笑顔が大好き。
優太の……全てが大好き。
◇
――ピリリリリ。
「んう……」
スマホが鳴り響き、ゆっくりと目を覚ます。
どうやら私は、机に突っ伏したまま眠ってしまったみたいだ。
「もー……もう少し浸らせてくれてもよかったのにー……」
最高の場面で起こしたスマホを恨みがましく見ると……あ、優太からの電話だ。
「もしもし?」
『あ、初穂? バイトも予定どおり終われるから、十八時に駅前だからね?』
「あは……うん」
優太の声を聴き、私は思わず口元を緩めて返事をした。
今日は、私の中法大学の合格祝いということで、初めて一緒に出かけた時に行った思い出のイタリアンのお店で、ちょっと豪華な夕食を食べに行くことになっている。
うん……こうやって夢だった中法大学にも合格して、四月からは私も優太と一緒に通うことになって……。
これからも、私は優太と一緒に幸せな毎日を過ごしていくんだ。
そしてその先には、あの夢と同じ未来が待っているんだと信じている。
だから。
「優太」
『ん? どうしたの?』
「あは! 大好き!」
お読みいただき、ありがとうございました!
ちょっとアフターストーリーというか、その後の二人の幸せなお話を書いてみました。
ひょっとしたら、これからもこんな感じでアフターストーリーを書いていくかもしれません。
また、本日よりハイファンタジー?異世界恋愛?の新作の投稿を始めました。
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